見出し画像

おみくじ怖い

 私は心配性の性格なうえに、占いやおみくじの結果を鵜呑みにしてその影響を受けやすい性質でもある。そのうえ臆病な小心者である。

 このことは幼少期から自覚していたので、学生時代は警戒して占いやおみくじの類には手を出さなかった。

 新聞や雑誌の占いコーナーは読まないようにしていたし、家族で初詣に行った折にもおみくじは引かなかった。

 スピリチュアル的な類は、興味津々ではあるが無関心を装った。

 学生時代は、これで何とか無事にやり過ごせた。

 しかし、社会人一年目の正月に上司や同僚と初詣に行くことになった。

 嫌な予感がした。

 案の定、おみくじを引くことになった。

 小心者ゆえ「嫌です」とは言えず、人生初のおみくじを引いた。

 「大凶」。

 言葉を失った。

 それを見た上司が、もう一度引けと言っておみくじ代を手渡してくれた。

 「大吉が出たらプラスマイナスゼロだ」。

 意を決してもう一度引いた。

 今度は「凶」。

 茫然自失。身じろぎ一つ出来なかった。

 二回ともおみくじを渡してくれた巫女さんは勿論のこと、上司や同僚も声を失った。

 私にとって『おみくじ』は、恐怖の対象となった。

 その時、決して二度とおみくじ売場には、近づかないと心に固く固く誓った。

 ところが、その年はそんなに悪い年ではなかった。
                 <了>