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事実を伝えるということ

保育園で子どもに事実を伝えることを大事にしている。

例えば、長袖の服の袖をまくらないまま手を洗おうとしている子に対して、

「そのままだと袖が濡れるよ」と伝えている。

「袖をまくらないとダメだよ」とは言わない。


散歩に行く前に「くつ はかない!」「イヤ!」と言っている子には、

「靴履かないの?」と言っていることを認めた上で、

「靴履かないってことは、はだしで散歩に行くってことだねー」と事実を伝えている。

これを聞いて、はだしが嫌だと感じて靴を履く子もいる。(そうでない子もいるのが保育園あるある)


今まで手掴みでご飯を食べていた子が、スプーンを使った時も、

「スプーンで食べたね」と言う。

「すごい」や「えらいね」という大人からの評価ではなく、事実を伝えている。


これを私は結構大事なことだと思って、保育士をしてきた。


なぜなら、大人になってスプーンで食事をして褒められることはない。
いつか、それが”当り前”になる日が来る。

「すごい」に慣れた子どもは、スプーンで食べるたびに「すごい」と言われたがり、大人に「すごい」と言われるためにさまざまな行動をするようになる。

”褒められたいからスプーンで食べる”というのは、子どもの生活習慣の獲得において、手段が目的化していると思っている。





先日、ショッピングセンターの100円均一ショップで、私物用にほうきとちりとりを購入した。

他にもいろいろ買ったので、肩掛けのエコバッグはパンパンになった。

そのまま、食料品売り場へ行き、買い物をした。

時間は、平日の午後3時。
それほど混んではいないけれど、ガラガラというわけでもなかった。

ふと、後ろに人の気配を感じて振り返る。

初老と高齢の間くらいの方が「邪魔だなぁ」とつぶやきながら私の横を通り抜けていった。

避けながら「すみません」と言う。

他にも、何か言いたかったけれど、何と言ったらいいのか考えている間にその人は行ってしまった。


何を言いたかったのか、考える。

売り言葉に買い言葉で返すよりも、知的にガツンと言いたい気分だった。

「どいてほしいなら、どいてくださいですよね?」とか???
(これは、売り言葉に買い言葉に含まれる?)


そもそも、何故「邪魔だなぁ」と言われたのか考える。

確かに、広くもない通路でほうきの柄の飛び出たエコバッグを持って、商品を見ながら歩く人は邪魔だと思う。

でも、私が逆の立場だったら邪魔だと思っても「邪魔だなぁ」とは言わない。

避けて別の通路を通るか、しばらく待つか、「すみません」や「通してください」と声をかけるだろう。

マナーというか、相手への気遣いだ。


そこでふと思う。

「邪魔だなぁ」ってその人の個人的な感想であり、別に私がイライラしなくてもよかったのではないか。

事実を伝えられただけだなぁと。
保育園で私が子どもに事実を伝えているのと同じことだ。

ただ、先日のそれは、(私の主観だけど)トゲのある言い方だった。

やはり言い方は大事。





どうやら世の中には聞くとイライラする事実とそうではない事実があるらしい。

そして、言い方は大事。

誉め言葉でもなく、嫌みでもなく、子どもに事実を言う時はなるべくフラットな気持ちを心がけよう。


そんな学びになった。






おしまい





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