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株式会社Liquitousの市民参加型オンラインプラットフォーム「Liqlid」について

今回は、市民参加型オンラインプラットフォームを用いて、「一人ひとりの影響力が発揮できる社会」を目指す株式会社Liquitousの代表取締役CEOの栗本さんにインタビューを行い、内容をまとめてみました。

初めに


今回私がインタビューした経緯としては、民主主義国家である日本が政治に関しては毎日動いているのに、国民や市民が選挙の時にしか政治に関する議論がなされていないことに違和感を感じました。そして、市民が常に政治を直接考える形として、オンラインプラットフォームを利用するような液体民主主義という概念に着目し、液体民主主義の概念を一部取り入れた「Liqlid」を開発・普及しているLiquitousさんに取材しました。また、このような新たな政治への市民参加の形を多くの人に知ってもらい、自分自身に政治へ参加する権利があることを理解し、政治に関する議論をより日常的にしてもらいたいです。

Liqlidとは


簡単に言うと市民や行政が参加・書き込み可能なオンラインプラットフォームです。

Liqlidの特徴


Liqlidの主な機能は以下の通りです:

  1. 行政から市民への情報提供:行政の持つデータや資料を市民に可視化します。

  2. 意見の集約:行政側から市民に対してテーマを示し、意見を集めます。

  3. 政策のたたき台の提示:行政側から政策のたたき台を示し、市民と双方向でも一方方向でもリクエストをもらいます。また、チャット形式で市民と行政でやり取りをすることができ、投票を行うことも可能です。


特に注目すべきは、投票機能です。行政側から政策のたたき台を提示し、それに対して投票してもらう際の投票機能として、自分の票を他の人に委任するという液体民主主義の原義である委譲民主主義の発想を取り入れています。また、台湾のオードリー・タンが提唱しているクアドラティックボーティングのような一人ひとりに持ちポイントを与え、複数の選択肢に対してポイントを消費することで、選択肢に傾斜をつけながら投票できる機能もあります。

従来の市民参加との違い


Liqlidは従来の市民参加と比較して、以下のような特徴があります:

  1. 双方向性が高い:市民の様々な声を集め、それに対して行政側がフィードバックを行い、それを市民に示すことができます。

  2. 機動性の上昇:政策が実施される期間で、今までよりも丁寧に市民の声を反映させやすくなります。

  3. 意見の共有:オープンなプラットフォームであるため、他の市民の投稿を見ることができ、市民間や行政との間で価値観や意見、発想の共有ができます。

行政側のLiqlidの活用方法


行政側は、以下のような方法でLiqlidを活用することができます:

  • 計画策定:行政がLiqlidを使って政策を実施する計画を作る際に、市民の声を聞きながら策定します。

*政策が市民に届くまでの流れ:政策⇒施策⇒事業
 政策とは行政が行う基本方針
 施策とは政策を実現するための計画
 事業とは施策をより具体化したもの

  • Living Labとしての利用:地域課題に対して市民や企業が議論をしながら、課題の定義から解決策まで発見し、行政や企業もしくは市民が解決策を実行する一連の仕組みであるリビングラボとしての活用が有効です。

  • 公有財産の活用:公有財産の活用に関して、Liqlidを使って住民合意形成を行います。

  • 公聴:特定の政策課題の公聴として市民の意見の収集を行います。

  • こども基本法に基づく利用:こども基本法に基づきこどもがこども政策に対して意見表明できる仕組みとしての利用が可能です。

*こども基本法とは2023年に施行された法律で、こども・子育て政策に関して、こどもや若者の意見を反映させるように義務付けた法律です。

  • 行政評価としての利用:行政の取り組みを行政の外部である市民が評価します。

  • 実証事業実施時の市民参加型の調査・評価:実証事業実施時に市民参加型の調査・評価を行います。

  • くじ引き民主主義の活用:ランダムに市民を選んで討論することで民意を取り入れるくじ民主主義にLiqlidを組み合わせることで活用します。

Liqlidの成果
Liqlidは、以下のような具体的な成果を上げています:

  • 神奈川県鎌倉市:総合計画策定、人権に関する計画策定、地域との共創において、Liqlidとワークショップを組み合わせて地域の課題を解決しています。

  • 千葉県木更津市:健康増進計画において、がん検診の受診率の低さが課題であったため、Liqlidを使って市民がどうしたら受診するのか市民の意見を求め、計画に反映しています。昨年度計15の計画にLiqlidを利用し、今後木更津市の全ての取り組みにLiqlidの運用を検討しています。

  • 千葉県柏の葉スマートシティ:リビングラボとしてLiqlidとワークショップを組み合わせ地域の課題解決に利用しています。

  • 東京都日野市:行政評価としての利用を行っています。

  • 群馬県前橋市:一般家庭ゴミ減量に関する計画策定にくじ引き民主主義と組み合わせて利用しています。

  • 兵庫県豊岡市:公共交通のあり方に関して決める際、くじ引き民主主義と組み合わせて利用しています。

デジタルデバイドは発生しないのか


高知県日高村で高齢者向けの健康アプリを作る際、Liqlidを用いた結果、300人以上の高齢者の方々がオンラインプラットフォームに参加し、高齢者のニーズを集めることができました。他にも、高齢者のLiqlidの利用は多くあります。これらのことから、高齢者だからデジタルが厳しいという前提は通用しなくなっています。さらに、Liqlidへの参加に関しては、スマホを使いこなせるかどうかよりも扱われているテーマに当事者性があるかどうかの方が大きな影響を及ぼすとのことです。

Liquitousの役割


栗本氏は、自前でプラットフォームを作っているが、提供するだけでなく行政コンサルタントのような市民参画の支援や伴走者としての役割を果たしていると述べています。

今後の動き


今後は、Liqlidの普及だけでなく、Liqlidを利用した結果、行政に対する認識や参画する意識がどのように変化したのかを検証していく研究プロジェクトを進め、Liqlidを深く根づかせていきたいとのことです。

国政や都道府県レベルにも使えるのか


市民や国民が認識できる範囲にも限界があるので難しいとのことです。都道府県レベルだと、権利保障として県民参加の機会を保障すべきだという発想はありますが、現実的に県や都などの取り組みは県民に取って興味のない話が多くて、いまいち反応が悪いという現状であり、国政だとテーマが国民に馴染みのない物が多く、複雑になりすぎているため、市町村単位のほうが相性がいいとのことです。一方で、どうやってLiqlidを普及していくかという観点では、都道府県が調達し、都道府県内の市区町村が共同利用していくという形もあると述べています。
以上、株式会社Liquitousの代表取締役CEO栗本さんとのインタビュー内容でした。

高校生法学研究会
文責・作成者:記事部リーダー滝澤健太

株式会社Liquitousホームページ:https://liquitous.com/
高校生法学研究会ホームページ:https://hogaku-kenkyu.studio.site/


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