くしゃみ

あ。出そうだ。
と言われるたびに、私は、鼻の下を抑えた。
あなたは一生信じなかったけど、これで本当にくしゃみは止まるのよ、止まっても、今のは、絶対にたまたまだってずっと言って、何回私がくしゃみを止めても信じてはくれなかった。
きっとこの会話も、思い出すこともなく、あったことすら忘れているだろうあなたと比べ、私はわざわざ思い出す作業を、毎日している。もう、忘れないようにしているだけだなって、自分でも気がついている。
いつかきっと新しく好きな人ができてもまた、私はくしゃみの止め方を教えるのだろうけど、その時には綺麗さっぱりあなたのことなんて思い出さないで、たまに夢に出てくるくらいでちょうどいいと思える、なんでもない日常の、なんでもないただの思い出になってくれた、今は空が高くて気持ちがいい。

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