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【Yコンビネーター S23バッチ】 Generative AIスタートアップ 5選

こんにちは、HAKOBUNEでGenerative AIを担当している有村です!

Yコンビネーター最新バッチにおけるGenerative AIスタートアップのカオスマップを作成しました。
約200社あるS23バッチのうち、なんと20%以上ものスタートアップがGenerative AIに関連したものです。

今回はその中でも特に気になったスタートアップを紹介していきたいと思います!


S23バッチ 注目スタートアップ

1. Mano AI : 猫の手も借りたい人のためのAIアシスタント

カテゴリ
#コンシューマー #チャットボット
創設者

Nicolas Raga:https://linkedin.com/in/nraga
Omar Mihilmy:https://linkedin.com/in/mihilmy

Mano AIはChromプラグインで使えるAIアシスタントです。

ChatGPTが現代人の作業効率化に欠かせないのはもはや周知の事実となってきましたが、使いにくさが残るのは否めないでしょう。
例えばより詳しく知りたい文章があったら、一度それをコピーし、ChatGPTを開いて貼り付け、プロンプトを入力するという手間がかかります。
さらに例えばメールを書くときなど、同じようなプロンプトを何度も入力し直す必要があります。

こうした手間が多いせいで、ChatGPTの重要性を理解していながらもだんだんと使わなくなってしまう人も多いのではないのでしょうか。

調べたい文章を選択するだけで、自動でプロンプト欄に入力される

そんな忙しいあなたにピッタリなのがMano AIです。
Mano AIは言うなればChatGPTのChromプラグイン版で、使いたい時に即座にAIアシスタントをサイドバーに呼び出すことができます。

使い方もシンプルで、必要な文章をいつも通り選択するだけでプロンプトに自動で入力され、その文章に対して行いたいアクション、例えば「より詳しく教えて」などもボタン1つ押すだけで実行することができます。

スクリーン上の情報を説明させている

さらにオプションでスクリーン全体を読み込ませることも可能です。
今までのチャットボット体験がかなりストレスなくスムーズなものになります。

必要な情報を入力すると、自動でプロンプトも調整される

また「Agents」欄にはさまざまなプロンプトが保存されているため、使用目的に合ったボタンを押すだけで瞬時にプロンプトが入力されます。
個人の好みに合わせてこの保存されたプロンプトを調整したり、新しく作成することも可能です。

共同創設者の二人は共にAmazonでソフトウェアエンジアをしており、そこで出会ったと考えられます。

またMano AIのプロプランは24$/月となっており、ChatGPT Plusプランの20$/月より僅かに高い価格設定となっています。
しかしその利便性を考慮すると、4$のプレミアムは妥当なのではないでしょうか。

2. Khoj : ぼくのわたしのデジタルブレイン

タグ
#コンシューマー #チャットボット
創設者

Saba Imran:https://linkedin.com/in/sabaimran
Debanjum Singh Solanky:https://linkedin.com/in/debanjum

思いついた素晴らしいジョークを友達に披露しようとするも、それがなんだったか忘れてしまい、どこに書き留めたかも忘れたがために、一人枕を濡らした夜があなたにもありますでしょうか。

Khojを使うことでそんな容量の悪い脳みそをアップグレードすることができます。

「イタリア旅行中にどこに行った?」「前回親と相談した内容を教えて」
といった個人的な質問に答えてくれる

Khojはユーザーの個人的なデータにアクセスすることで、本来ユーザーにしか分からないような質問にも答えることができるチャットボットです。

これはパソコンやスマホ内にあるpdfファイル、画像、Notionといったデータソースにアクセスすることで可能にしています。
また以下のように、こうした複数データソース内にある情報を探し出す際にも役立ちます。
プライベートなサーチエンジンといった形です。

検索すると適切な個人情報ソースを示してくれる

またKhojはオープンソースであるため、自分のデバイスに組み込み、オフラインでも利用することがあります。
そのため利便性が増すとともに、個人的なデータを他人に見られる心配をする必要がありません。

最近はなんとWhatsAppという、海外で主流なSNSもデータソースとして指定できるようになりました。
前に友達に何を言ったか忘れたり、約束した時間を思い出したいときなどにもKhojに聞くことですぐさま必要な情報を得ることができます。

共同創設者の2人は共にMicrosoftにてソフトウェアエンジニアとしてパーソナルAIアシスタントの開発をしており、そこでチャンスを感じたのかKhojを創業しています。

人間には覚えられる情報の量には限りがあるため、Khojを2つ目の脳みそとして頼ってみてはいかがでしょうか。

3. Flint : Text-to-教材

タグ
#インダストリー #教育
創設者

Sohan Choudhury:https://linkedin.com/in/sohan-choudhury
Jinseo Park:https://www.linkedin.com/in/jinseo-park/

教師の過重労働が問題になっています。

教師の仕事は授業をすることだけではありません。授業をする際には当然そのための教材が必要になるわけで、小テスト、ワークシート、そしてまとめ資料など、大量の時間がその作成に使われています。
教師の残業の主な理由はそういった事務業務によるものです。

Flintはそんな課題を解決すべく、LLMを活用し、適切な教材を5分で作れてしまうツールを開発しています。

作りたい資料のトピックやカリキュラムを選択できる

ユーザーはまず作りたい教材の属性を選択します。
教材の種類、授業時間、使用する学年、そして科目や内容など。
これらを選択した後、適切なカリキュラム基準を選ぶことで、規定に沿った教材を作成することができます。

小テストが自動で作成される

こうして選択したりプロンプトを入力したりすると、ものの一瞬で小テストなどの教材が作成されてしまいます。

またもし作成された内容に気に入らない部分があったり、もっと問題数を増やしたい場合は、横にあるプロンプト入力のスペースにその旨を書き込むことで、即座に修正されます。

共同創設者は2人ともジョージア工科大学にてコンピューターサイエンスを専攻し、GoogleやAmazonでも働いていたソフトウェアエンジニアですが、教職の課題に目を付けFlintを創業したようです。

特に日本では海外と比べて、こうした教師の事務作業が2倍も多いと言われているので、ぜひ日本の教科にも適応し、日本のマーケットに進出してほしいです。

4. Quill AI : AI証券アナリスト

タグ
#インダストリー #ファイナンス
創設者

Gabriel Banks:https://linkedin.com/in/gabriel-banks-662548230
Kartik Donepudi:https://linkedin.com/in/kartik-donepudi-763a22167

証券マンの残業という歴史の長い課題に対し、Generative AIを使って挑むのがQuill AIです。

金融領域におけるリサーチ・分析業務の効率化のツールは過去にも様々出てきていますが、とりわけGenerative AIとの相性は良さそうです。

LLM(大規模言語モデル)を金融領域にファインチューニングさせることで、対話形式でリサーチができるようになります。
優秀なAIアナリストとして証券マンの業務時間を大幅に減らすでしょう。


「今年の費用はどう変化したか?」
という質問に答え、決算報告書の該当部分を表示する

Quill AIはまず、決算資料や収支報告書を読み込み、ユーザーの質問に対して答えとその根拠となる部分を表示してくれます。
曖昧な答えではなく、細かい数値やファクトと共に提供し、かつどの部分をもとにその数値や結論に至ったかを示しているため、チェックもしやすいです。

CSVデータを取り込み、プロンプトに沿ってスクリーニングをする

また社内外の証券データを取り込むことで、自然言語を用いたより直感的な株式のスクリーニングも可能となります。
例えば「テック企業でP/Eレシオが高い上位5社を出してください」といった複雑な指示に対しても、10秒ほどで結果を示してくれます。

既にBloombergのようにスクリーニングを効率化できるツールはありますが、その高い価格設定でしたり、条件が増えた際に操作が面倒だったりと、課題もまだ残ります。
こちらに対し、Quill AIは低コストかつストレスなくスクリーニングをすることを可能にしています。

共同創設者は一人がMITの学生で、もう一人はMIT卒であり、Cogo Labsというアクセラレーターで働いている際に出会った様子です。

ファイナンス × Generative AIの分野は非常に注目が集まっており、スタートアップも続々と立ち上がっています。
バーティカルGenerative AIスタートアップの先駆けにもなるため、動向を追っていきたいです。

5. sudocode : ノーコード開発の未来

タグ
#開発者 #コード生成
創設者

Randy Song:https://twitter.com/ssh_randy
Alex Ngai:https://linkedin.com/in/alexngai
Tim Baker:https://linkedin.com/in/tsbakertech

ソフトウェア開発時の設計ドキュメントをそのままコードに変換できる。
そんな未来のデベロッパーツールを開発しているのがsudocodeです。

ノーコード・ローコード開発ツールが増え、エンジニアではなくても手軽に開発ができる環境が整ってきました。
とはいえそうした開発ツールの使い方を学ぶだけでもかなりの時間がかかります。

そんな中、自然言語のみでソフトウェア開発ができてしまう究極のノーコードツールが出てきました。

「IDに関連付けられたカウンターの値を操作するAPIサーバーを作成せよ」
というプロンプトで打つ

ユーザーはまず自分が何を作りたいかを自然言語で入力します。
そして「計画を生成する」のボタンを押すと、すぐに具体的な開発手順のドキュメントが生成されます。

プロンプトに対する開発の手順を出力する

ユーザーはこの開発ドキュメントを確認し、何か修正したい部分があればそのまま書き込むことが可能です。

確認が終わったら「実行する」ボタンを押し、そのままAIが自動でコーディングをしてくれます。

手順に沿って自動でコードを書き出してくれる

生成されたコードはフォルダにまとめられ、ユーザーはそれをそのままテキストエディタにペーストすることで、さらに自分でも編集が可能となります。

共同創設者は3人おり、うち2人はToastというレストラン向けにソフトウェアからハードウェアまで幅広いソリューションを提供している会社で働いており、もう1人はGoogleブレインにてソフトウェアエンジアとして働いていた方です。

現状はまだ生成されるコードが完璧ではなく、かつ実際の他ソフトとのインテグレーションにも対応していないため、生成されたコードを再度ユーザーがチェックし修正する必要がありますが、
これから自分のようなソフトウェア開発したいのに、経験がない人のためにsudocodeだけで開発を完結させられるようになれば、急速にスケールすると考えられます。

ノーコード開発ツールの最前線といってもいいスタートアップですので、継続的にデモバージョンを触っていきたいと思います。

バーティカルGenerative AIの黄金期

以上、Yコンビネーター S23バッチのGenerative AIを紹介させていただきました。
今バッチ全体で見ますと、W23(全バッチ)と同じく、開発者向けツールとビジネスにおける効率化ツールが大半を占めています。

しかし顕著な変化としましては、バーティカル Generative AI、つまりは特定の領域に特化したGenerative AIのスタートアップがかなり増えていることです。

基盤モデル、インフラツールが充実し、領域特化のアプリケーションが増えている
Index Ventures:The Rise of Vertical AI

この傾向に関しては、前に書いた「Generative AI領域のゲームチェンジャー」の記事にても触れましたが、LLMの性能が上がり、ファインチューニングやエンベディングのための開発基盤も充実したことで、
様々な領域に特化したGenerative AIのアプリケーションが作りやすくなっています。

Index Venturesも最近の投稿にて、こうした領域特化のAIが急速に社会実装されると主張をしていました。

こうした流れから見ると、Generative AIはほとんどの業界や領域と相性がよく、非常に広範囲かつ不可逆的な変化を社会に与えていることが分かります。

スマートフォンも当時は革新的な技術として社会のあり方を変えましたが、同じような適応可能性の高さを持つGenerative AIも、全領域のあり方を大きく変えるでしょう。

人間とコンピュータの関係性という面で見ても、初めは機会言語で指示し、それからはタッチスクリーンでのスワイプといったより直感的な操作をするようになりましたが、
我々人間がずっと使ってきた自然言語でコンピュータと対話できるようになるというのは自然な流れだと思います。

このGenerative AIという時代のビッグウェーブに乗り遅れないよう、
引き続きリサーチをし共有していきたいと思います!

最後に

次回の記事では、海外VCが投資したGenerative AIスタートアップにより焦点を当てていきたいと思います。
HAKOBUNEはこれまでにも、社会性を持つ汎用型AIを開発しているEuphopiaや、AI司会者によるオンラインミーティングの自動化サービスを提供しているtenderなど、Generative AIを活用したスタートアップに投資してきました。
これからの社会を担う起業家や、アイデア段階にいる方々ともぜひお話をしたいと考えていますので、お気軽にご連絡ください!

HAKOBUNEのウェブサイト:https://www.hkbn.vc
記者のTwitter:https://twitter.com/shinichi815


<参考資料>

Y Combinator, Startup Directory
Index Ventures, The Rise of Vertical AI
HAKOBUNE, Generative AI領域のゲームチェンジャー