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【アジア周遊記5】アンコール遺跡で砂埃のバイクデビュー

お次はカンボジア!
ずっと行きたかったアンコール遺跡群を見に行く。

シェムリアップの空港では、飛行機から降ろされると「んじゃ勝手に歩いてね〜」って感じで放置されるのがよかった。他の乗客に付いて、だだっ広いコンクリートの上をテクテクと歩く。

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空港が地味でいい。気取ってない。
大型温泉旅館かと思った。あるよねこういうの。

さてカンボジアに着いてまず思ったことは
「太陽が赤い!」

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iPhoneでも伝わるこの火の玉感。
真っ赤な夕日とはこのことだったのか。
からっと乾いた空気は砂々しく、トゥクトゥクの走る道路はボッコボコのガッタガタで「そうそうこれが求めていたカンボジア感です〜!」と心躍る。

ちなみにカンボジアの交通は、またこれもユニークで、交通量は他のアジアの都市より少ないしスピードも出さないにも関わらず、中央線はないも同然、ガンガン対向車線を走る。みんなマリカーのように好きなところを走る、が双方向。
これは、道が整備されてなくて突然巨大な穴や土砂の山が現れるのでみんなそれを避けているんですね。だからスピードもそんなに出せない。逆に安全な感じがしました。(他の国のスゴい運転に慣れた後だからなおさら)

そうして赤い夕日を眺めながらトゥクに揺られていると、ある歌が突然頭を流れてきた。
忌野清志郎の『ギビツミ』
ある場所にやってきて、あるいはある景色を見て、唐突に浮かんでくる歌がある。それは声高に心に訴えかけてきて、気付けば口ずさんでいて、聴きたくて堪らなくなる。
そのときもそんな感じで「カンボジアは清志郎で決まり!」と、ずっと決めかねていたカンボジアで聴く音楽は難なく決定。

20代前半の女性が普通、どんなタイミングで「清志郎的情緒」に陥るのかは不明だが(そもそもどれくらいの20代前半の女性が清志郎を日常的に聴いているんだろうか、全く想像がつかない。仲のいい同い年に「知らない」と言われたときはかなりショックで、苦し紛れに「あのセブンのCMのさ…」と言うしかなかった)、私の「清志郎的情緒」は大方「外の景色を眺めながら・早くとも昼過ぎ以降に・比較的唐突に」やってくる。電車の窓際で揺られているとき、ランニングしているとき、夜風に吹かれぼーっとしてるとき。夕焼けめいた情景や夜の静寂ばかりが思い出される。
私が本格的に(亡き)忌野清志郎と出会ったのはタバコのおいしさに気づき始めた時期で、彼の音楽が私のチルタイムの質とタバコの消費量に貢献したのはおそらく間違いないと思う。うん、ほんと、悔しいくらい良いんだ夜のベランダとかで聴くと、、、


さて、清志郎を聴くとなれば、旅のプランも少々変わってくる。

バイクに乗ろう。

唐突な、しかし覆らない決定事項。

翌朝バイクを借りに行った。
ちなみにバイクを運転したことはないし、エンジンのかけ方も知らない。
でもこういうのって勢いというか、イケる!ってときにやってしまうのが最善。
まさかカンボジアでデビューすることになろうとはだけど、まぁ原付くらいぶっつけでいけるっしょ!

操作方法を教えてもらって、いざ、世界遺産アンコール遺跡へ!

あ〜ら意外とかんたんで楽ちん。
「片道20kmくらいだったらチャリで行くわ!」的に生きてきたロードバイカーとしてずっと見て見ぬ振りをしてきた存在、原付。
やはりこの味をしめてしまったらチャリ、こげなくなりそうだ。

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そしてシェムリアップ市内を出発。
セーラー服とバイク、よくないですか。


街を離れれば、幹線道路を除いては道はどんどんガタガタになる。
おとなしく大きな道だけを走るのはつまらないので、ちょっと小路をぬって人々の生活を垣間見てみる。

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砂々しさ、伝わるでしょうか。

カンボジアを走っていて非常に驚くのは「空気ってこんなナチュラルに砂を含有できるんだ」ということで、空気がデフォルトで砂埃だから、砂埃の中を進んでいる意識はないのに全身が砂っぽくなっていく。
息を吸うのもちょっと苦しいし、腕はザラザラしてくるし、「まつ毛足りない」となる。
カンボジアの人々は特出してまつ毛が長いようでもなかったけど、どうやって目に入ってくる砂に対処しているんでしょうか。私は目が開きません。

辿り着いたのは、、、


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変質者並みのフル装備!
なお腕は捨てた。しっかり焼けたが暑さには勝てん。服もなるべく砂を吸いにくい素材で、面積を最小限にするのがカンボジアンスタイルです!
なにゆえこんなキメ顔で写真を取れたのか今となっては謎だが、頭にしっかりCAMBODIAと貼ってあるの、いいですね。決意が感じられます。

さて進む進む。

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まずはアンコールワット!ついにやってきたぜ!

そしてそこからいろんな遺跡を回る。
さすが遺跡群というだけあって、ちょっと走らせるとすぐに遺跡が出現。あ、また出た。

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壮大に、繊細に、美しい。
これ以上はいい。
The世界遺産・アンコール遺跡群の凄さはきっと書かなくても分かるだろうし、同時に、きっと書いて分かるものではないから。
バケットリストに入れている人はなるべく早めに訪れてください!としか言えない。

しかしながら困った。
初めはじ〜っくり丁寧に見ていたものの、人間は怖いものでだんだん目が遺跡慣れしてくるんですね。観光客的マインドをサボり始める。
「ぉ〜」と小声が漏れた一秒後には「これ一番上まで登った方がいいやつかな」とか「どんぐらい広いんだろう…」とか邪念だらけになる。1DAYパスで全部の遺跡に入れますが、一日で全部に足を踏み入れてじっくり見学するのは至難の業。

途中ルートを外れて遠くの遺跡までツーリングタイムを挟んだのは正解だった。
個人的には、野生ポケモンのペースでポンポンと遺跡が現れるのに気持ちが追いつけなくて、目にするものの凄みをゆっくり、願わくば音楽と共に、噛み締めたかったのである。少しの冒険。

往復2時間ほど、田舎道をブルブルと走らせる。すれ違った観光客は数人で、だいたいみんなガイドのトゥクトゥクに乗せられていた。
不思議なものを見るような現地の人々の視線を感じながら、ガス欠にならないかドキドキしながら(メーターが壊れててスピードすら分からない)、目に映る穏やかな景色の新鮮さと懐かしさに揺れる。
木々に囲まれたうねった道、平たい学校の校舎から漏れる子どもたちの声、建設途中の建物特有の気配、突然ひらける景色、優雅に草を食べる牛たち、まだらに人々の生活、肉の焼ける匂い。
なんだろう、知っている景色とはきっと少しずつ大きく違っているのに、懐かしさを感じるのは。心の中の懐かしい景色の断片が、目の前の知らない情景と出会って呼応するように光る。

次第に雑多な心配ごとが頭から消えていく。
吸い込む砂埃にも慣れて、マスクもいつからかしてなかったな。
冴えながらぼーっとしているような。
考えることの無意味さを知る。ぽつりぽつりと意識をかすめる言葉たちはいつもと違った響きをもっている。その意味は分からない。何の意味も分からない。今はそれがいい。ただ私という人間が今、バイクに乗ってこの道を走っている、奇妙だが意図された道のりの途中。

打ち解けあった あの頃のことを
思い出せば 風が吹くよ もう一度
Give it to me 僕におくれよ

清志郎が歌う。
私も歌う。

今という瞬間がこれほどまでに親密で、紛れもなく今であるということが嬉しい。
今がちゃんと今であることは、本当はすごく難しいことなんじゃないか。
私はよく、間違える。あるいは、間違えずに混同させる。今や過去や未来を。
何年も前のことと明後日のことを同じ鮮やかさで運べてしまう器用さは時に残酷だ。
かき回してはやり直して、繰り返しては眠る。
引き伸ばされては淡く、擦れ合っては消える。
それはそれでいい、そういう生き方に甘んじながら堪えてゆく。なんの修行だろう。そうやって磨かれてゆくものがあったっていい。
だって、私たちの時間ほど不確かなものがいったいどこにあるというんだろう。


砂埃はもはや優しい。

少し自由になろう。
茶番でもいいから、本当でいよう。
ゆるやかに、等身大の思いで。遠くが見えすぎぬように。

結局この日は一日中バイクを走らせていた。





カンボジアでは毎夜、有名なPUB STREETのエリアで夕食を食べた。

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人々の賑わい。
あんな遺跡たちのすぐそばにこんな場所があるのも凄い。

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毎晩クメール料理とカクテル。お酒を飲んでいるのにこんなに白米が進むなんておかしい。


ある夜、テラスで夕食を食べていたら突然のスコールに遭遇した。
突然の破裂音にも似た音。近くで車でも衝突したのかと思ったほど。驚いて顔を上げればすごい勢いのシャワー、人々が走る。店の人は屋台を畳んだり看板をしまったり。

屋根に守られていた私は、近くにいた欧米人たちと「スゴいねビックリだね」とか呑気に言いながらも、その美しさに息を呑んでいた。
突然の土砂降りは、一気に世界のバランスを変えてしまったようだった。
濡れた路面に吸い付くタイヤの音、迷子のようなぬるい風の匂い、足早にサンダルを鳴らす人々の影。
全部、美しいと思った。

しばらくして雨が止めば、その独特な音の響き方や湿った匂いを残したまま、街はまたなんでもなかったように光る。

私は余計にコーヒーを頼んで、しばらくそこで深く、息をする。




《番外》
カンボジアで学んだこと!

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①カンボジアのマッサージ店では需要と供給のバランスが著しく偏っている。

すげー客待ってんだよなー、シフトマネージャーに言ってあげてー

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②猿が総じてやんちゃ。

あらゆるところであらゆる種類のいたずらをしている猿たちを見かけた。
そう、猿はこうでなくっちゃ!という全猿の鏡。なお攻撃性はない。

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③静岡からチャリで来てる猛者がいる。(?)

どこかの遺跡のバイク置き場で発見。二度見してしまったよね。
どういう経緯でこのチャリがここへやってきたのか、いろんな想像をしてしまいました。

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④カンボジアの日本居酒屋のオススメにはグレードがある。

まぁ、Osusumeする側の立場になってよくよく考えてみたら、そういうことだってあるかもしれない。今まで何も考えずに「オススメなんですか〜」とか投げやりな質問をしてきてすみませんでした。


、、、おわり!


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