イマムラカオリ

そこに旅はあるか。今日も平和なベランダでものを読み、ものを書く。日々のこと・音楽・映画…

イマムラカオリ

そこに旅はあるか。今日も平和なベランダでものを読み、ものを書く。日々のこと・音楽・映画・旅行記・散文など。Instagram:@kaooocho

最近の記事

自慢なんかじゃないけれど、あんな旅はもうないか

叶わなかったことばかりが部屋の隅々に転がっている。 叶ったことはきっと多すぎて忘れてしまうからだろう。 何もない平日、外は快晴。 いつもより丁寧に台所の掃除をして、掃除機をかける。 幸せという言葉でひとまとめにしたくない日々には、たくさんの言葉が忙しない思考の間をすり抜けてゆく。 買い物へ出かける。 もうトレーナー一枚では肌寒い。 信号機。赤、青。 あの人は海も、走るのも、嫌いだったな。 だから私はこの街でよく海沿いを走った。 たくさん走った。 水色の空には白い三

    • どうしようもない

      心奪われる夢を見た。 もうしばらく会っていないはずのあの人が夢に出てくるのは久々だった。 「今までありがとう、楽しかった」 と言ってその人の身体は消えて見えなくなった。 ''ありがとう楽しかった''なんてもんじゃ収まらない感情をもっともっと伝えたかったけど、 「私も本当楽しかった、ありがとう」 と私も返した。 姿のなくなったその人の声は、 「今から夢で会いに来て」と言った。 私は「わかった」と言った。 その瞬間に目が覚めた。 しばらく、ここが何処だか分からなかった。

      • ぽよぽよ日記〈電気風呂、長電話、すももと物事のいい面〉

        梅雨の季節のぽよぽよ日記。 時系列なんていらないぽよぽよ日記。 6月〇日 深夜、同居してる相方が酔っ払って窓から帰ってきた。普通に怖いからやめて欲しい。 「鍵どうしたの?失くしたの?」と何回聞いても「かおりがドア開けてくれないから〜」の繰り返しだったからもう聞くのやめた。 やれやれ、私も酔っ払ってる時ってこんな感じなのかしら。 6月〇日 車を走らせて紀伊半島を旅した。 「今日はどこに泊まろうか」とか、お腹いっぱいにならないように食べたいものを慎重に吟味してみんなで分け合い

        • だからわたしは左手で祈る

          恋人から手紙をもらった。 ちょっと困っちゃうくらい素敵な。 私の恋人はしばらく右手で文字が書きにくい症状が続いていて、日常も大変そうである。 ノートが取れないとか、日記が書けないとか、ちょっと名前と住所書かなきゃいけない時とか、生活の色々なタイミングで苦労があるんだろうな。 何もしてあげられない私はこれを機に毎日左手で文字を書く練習をしている。 上手い字が書けなくても二人で一緒に下手くそな字を書きながら面白がって生きられればいい。と思って。 (別に私はそもそも右でもひじき

        自慢なんかじゃないけれど、あんな旅はもうないか

          いろんな「好き」とか「それでもいい」とか

          「あなたのことが好き」だと言われた。 もっと一緒にいたい、知りたい、と。 その夜も私は黒ラベルの缶。 週末なのに人のいない夜だった。 「私も好きだよ」と返した。 もっと一緒にいたい、知りたい、と。 心の底からの思いだった。 でも、今返した言葉は、私が別のあの人にずっと言って欲しかった言葉だった。 そっくりそのまま、あの人がそう返してくれたならどんなによかっただろう。 新しい関係の中でそれなりに賑やかな日々を送る最近も、私は時折、遠いあの人やあの日々のことを想ってしまう

          いろんな「好き」とか「それでもいい」とか

          大事にすること、就寝後の花火と焼きそばパン

          泥のような日々がしばらく続いた。 というか、泥になった。 イケイケドンドンぶっ飛びエブリデイ!みたいな楽しい半年間のつけが回ってきたような。 自分のエネルギーが急に底をついて、ただただ生きるのが下手としか言いようのない毎日。 そんな時は何をやってもダメで、頑張ろうとすればするほど気持ちいいくらいボロボロになっていく。ぶっ飛ばしてはへたこいて、ぶっ飛ばされてダウン。 すべて大事なのに何も大事にできない。何故この歳になって未だに生きる加減が分からない!救いようもないぜ。

          大事にすること、就寝後の花火と焼きそばパン

          優しくしたこと、優しくされたこと、全部まだ好きだな

          世界が揺れているのか、自分が揺れているのか、わからなくなるときがある。 リアルな今で手一杯な私は、持て余す感情を走り抜くことしかできない。 今がいつも夢のようだった旅は一度終わった。 ずっと続かなくても実は良かったけれど、それはきっと、本当は抜け出すことなんてできないからだろう。 いつか、異国の暑い道。 足りなくて余るバックパック。 言葉にすれば少しズレてしまって、言えずじまいのまま一人歩いた。 汗で湿ったTシャツ、甘い絵葉書。 サンダルを蹴飛ばす。 そうか、足を進めた

          優しくしたこと、優しくされたこと、全部まだ好きだな

          「鎌倉に住んだら」新居を決めた日のエトセトラ

          先日、鎌倉に新居を契約した。 由比ヶ浜1丁目、2DK、親友と二人で暮らすささやかな部屋。 今年に入ってから頻繁に鎌倉に通っている私は、お友達も増えてきたところだったので、前々からの夢だった湘南ライフについに踏み切ったというわけである。 とは言っても勢い半分なところもあるから、部屋を契約するときには少し緊張した。相変わらず一ヶ月先の未来さえもわからない生き方だけど、まぁいいか、前を向いているうちに足を踏み出そう! その部屋は、仲良くなったバーのおじさんが教えてくれた立地最強

          「鎌倉に住んだら」新居を決めた日のエトセトラ

          来年はもうこんな風に生きていない

          と思って最近は生きている。 人は勝手に次もまた次も永遠にあると錯覚して、大事なことをやりそびれるから。 まぁ、そう思っていても後悔ばかりのぬるい毎日だけれど。 日記を書けない日々が続いた。 梅雨の間はすべてが下り坂で、何かができるとか、そもそも何かをしたいとか、そういう気持ちが遠くに行ってしまっていた。 先は見えず、今を見渡せば暗いことしかなかった。 後ろを振り返れば素敵なものがたくさんあったけれど、それが余計に痛かった。 爪を3回塗り直す間にいろんなことがあった。 5

          来年はもうこんな風に生きていない

          あの人が薄くなって、夏が濃くなった。

          私に手紙を書いてほしい、と彼女は言った。 最後に手紙を書いたのは数ヶ月前、ここではない遠い場所。 こっそりと忍ばせた小さな封筒。 久しぶりに出たベランダは、少し湿った匂いがした。 Chet Bakerのトランペットが部屋から漏れて、空の表情が少しだけ揺れる。 私はしばらく煙草を吸っていない。お酒だって飲んでない。歌の一つも歌っていない。 興味があることといえば良質な映画と他人の痛みくらいで、てきとうな音楽を聴きながら明日の天気について考える日々だ。 そして今のところ、そ

          あの人が薄くなって、夏が濃くなった。

          寒い季節の一人旅(夏の手前で今一度)

          寒い季節の一人旅が好きだ。 その寂しさが。 まだ十代の冬、大学にも入る前、 初めて一人で見知らぬ土地を巡った。 行き着く先も知らず、いろんな街を歩いた。 いろんな場所で眠り、すり減らすように音楽を聴いた。いろんな景色を好きになった。 数冊の文庫本を、まるでお守りのように運んだ。 買ったばかりの数万円のカメラは、今よりずっと大事だった。 一人旅の寂しさを愛するようになったのはきっとこの時だ。 でも、いつまでも続かないからいいもので、 少し暖かい匂いの風が吹き始める頃に東京へ

          寒い季節の一人旅(夏の手前で今一度)

          街のしずく

          長い夢をみて、いろんな夜のことを歌にした。 秋を蹴って 進めたペダルに 君への願い少し込めた 流れる景色 片目でつないで 残りは全部リュックに詰めた 僕は醜い街のしずく 余らせた記号 果たせない今宵も 迷いの中で 弄った理想も 忘れるには大きくなったな 手袋外して 君のこと思った 僕は醜い街のしずく 指でとかす 夜にぼかす 僕は醜い街のしずく 風が揺れて 足音重ねた 大事すぎるから嘘をついた どこでもゆける 僕らは 思う人だけ 不自由だ 君があの曲を覚えてるといいな 君があの夜を覚えてるといいな 海がひらけて食べきれないパン二つ 君がいたらと少し思った 指でとかす 夜にぼかす 近頃 君は遠いな 風邪なんかひいてないといいな コーヒーの湯気が 右手と月をつなぐ ここじゃない今日もあったのかな 君の言葉は本当の意味をもつ 君の足どりは鮮やかな色を放つ 君のまなざしは少し遠くを映す 君の流す歌が季節を連れてくる 君がいたらと少し思った

          【アジア周遊記5】アンコール遺跡で砂埃のバイクデビュー

          お次はカンボジア! ずっと行きたかったアンコール遺跡群を見に行く。 シェムリアップの空港では、飛行機から降ろされると「んじゃ勝手に歩いてね〜」って感じで放置されるのがよかった。他の乗客に付いて、だだっ広いコンクリートの上をテクテクと歩く。 空港が地味でいい。気取ってない。 大型温泉旅館かと思った。あるよねこういうの。 さてカンボジアに着いてまず思ったことは 「太陽が赤い!」 iPhoneでも伝わるこの火の玉感。 真っ赤な夕日とはこのことだったのか。 からっと乾いた空気

          【アジア周遊記5】アンコール遺跡で砂埃のバイクデビュー

          【アジア周遊記4】バイクは轢きにいけ!/文化の生まれる場所(ハノイ・ホーチミン)

          ベトナムはハノイ。 ルアンパバーンから飛行機で飛んできました! 思ってたより寒いのね。2月終わり、何も考えずちょうど旧正月テトの期間に着いてしまいました。 閑散とする街、、、 と思いきや、中心部へ行くと人人人!思った通りのハノイ! がちゃがちゃしてるし、ゴミは多いし、いろんな匂いが代わる代わる鼻を刺激、、、 いろんな街を歩いてきて、ハノイは音楽を聴きながら歩けなかった唯一の街だった。 そう、バイクだよバイク!すんごいんだほんと! 量もそうだし、なんだろう、容赦ないん

          【アジア周遊記4】バイクは轢きにいけ!/文化の生まれる場所(ハノイ・ホーチミン)

          【アジア周遊記3】ダブルパバーンは気にしない、ラオスは最高にチルい国だ!!

          さてラオス、 なんとか国境越えてビエンチャンの街を一日まったり観光。 タイより涼しく、人も少なく、静かで、時間が穏やかに流れる。 目力強めの犬的ライオン寺院や、 凱旋門的な凱旋門より趣のあるかわいい門や、 ビリヤードして永遠に独り占めできるおしゃんカフェや、 しっかりシーサーポジションを取る守り神的わんなど しかしビエンチャン、何よりも記憶に残っているのは、電線。 え、すごくない?電線ってこんな通して良いんだっけ? 木に同化。 もはや電線しか目に入らない。

          【アジア周遊記3】ダブルパバーンは気にしない、ラオスは最高にチルい国だ!!

          【アジア周遊記2】熱に浮かされバンコク・100%バナナで国境を越えろ!!

          パラワン島での二泊を終え、半日マニラ観光をしてからバンコクの宿に着いたのは深夜2時頃。 飛行機がめちゃめちゃ遅れた。 バタンとベッドに倒れ込み、思ったのは 「これ絶対熱あるな……」 そりゃそうだよな〜。 フィリピンで遊び疲れ、マニラの車ではガチ酔いしてダウン。しかも胃腸の調子が悪くてしばらく満足に食べられてない。 なんなら序盤沖縄のときから風邪っぽかったもんな。毎夜気だるさにビクビクしながら眠っては朝回復してて「今日もまだ行けそうだ」とホッとするみたいなのを繰り返していた

          【アジア周遊記2】熱に浮かされバンコク・100%バナナで国境を越えろ!!