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一人会社の経理塾~個人事業主?法人?事業形態の選択~


(1)はじめに

起業する際、自身のビジネスをどのような形態で運営するかは、非常に重要な選択となります。
これは、ビジネス戦略、経済的リスク、そして税金の取扱いに直結する事象であり、適切な知識と計画が必要となります。

おそらく、これからビジネスを始める多くの方々、あるいはすでに事業を運営しているが法人化を検討されている方々にとって、個人事業主と法人(株式会社、合同会社)の具体的な違いやメリット、デメリットが明確でないことが往々にしてあります

当記事では、「法人」「会社」など言葉の位置づけの理解と共に、多くの潜在起業家が抱える、「個人事業主と法人?」、「株式会社?合同会社?」、「事業化に際してどの形態を選ぶべきか?」といったテーマにスポットを当て、疑問や課題に対して、解説していきます。

(2)組織形態の全体像の理解

「企業」、「会社」、「法人」、「個人事業主」などのキーワードやそれらの関連性や違いを以下の通りわかりやすく表現しましたので、それぞれの組織形態の位置関係を把握しましょう。

組織形態の位置づけ

(3)実務上想定される3つの事業形態

新たに起業する際、実務において主に選択されるオプションは、大きく分けて「個人事業主」、「株式会社」、そして「合同会社」の3つであることが多いです。

組織形態の位置づけ(再掲)

それぞれの選択肢は、その特性から異なる利点や課題をもたらし、一人社長のニーズやビジネスモデルによって最適な選択肢が変わってきます。

以下の各組織形態の特徴をまとめました。

個人事業主:シンプルで手軽なスタート
個人事業主は、設立にかかるコストや手続きが比較的シンプルであるため、小規模でスタートするビジネスや個人の専門職、フリーランサーに選ばれることが多いです。この形態では、事業主個人が全ての責任を負うため、利益も全て事業主のものとなりますが、同時にリスクも全て個人が背負うことになります。

株式会社:信頼性と拡張性を備えたビジネス形態
一方で、株式会社は法人格を持つため、事業と個人を分離でき、ビジネスが拡大するにつれて資金調達のオプションも増えてきます。
また、外部との取引においても、「株式会社」の名のもとに行動することで、ビジネスパートナーや顧客からの信頼を得やすくなる側面もあります。

合同会社:パートナーシップを軸にした運営
最後に、合同会社は、株式会社と同様に法人格を持つため、事業と個人を分離できます。
また、合同会社はメンバー間の責任や利益の配分が比較的自由であるため、パートナーシップを基盤としたビジネスモデルの構築に適しています。

(4)事業形態の選択順序

◆ステップ1:「個人事業主」か「法人」かを選択
最初の分岐点では、自身のビジネスが「個人事業主」として運営するのか、あるいは「法人」として設立するのかを判断します。

◆ステップ2:「株式会社」か「合同会社」かを選択
「法人」を選択した場合の次のステップでは、「株式会社」か「合同会社」かを選びます。

事業形態選択ステップ

(5)個人事業主と法人のメリット/デメリット

それではまず、「個人事業主」と「法人」をどのように選択したらよいのでしょうか?以下に、個人事業と法人形態の項目別のメリット/デメリットを比較表にしてみました。
このような観点も考慮し、ご自身に相応しい事業形態を選択しましょう。

事業形態別の比較表

ポイントが多すぎて迷ってしまう方も多いかもしれません。

このような方については、「本業に集中し事業を大きくしたいと考えるとともに、経理など経営業務をアウトソースするコスト負担に抵抗感がない」方は、「法人」形態を選択するのが無難といえます。

(6)株式会社 or 合同会社

次に、法人の中で、「株式会社」と「合同会社」のいずれを選択するとよいでしょうか?
近年は「合同会社」が選択されるケースも増えていますが、一般的には、「株式会社」が選択されるケースが多いことは押さえておきましょう。

会社設立形態のシェア

株式会社と合同会社のメリット/デメリット

次に、株式会社と合同会社のメリット・デメリットですが、
まずは、株式会社と合同会社については税務上の取扱いも含め、似通っている事業形態であることを抑えましょう。
その上で、いくつか相違点があるのですが、一人会社であれば、以下の観点でいずれかを選択するケースが多いです。

①会社設立コスト 
・「株式会社」の会社設立コストは、約20万円 + 諸経費(印鑑製作費用や専門家代行手数料等)と高額
・「合同会社」の会社設立コストは、6万円 + 諸経費(印鑑製作費用や専門家代行手数料等)と低額
②信用度
般的には、「株式会社」の方が信用力が高い

すなわち、どうしてもいずれか迷った場合には、会社設立の金銭的ハードル(株式会社は合同会社に比べ、会社設立コストが15万円程高い)に支障がない場合には、一般的には「株式会社」形態を選択する方が無難なケースが多いと言えます。

(7)おわりに

起業をし、ビジネスを展開していく道のりには、多くの選択と決断が必要です。そして、その中でも初期に登場する重要な選択の一つが、「組織形態の選択」です。

組織形態は、その後のビジネスの進行や、いかに業務を運営していくかに大きな影響をもたらします。

個人事業主と法人、それぞれの特徴やメリット・デメリットを理解し、自身のビジネスプランや将来のビジョンに照らし合わせて、最良の選択をすることが重要です。

最後に、どの組織形態を選ぶにしても、その形態があなたのビジネスに寄り添い、ビジネスが拡大成長していく力となることを心より願っています。

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