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#004_【信頼とパフォーマンス】Trust in Management and Performance: Who Minds the Shop While the Employees Watch the Boss?(#9-3)

Mayer, R. C., & Gavin, M. B. (2005). Trust in management and performance: Who minds the shop while the employees watch the boss?. Academy of management journal, 48(5), 874-888.


本日の論文への惹かれポイント

信頼とパフォーマンスの関係は深めていきたいところ・・・と色々見ていく中で、トップマネジメントとマネージャーの二軸で検証されているところが惹かれポイント。

みなさん、どうですか?
大企業だとやっぱり経営陣は遠いから、彼らへの信頼はあまり意識されないところでしょうか?
スタートアップベンチャーだとどうでしょう?
大企業はわからないけど、ベンチャーだと感覚的には両方な気がします。

この論文の目的は?

信頼が組織におけるパフォーマンスに関係すると考えられているが、信頼がどのような手段でその効果を発揮するのかは、これまであまり明らかにされてこなかった。

信頼は従業員がなすべき仕事に注意を集中する能力に影響を与えるはずであり、この集中はパフォーマンスに関係するはずであると主張しています。

この論文では、マネジメントに対する信頼が、従業員が組織の価値を高めるためになすべき仕事に集中することを可能にする、ということを検証する論文。
従業員の役割内パフォーマンス(自分の本業)および組織市民行動(OCB)と、直属のマネージャー(工場長)およびトップマネジメントチームに対する信頼との関係を調査しています。

POINT1. 信頼がパフォーマンスになぜ影響する?

Dirks (2000)、Davisら(2000)、Zaheer, McEvily, and Perrone (1998)・・・多くの研究で信頼とパフォーマンスは正の関係であることがわかっている。

認知資源との関係
オフタスク(自分の主業務以外)に注意を向けることはパフォーマンスの低下を招くとされています。(めっちゃわかる!!!)
従業員の努力は、形式的に定義された職務を通じて組織に貢献することができるが、組織には、職務内容を超えた形で貢献する従業員(Katz, 1964)、すなわちOCBを実行する従業員も必要であることがよく認識されている(Organ, 1988)。役割内業績もOCBも組織に貢献する。したがって、どちらか一方から注意をそらすような問題は、パフォーマンスを低下させることが予想される。

ここで言いたいのは、従業員がマネジメントに対する信頼を欠いている場合、従業員の認知資源は非生産的な問題、特に自己防衛(Deming, 1994)や防衛行動(Ashforth & Lee, 1990)に焦点を当てた活動であらかじめ占められてしまう、つまりはパフォーマンスが低下する、ということです。

確かに、上司が自分を見てくれている、と信頼できなければ、評価してもらうためのパフォーマンス(媚びを売るとか、ゴマをするとか?)をしちゃうかもしれませんね。その時間、自分の本業に集中、もしくは同僚を助ける、とか会社をよくする活動に時間を使えればその方が生産的ですね。


POINT2. パフォーマンスに関わる信頼~能動的v.s.受動的~

信頼における能動的な行動とは?
積極的に情報を開示することでマネージャーからの支援を受けること。
例えば、従業員がミスや大きな課題をマネージャーに共有し、支援を受けることに抵抗がない(つまり信頼がある)状態であれば、その共有された内容に対して、マネージャーは従業員に発展的なフィードバックを与えることができ、従業員のパフォーマンスを向上させることができる、ということです。

能動的はやや解釈が難しかったポイントでした。(間違っていたらごめんなさい)

信頼における受動的な行動とは?
従業員がマネジャーを積極的に監視しないことを選択すること。
例えば、マネージャーを信頼していれば、マネージャーが他の従業員とどのようなコミュニケーションを取っているか、どのような支援をしているかといった不安に駆られず、マネージャーのふるまいを監視しようとは思わない。
受動的、というよりも信頼しているから「何もしない」なのかと思います。

信頼は能動的な行動にも、自己防衛行動をとらない受動的な行動にも現れる。そしてどちらがよりよい、ということではなく、信頼をベースに能動的でも受動的でもいずれの行動もパフォーマンスを高める、ということだと考えられます。

POINT3. トップマネジメントと直属のマネージャーへの信頼

直属のマネジャー(以下、PM)の業務上および戦術上の決定は、従業員の日常生活に大きく影響するため、PMへの信頼は非常に重要です。
従業員がマネージャーの行動を監視したり、それについて悩んだりする時間とエネルギーは、従業員の注意を、なすべき仕事からそらすことになる。

組織のトップマネジメント(以下、TMT)は、組織の文化や成功に影響を与える決定を下し、会社の財務状況、差し迫った戦略的動き、方針に関する決定を下す。TMTへの信頼がなければ、従業員は会社での自分の将来やレイオフ、会社そのものの将来について推測し、時間と精神的エネルギーを費やすことになるだろう。

PMとTMTの両方に対する信頼は、集中する能力と有意な相関があったとの結果になっています。
集中する能力は、役割パフォーマンス(自分の本業務)とは有意な相関はなかったが、OCBI(個人に向けられた市民的行動)とOCBO(組織に向けられた市民的行動)の両方と有意な相関があった。
PMに対する信頼もTMTに対する信頼も、役割内パフォーマンスとは相関せず。
しかし、PMに対する信頼はOCBIとOCBOの両方に相関があり、TMTに対する信頼はOCBOと相関があった、という結果です。

P.878

従業員が仕事に注意を集中する能力には、マネジメント層の複数のレベルに対する信頼が重要であるということですね。

マネジメント層のレイヤーごとに感じる「不安」の逆反応なんだろうな、と思いました。

感想

精神的エネルギーを費やせば費やすほど、生産的な行動に利用できる認知資源は少なくなる。

認知資源と信頼の関係、という切り口は本当に面白い。
信頼はあった方がいいに決まっている、と多くの人が思っていると思いますが、なぜ?と問われた時に「コミュニケーションが円滑になるから」とか「人間関係が良くなるから」「気持ちよく仕事ができるから」とか、なんかそういう回答になりそうですが、この視点で論じると、すとん、と腹落ちしますね。

これも前回のヒューリスティックと同じで、人間は有限の世界で生きているので、何かにリソースを取られる、というのはとても非生産的ですよね。
https://note.com/hitomin_wans/n/n10476a97d141

いやぁ、、、面白いなぁ。


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