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駅蕎麦 〜食のエッセイ〜

昨日はライブ前に、郵便局や銀行での用事をこなしていて、ゆっくりご飯を食べる時間がなくなってしまったので、初めて駅蕎麦を食べた。

前々から気にはなっていたのだが、出かけるときは純喫茶などで時間を過ごすのがすきなので、駅蕎麦に割くお腹がいつも残っていなかったのだ。

サッと入ってパッと食べて出て行く。

そこにちょっとした憧れがあった。

食べる時間がなさそうだと思って先に焼き鳥屋で焼きおにぎりを買っておいたのだが、ホームに降りて駅蕎麦を発見した私は、今年一の大寒波も相まって、駅蕎麦の食券券売機の前に吸い寄せられていた。


狭い店内に入ると温かくはないが寒さを凌げる。
店内に先客は二人。
壮年の女性店員が一人で店を回していた。

入店の挨拶をされ好きな席をと案内されたので、先客の間を取りつつ、出入り口の風の通り道から一つずれた席に腰を下ろす。
カウンターに食券を置いたが、ほかの客の蕎麦製作に取り掛かっていて食券に一瞥もくれない、と思っていたら、私の目の前にお待たせしましたとどんぶりが置かれて面食らった。

食券発券と同時に店内でも注文内容を確認できるシステムでもあるのだろうか。
もしくは一瞬で食券の文字列を確認したのか。

兎にも角にも30秒と待たずに提供された蕎麦にひとまず感動を覚える。
初の駅蕎麦としては邪道な帆立とネギのかき揚げの乗った温かい蕎麦を私は頼んだ。
揚げ物は基本食べないのだが、期間限定にはとんと弱い。
いち早く蕎麦つゆに浸かっていない部分を口に運ぶ。美味い。熱いうちにどんどん頬張る。でなければすぐに腹が膨れてしまう。
熱いつゆの中から箸で取上げた麺にふぅふぅとお馴染みの仕草をしかけて、蕎麦を啜る。
細い麺はやわらかめですぐに切れてしまう為、消化にも良さそうだ。揚げ物を食べているのがこれでプラマイゼロになるだろうか。
老舗蕎麦屋で出されるような味のしっかりしたコシのある麺と違って、どこか懐かしく優しい素朴な味は、忙しない日々に飽きずに寄り添うクセのなさだ。腹持ちがいい割に胃もたれしないのがなるほど良く出来ている。
夢中になって蕎麦を啜るうち、しまったかき揚げばかりが残ってしまった。
汁を吸ってふやふやになったかき揚げもまた美味いのだが、これだけだと流石に胃もたれしそうだ。七味をかけて味変をしながら頂いた。蕎麦との食べるペースの配分が必須だったようだ。次回に活かそう。
外の寒さを思いながら、最後に温かな蕎麦つゆを一飲みし、身体に染み渡らせてから、ほぅと息をつく。
はぁ、美味かった。

時計を確認すると電車出発の3分前。余裕のあるちょうどいい時間だ。
カウンターにどんぶりをあげて、ご馳走様でしたと声をかけ、また冷え冷えと横風の吹きつけるホームへ滑り出る。

非常に満足。
また違うメニューや店舗も試してみようと思う。



♦︎
今回はあえて一文を長めに段落分けも少なめに語り方も変えて書いてみました。
毎度、文章表現的にも少しずつの挑戦をしています。


なみなみさん🚃

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