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続・すべてのラーメンは限定ラーメンである

前項で「実際は限定ラーメンなしでは売上が立たないから半ば仕方なく作っている」と書きましたが、その仕方なさのもう半分は楽しさでもあります。

では僕の場合どういったきっかけで限定ラーメンを作るのか、6つのパターンに分けてみました。

①クリスマスやハロウィン、バレンタインなど(内心は乗り気ではないしラーメンには不向きなイベントだが何も手を打たないと惨敗必至なので仕方なくそれ)に合わせて作る限定
②余剰になった食材を消費するために作る限定
③季節ならではの食材や夏は冷製やつけめん、冬は味噌など季節に合う調理法で作る限定
④珍しい食材、上質な食材など自分にとって未知の食材を使いたくて作る限定
⑤ラーメンでは使わない調理法、ラーメンには乗らない料理を使う限定
⑥脳内で浮かんだイメージを具現化した限定

順番が上になるほど仕方なさが、下になるほど楽しさが増えてきます。
余剰食材でうまく作るのも腕とセンスの見せどころであり楽しさもありますが、お客様にはわからない(知らせない)部分ですので②になりました。
③④は作り手によっては一番楽しいかもしれませんが、僕は季節感や食材に縛られすぎたくないという思いがあります。季節に揺るがない、真夏でも食べたくなる温かいラーメンが理想だったりします。

6つに分類してみましたが実際には1要素だけではなく2つ以上の組み合わせだったりもします。

たとえば元は限定ラーメンだった「ひつじそば」は④⑤⑥の組み合わせです。
脳内の順番としては④→⑥→⑤で、まずは作り手としての自分にとって未知の食材である羊を使いたい、それならなんとなく中央アジアから地中海のイメージで、具体的には澄んだコンソメでクミンがほどほどに効いててコフタっぽいのが乗ってて…というふうに具現化していきました。

先週の「洛神花そば」は④→⑤



数回出した「オスマン担々麺」「バトゥのつけめん」は⑥→⑤



今週の「番紅花そば」は⑥→④でした。

しかしクリスマス、ハロウィン、バレンタインだとイメージの拘束力が強すぎて他店との差別化が極めて難しく、しかも実はチョコもかぼちゃもさほど好きではないのでまぁしんどいですね。

ただクリスマスのようなイベントに合わせた限定だと年に1回で済ませますので、一番限定らしいとは言えます。
また年1回だけということに対して不満や継続の要望が出ることも殆どありません。

限定でも1回限りだけだったものと数回出しているものがありますが、再販するには自分の中で3つの基準を設けています。

①出来に納得し、回を重ねるごとにさらに美味しく作れる確信を得たもの
②販売初日から売れ、想定時間内に売り切れたもの
③実際に召し上がりになったお客様から「また食べたい」のお声があったもの

以上の3つをクリアしたものは1回限りではなく不定期で出しますし、順レギュラーからゆくゆくは定番化まで考えていきます。

特に③の、実際に食べて下さった方の反応が決定打になります。
売り切れで食べられなかった方の「また出して」と、食べた方の「また出して」は意味が違います。

「また食べたいからまた出して」は評価になりますが、「食べられなかったからまた出してほしい」というのは評価ではないといいますか、飲食店が評価される以前に最低限クリアしなければならない当たり前すぎることだと思います。告知段階で食べたいと思わせられないならSNSをやる意味がありません。

実際に食べられなかった方には冷酷な言い方になりましたが、限られた時間とストックスペースを限定商品の継続のために回すなら、これくらいの条件はクリアできなければ新作に回すほうが合理的です。

食べられなかったお客様がいたことも期間内に売り切れなかったことも様々な要素やタイミングが重なったことであり一概に言えませんが、売り切れるほどの魅力がなかった、わざわざ足を向かわせるほどの商品ではなかった、と割り切って次の限定を作ることにしています。
アイデアだけなら無限に湧いてくる体質ですし。

やはり1回限りよりも何度か続けるほうがより美味しく、より早く作れるようになります。
極力1回限りの限定ではなく不定期の限定に、そこからさらに定番に「昇格」させられるものを目指して限定を作るのが理想でありますし、そこまでクリアしたひつじそばが作られたからこそ人と羊が開店できました。

定番化を視野に入れて作る限定品だから、限定以上に限定感のある定番商品が出来、やがて長く売れ続ける商品と店になるのではないでしょうか。

そういう意味でも「すべてのラーメンは限定ラーメンである」べきだと考えています。

店主の勉強代になります。何かしらのカタチで還元できると思いますので魔が差したらサポートおねがいします。