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#28. もろく消えやすいものだから


日本の書店で洋書はなかなか手に入らないが、新宿駅から降りてすぐ、タカシマヤタイムズスクエアの南館 6F には、Books Kinokuniya Tokyo という洋書専門店がある。

エスカレーターを上ってお店に入っていくと、四方八方の棚に洋書が敷き詰められていて、また外国人のお客も多く、さながら海外の書店に迷い込んだような独特の気分が楽しめる。

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和書もごく一部、たとえば英語学習のエリアに少しあったりするのだが、それも申し訳程度のものなので、そのコーナーにさえ立ち寄らなければ、十分に異国情緒を味わえる。

今日はその Books Kinokuniya Tokyo で、例のフィンランドにいる友だちに、贈るプレゼントを買ってきた。

買ったのは、日本人の精神性を、いくつかの日本語とともに紹介している The Japanese Mind: Understanding Contemporary Japanese Culture と、

ぼくの好きな漱石の『こゝろ』の英訳版。

これに関しては、翻訳したのが日本人であるというのがひとつポイントで、ネイティヴによる完全に自然な英語よりも、日本人的な個性がにじみ出ている英訳の方が、向こうにとって面白いのではと思った結果だ。

しかし、贈るのは本だけではない。そこには自筆の手紙も添えた。「本を贈るね」としか言っていなくても、届いたときに、そこに手紙があるかないかで、喜びの度合いは確実に違うはずである。

実際去年、フィンランドから届いた本に、彼女の書いたメッセージとスナフキンのポストカードが挟まっていたのを見つけたとき、プレゼントを受け取った以上の嬉しさがあったのを今でもハッキリ覚えている。

これは以前からぼくが個人的に心がけていることなのだが、外国人の友だちとの付き合いにおいては、こういう +α の手間を絶対惜しまないようにしている。

誕生日には忘れずメッセージを送るし、彼らの SNS での投稿になにかコメントができると思ったときは、ためらうことなくそうするし、直接会えるとなったときには、面白いエピソードなどをいくつか用意してもいく。

日本に住んでいる日本人同士ですら、時が過ぎれば疎遠になっていく友だちはたくさんいる。なら海外でできた友だちなんて、自分からなにか積極的に働きかけたりしない限り、あっという間にその関係は消えてしまうだろう。

もちろんこれは、外国人との付き合いだけに限ったことではないけれども、いずれにしても、もろく消えやすい友人関係。消えてほしくないと願うのならば、そう思う気持ちの分だけ手間をかけるのがいいと思っている。

プレゼントに軽い手紙を添えることなど、お金も時間もほぼかからない。

なのにたったそれだけのことで、このさき何年のぼくたちの友情がより確かなものになっていくなら、やらない理由を見つける方が、はるかに難しいというものである。


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