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#93. 心はときに、血を流す


「近しい人が亡くなった」とか、そういう類の不幸を話すと、英語ではだいたい “I’m sorry.” という応えが返ってくる。

“I’m sorry.” といえば、「ごめん」の意味で使うのがだいたいの相場だが、この意味だけしか知らないでいると、こう言われたとき「いや、あなたのせいじゃないんですけど」と心の中に「?」が浮かぶことになる。

結論から言うと、相手の不幸を聞いたとき使う “I’m sorry.” は、日本語でいう「お気の毒に」と同じ意味である。

sorry はもともと「痛い」という意味の言葉から来ており、現代英語で「喉の痛み」や「筋肉痛」など物理的な痛みを表すとき使う sore という形容詞とも、語源的には兄弟のような関係にある。

「あなたにそのようなことがあったのを知って、わたしの心は痛んでいます」ということなのだろう。

もっと物騒な言い方として、“My heart bleeds for you.” なんていうものもある。

これは直訳すれば「わたしの心はあなたのために血を流しています」ということで、これもこの意味を知っていなければ、「ええ!?」と度肝を抜かれるかもしれない。

「心中お察しします」などと言って相手の気持ちを慮るのが日本語の優しさだとすれば、

自分の心の痛みを伝えて相手の悲痛に同情するのが、英語の優しさということだろう。


まあ血は流さなくて大丈夫だが。


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