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言葉は自分で分ける 〜りんごとアップルサイダー〜

話す。語る。説く。すべてごんべん。
この三つの違いは、何でしょうか?

「…漢字がまず違いますよね?」

そうですね。ごんべんは共通ですが、
右の部分の「つくり」が違います。

◆『話す』:舌:はなす
◆『語る』:吾:かたる
◆『説く』:?:とく

同じようで、ちょっと違う。
本記事ではこの三つの違いの「話」です。

漢字は表意文字、文字自体が意味を表す
言葉ですので、成り立ちを調べてみます。

話すの「舌」はベロ、口の中のあれ。
ただ、活性化の「活」と同じで、
流れ出る、活発、そんな意味合いの「舌」。
つまり、思いつくまま言葉にする、
言葉が流れ出る、雑談、
そんな意味合いが強い漢字なのです。

語るの「吾」には
「自分」という意味があります。

つまり、主観的。しかし同時に、
交互の互、お互い、にも通じます。
交互に主観をぶつけ合う、つまり語る。

説くのつくりは、
「ふたつに分かれている」象形と、
「口」と「人」の象形から成ります。

税金の「税」にも使われますよね。
税金の場合は、自分の所得(昔は稲)から
「分かれていく」「国に納める」もの。
言葉の場合は、自分の心情から
「分かれていく」「分解する」もの。
ここから「言葉で分解して」説明になる。

まとめると、以下の通りです。

◆話:流れるまま言葉にする
◆語:交互に主観をぶつける
◆説:分解して分かるように

…どうでしょう。
何となくニュアンスは伝わるでしょうか?

思いついたことを言葉にするだけなら、話。
双方向でお互いの思いをぶつけるなら、語。
内容が分かるように筋道を立てるなら、説。

次に、読みからいきましょう。
「はなす」「かたる」「とく」とは?

はなす、は、話すと離す・放すがあります。
心に浮かんだことを放出するのが、はなす。
咄、という漢字を「はなし」という
言葉にあてたのは日本ならではですが、
これはまさに「口から出す」になる。

かたる、には主観が含まれます。
ものがたり、物語、という言葉がありますが、
「竹取物語」など、昔から使われていた。
ただ、厳密には「ものがたり」と
「ことがたり」は分かれていたそうです。
ことがたりは、こと、出来事や事件など
ある特定のことがらを言葉にすること。
ものがたりは、もの、漠然とした
昔は不可思議な力をもつ「もの」を
言葉にしていくことの意味で使われていた。
現実からある程度離して、
作者の主観を交えて語るのが、物語。

とく、は説くだけでなく、解くにも通じる。
ほどく、ばらばらにする、ですね。
溶く、溶ける、にも通じる。
要は複雑なものを単純に分けていく。
「口説く」という言葉もありますが、
これは好きな人を自分のほうに向くように、
相手の頑ななあやふやな心を
分解して解きほぐす、という意味。
ただ、元々は「くどくど言う」という
意味だったそうなので、一歩間違えれば
くどくなりますのでご注意を。
(私の記事も長いので気を付けます…)

◆はなす:心や口から「はなし」ていく
◆かたる:吾、主観を交えて言葉にする
◆とく:ときほぐしながら分解していく

…さて、漢字と読みが一段落したところで、
読者の皆様に問いかけます。

皆様は、話す・語る・説くを
どのように使い分けているでしょうか?
特に、SNS上で。

「話す」は、文字通り思ったことを
言葉にしていく感じです。

X(旧Twitter)ではこんな感じの
投稿が多いですよね。
チャットの雑談なども、そう。
YouTubeのゲーム実況など
臨機応変な感情表現も、これに近い。

「語る」は、音声SNSでは
「語りかける」ような感じで
発信される方が多いのでは?

何か特定のテーマなどを
双方向を想定してやり取りする場合は
こんな感じになりやすい。

「説く」はどちらかと言えば、
組み立てて、分かりやすく、
筋道立てて書いたり話したり、です。

YouTubeの「説明動画」などは
まさにこれでしょう。

さて、発信側はこのように
使い分けていると仮定して、
受信側、受け取る側はどうでしょうか?

「話す」発信を聞く時は、
「語る」「説く」よりも
気楽に受け取れそうです。

ただ、感情や状況をそのまま、
生のまま加工せずに受け取らせるので、
もし悪感情などをぶつけられたら
ちょっと嫌な感じを受けるかもしれない。

「語る」発信を聞く時は、
発信者が何か思い入れのある、
文字通り「主観」を踏まえて
言葉にしているんだな、と思います。

語りを聞くと、自分も語りたくなる。
それが「ことがたり」でも
「ものがたり」でも。
ただ、主観が含まれているので
ちょっと眉に唾を付けて聞く必要がある。

「説く」発信は、話すや語るに比べて
若干、無機質な温度を感じる。

発信者にとっては、受け取る人が
わかりやすいように組み立てて
理路整然と「説明」しているかも
しれないのですけれども、
それが行きすぎた時は、
ドライでクールな感じになりやすい。
ただ、情報を手早く整理して
受け取りたいときには、効果的。

…さあ、いかがでしょうか?

これはあくまで私自身のニュアンスを
言葉にしたものですので、
どれがいい、悪い、というよりは
漠然とそういう違いがあるんだなあ、
と思って頂ければ幸いです。

最後に、まとめます。

本記事では「話す・語る・説く」の
違いについて書いてみました。

SNSでは様々なスタイルの発信を
目にしたり耳にしたりします。
それについて受け取った時の
感情も千差万別です。

言葉はツールですので、
その時々に合った、
それぞれのSNSに合った
「使い分け」をすればいいとは思います。

仮にりんごがあったとすれば、
「生のままかじらせる」のか、
「皮をむいて切っておく」のか
「ミキサーでスムージー」にするのか、
「アップルサイダー」に加工するのか、
それは言葉の「はなし手」、
つまり出し手の加減と、スタイル次第。

…生のりんごが食べたい方に向けて
アップルサイダーを出したら、
「うん、ちょっと違うかも」と
思われてしまいますよね。

読者の皆様は、どのように
発信するスタイルでいきますか?
どのように受信者に思わせますか?
どこまで、自分を見せますか?

※余談ですが、アップルサイダーは
日本では「炭酸飲料」を指しますが、
アメリカやカナダでは「果汁」です。
ヨーロッパではシードル、お酒。
地域や場所が違えば言葉も変わる!
ということを踏まえて
「話し」「語り」「説き」たいですね!

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