西端のコガ

1、和歌山の一事例

前回のnote記事で、地域おこし協力隊の事例を紹介しました↓。

このnote記事では、引用を使って、この事例を深堀りしてみます。

「熊野野菜」の管理者さんは、和歌山県のある地域に、地域おこし協力隊として着任しました。しかし…

現在、2000人を越える地域おこし協力隊が全国にいます。この制度はとてもすばらしいものだと思っています。が、システムの運用側にたくさんの問題を抱えています。半年の地域おこし協力隊で何を思って、何で辞める選択をしたのかを書かせてもらうことで、少しでも運用側が改善してもらえたらと思ってます。

管理者さんはこの記事で、システムの運用側への問題を指摘します。

以下、事例の概要です。

地域おこし協力隊というのは、地域により、2つのやり方があります。1つは、地域のミッションなどもなく、自ら見つけるやり方。もう一つは、地域の決められた仕事が前提にあり、それにプラスして生業を見つけていくやり方。私はこの仕事が決められた後者の地域おこし協力隊として派遣されました。

管理者さんは、すでに決められた仕事があるタイプの協力隊として派遣されました。仕事の概要が述べられています。

1,野菜の集荷 → 行政で実施
2,野菜の一部パッキングと値札付け → 行政
3,朝市前日の野菜の運搬およびのぼりなどの準備 → 行政
4,朝市のオープン → (行政)&活性化委員会
5,朝市のクローズド作業 → (行政)&活性化委員会
6,売れ残り野菜の運搬 → 行政
7,売上の集計作業&会計 → 行政
8,売上金の配布作業 → 行政
私には、仕事が用意されていました。その多くが朝市運用に関する業務です。その依頼されたことに関しては1度も断ることなく、実施してきました。それでも、仕事がない日があったりします。
日曜日 → 休み
月曜日 → 休み
火曜日 → 売上金の配布
水曜日 → 何かあれば言われた業務をするもしくは視察としていろいろまわる
木曜日 → 何かあれば言われた業務をするもしくは視察としていろいろまわる
金曜日 → 野菜の集荷作業&値付け&野菜の運搬
土曜日 → 朝市オープン作業
基本的には、水曜日と木曜日に関しては業務が特にない日となります。

管理者さんは、この決められた仕事がない日を中心に、

◆「熊野野菜セレクトボックスのネット販売」
◆「熊野野菜 孫思いすーぷ」のスープ販売

を始めることになります。

ところが、行政サイドから「待った」がかかります。野菜のネット販売、スープ販売、いずれも問題がある、というのがその理由です。販売を禁止されてしまうのです。

地域にはたくさんのいいものが眠っています。都会の人たちには知られていないものがたくさんあります。これを今までとは違うアプローチで実施することが私の業務ではないのであれば、地域おこし協力隊でいる必要はないので、3月末で辞めさせてもらうことにしました。

結局、管理者さんは、地域おこし協力隊を辞めることになります。

また、田辺市の地域おこし協力隊として、もう1つ問題があると思います。
それは予算の問題です。地域おこし協力隊には、国から400万円の補助金がつきます。しかし、この400万は国へ後請求ということで、田辺市の予算を圧迫してしまいます。その為、田辺市では、400万円すべてを使うことができないんです。
今年度は年間の給料約200万、公用車36万、住居36万、ガソリン、その他雑費月1万円となります。この他に必要なものを申請すれば出るのかというと、出ないんです。
田辺市には残り4人の地域おこし協力隊がいます。彼らは、私のように、何かを地域と一緒に作ろうとしています。しかし、各地域の組織に派遣され、その組織が研修費とかを払ってくれないと、研修に行くことさえできません。それって、何かおかしいなって思うんです。例えば、何かものを作る時に、作っているところに研修に行きたい!商品の販路を広げるために広告費を使いたい!和歌山県でも他の市ではきちんと出ているところはありますが、田辺市はこれが出ません。彼らが地域おこし協力隊として活動できる費用がまったくないんです。私はこれで地域おこしができるって考えている田辺市に疑問を持ってしまいます。

このように、予算の運用、地域おこし協力隊として活動できる費用がなかったことにも言及されています。

以上が、記事から部分引用した事例の概要です。筆者(私)の部分的な引用になっているので、詳細はこちらの実際の記事をお読みください↓。

2、この事例に対するコメント

この記事に対しては、100件を超えるコメントが寄せられました。

賛否両論のコメントがあります。ここから、部分的に引用していきます。なお、【 】で囲まれた見出しは、筆者(私)が書いたもので、実際のコメントについているものではありません。

【行政が協力隊の邪魔をすることもある】

今日に始まったことではありません。昔から「田辺市役所は若い移住者に冷たい」と言われてきました。本宮や熊野川には若い移住者が増えていたのですが、行政が活動を邪魔(制約)することが多く、みんな帰ってしまっています。
新宮市地域おこし協力隊は1年未満で都会に帰ってしまいました。それを見た行政は「最近の若者は覚悟や根性がない」と批判していたそうです。
本宮町大津荷の「ジビエ本宮」だってそうです。たくさんの若者を受け入れて、作業員としてこき使って使い捨てです。研修員5名全員が帰ってしまっていますよね。地域と行政が潰したといわれています。
http://www.michi-oto.com/hito/tezuka/
個々の地域人はみんな親切ですが、「組織」になってしまうととたんに人の目を気にしだします。くれぐれも潰されないようにしてください。

これは、行政が悪い!潰されるな!というコメントですね。

一方で、隊員が悪い!一方的じゃないか?とするコメントもあります。

【都合のいいところだけ書いているのでは?】

あなたの活動は素晴らしいと思いました。
余った野菜を廃棄せざるを得ない地方の現状を
打開する取り組みをどんどん具体化して。
けれど敢えて書きますと、
行政からの文書の一部のみを載せていて、
あなたから出した文書や、
回答文書の文中に出てくる引用されている文書
が掲載されていないため、
この内容では行政の本当に言いたかったことは
私達には分かりません。
あなたに都合のいいところだけ抜き出しているようにも見えます。
これでは読み手は何も判断できません。
(判断しているリプがたくさんあるけど、なぜ判断できるのか謎。
ただ「ギョウセイヒハン」したいだけでは?)
私も田舎住まいなので、あなたのような方が活躍してくれる
ことは素晴らしいと本当に思いますが・・・
あなたのこの文章からは、活動がうまくいかなかった原因は、もっと色々あったのでは?と思えてしまうんです。
批判の仕方というのも難しいものです。

「地域おこし協力隊の担当課長」の方もコメントしています。

【制度自体が不完全では?】

某地域おこし協力隊受け入れ自治体で、担当課長をしています。
当役場では、前者の「3年後の自立中心」で、自由な活動で「何でも有り」で行っています。
それが本来の趣旨であり、個性を活かせると考えているのでありますが、実際には、あなたのような考え方隊員よりも、行政のスキームに依存する割合が多いと感じています。
結果的に、三年後の自立に自信を無くし、この地を去る隊員もいます。
私の考察としては、地域おこし協力隊制度自体が、曖昧さがあり、制度としては完成しているようでも、「目的」、「到達点」と言った部分で、不完全な制度ではないかと感じています。
言い換えると、受入自治体と地域おこし協力隊員のそれぞれの目的が「総論で合致していて、各論や方法論で微妙にズレている場合」でもマッチングしてしまうところにあるのではないかと感じています。
制度上の限度額400万円を予算計上出来ない自治体は、地域おこし協力隊員を募集してはいけませんね。

ミスマッチングや予算計上に問題がある、という指摘です。

「地域おこし協力隊のサポート」をしている方もコメントしています。

【制度の再構築が必要】

地域おこし協力隊の活動をサポートさせていただいている者です。この制度を活用して地域にとって本当の意味で地域おこしになっている面、残念ながらそうなっていない面があることは否めません。その要因は、協力隊を求める行政側に明確なミッションがない場合もあること、協力隊員に地域が求めるスキルが不足すること、などと考えています。それでも3分の1の方が定住されていると伺うと、良い制度だなあ、とも思います。あなたが協力隊を辞められたことは、あなたにとっては正解だったと思いますが、行政側の当事者がこうした発信に対して正面から反論出来ないことを思うと、実名で一方的に発信されることで、この記事を読まれるあなたの大好きな田辺市の方々はどう感じられるのでしょう。制度の再構築が必要な時期に来ているのは感じます。隊員側に起因することで苦悩する地域も多々あることも、事実です。双方にとって、真の地域おこしに繋がる制度になっていくことを願うばかりです。

また、このように痛烈に記事自体を批判する方もいました。

【都合の良い事実だけを抜き書きしていないか?】

熊野野菜セレクトボックス、スープ等の活動を嬉しく拝見していただけに残念だ。
あなたに都合の良い事実 だけ を抜き書きしていないか?
ブログの文章は一見、
○自分は正しい、地域おこしをやっている
○行政は腰が重く非協力的、田舎は閉鎖的で非協力的
と強く印象付けようとしているように読める。
だが、そもそも転載されている行政文書だけでは事実関係は確認できない。(記載するなら、全てのやり取りがないと何も判断できない。)ブログの文章は、あなたの都合の良いように何とでも書ける。
繰り返し「田辺市は良いところ、みなさん良い人」「知ってもらうことが大事」と取って付けたように書いているが、説得力がない。
>この「熊野野菜セレクトボックス」は、四村活性化委員会か>ら朝市で残りがちな野菜を買って私がボックスに詰めて発送>する流れにしました。私だけが儲かるのではなく、野菜を販>売するルートをこうやって作っておけば、今後、委員会にも>メリットになるからです
ここが分からなかった。ルートを作るのであれば、なぜ最初から委員会の取組として行わなかったのか。個人でルートを作ったとして、それが委員会として「どのような」メリットになるのか。繰り返しあなたが書いている「ビジネスとしての視点」で見れば、それこそ矛盾していないか。まさか、繰り返し「ビジネス」と書いているあなたが、「単に宣伝になりますから」なんて言いませんよね?
また、この直後に掲載されている「公文書」とやらからは「地域おこし活動ではない」との内容を読み取ることが出来ない。
>四村川活性化委員会には、ほぼ使われていない加工所があり>ました。惣菜許可も取られており、ここでお惣菜などを作っ>て販売することが可能です。これを活用しよう!ここには、真>空パックの機械もあり、十分な設備になります。
この書き方では、惣菜許可は委員会が取っているように読める。そして、webを拝見する限り、スープはあなた個人の名義で販売している?
違ったらすまないが、一般論として、四村川活性化委員会として許可を取った加工所を使って、あなた個人の名義でスープを販売するのは大丈夫なのか?
また、スープの販売を禁止しろと言われたとしてあなたが掲載している「公文書」から、その旨を読み取れない。これは単に、「滅菌加工について」のみの質疑回答では?
地域おこし協力隊制度としての問題は、確かにある。受け入れ側のビジョンが明確でないと、この制度は活きない。
だからといって、ブログやITに疎い(であろう)地元の人々が、おそらくまったく反論出来ない場所に、実名を晒したうえで叩いて良いのか。
一見正しそうな主義主張に包んで、ご自分には問題がないかのような顔で、地元の人々を叩いている様子に違和感を持った。
あなたがやっていること自体は素晴らしいと素直に思っていただけに、残念でならない。

かと思えば、行政の限界を指摘し、行政に邪魔をされたという捉え方自体を変えた方が良い、というコメントもあります。

【早期卒業して自立したと捉えるべき】

本文を読んだ感想として、結論から申し上げると、非常に素晴らしい活動をされていると心から共感します。
リスクやリソースの管理を行いながら、計画を具現化する力をお持ちなので、是非、法人化して新たな地域興しのケースを打ち立てていただければと賞賛します。
ただ一方で、行政側の対応も理不尽ではあるものの、理解できます。何故なら地域おこし協力隊員は、中央省庁が打ち立てた政策に基づいて、その理念に賛同した地域の公官庁が地域おこしのために人材を受け入れる制度であるからです。
大雑把に言えば、以下のような内容ですが、各組織群の使命が異なります。以下の構図から上記の出来事を照らし合わせると、行政官の一員として配属された人材の業務に対して、行政の採った行動は間違っていないと言えます。
〇 行政組織などが 税金を活用して、公共財の再配分を行い、リスク管理をサポートする市町村や都道府県の官庁組織
〇 自治組織などが 地域の幸福を求めながら、自立運営のために利潤も求める市民社会組織
〇 民間組織で利潤の追求を主軸に地域に貢献する私企業のすべき役割
(注) 全てが明確に区別されている訳ではなく、各境界線を跨いで、双方を手掛ける組織も有りますし、時代に応じて大きい政府と小さい政府を求める時勢から、各組織は立場を変えることさえあります。
制度には限界がありますし、配属された個人の採る立場も十人十色です。筆者の方は、社会貢献型企業の思考をお持ちであるようなので、地域おこし協力隊から離別するのではなく、その出会いを通じて早期卒業して自立したと捉えられた方が得であるように思いました。
長文乱筆を容赦下さい┏○ペコッ

コメント欄の最後のあたりには、このようなコメントもありました。田舎に移住して10年になる方です。

【役場の性質を理解してから協力隊になれ】

田舎に移住して10年になる者です。
私自身は地域おこしになるような地域を巻き込んだビジネスを展開しているわけではなく、自給自足のベース作りと自分で完全にコントロールできるレベルの小規模な商売をしています。
私の印象としては、すべてを決めつけるわけではありませんが役場など公務員として働いている方々の志望動機といえば「安定を求めて」の一言に尽きると思います。
そういった志向の方々ばかりの組織が、今までと違う思い切った行動など自発的にされることは望むだけ無駄だと思っているので、最初から役場の動きなどには注目していませんでした。だからといって軽蔑しているわけではなく、日々地域のための業務をこなされていることはリスペクトしています。
もちろん役場職員の中には地域活性化についてやる気も行動力もあり実績を残されている方もおられますが、残念ながら極々一部です。
なので地域おこしに壁は多いと思いますが、地域おこし協力隊は立場上、地元の方々とのつながりを作るにはたいへん有用な制度だと思っています。なんの後ろ盾も知り合いもなく移住してきた人と比べれば、その地に根付いて事業を起こしたり、人々に影響を与えるのにとても有利な立場でいられると思います。
なのでこれから地域おこし協力隊になりたい方は、役場とは往々にしてそういう性質であるということを理解した上で、3年間は地域とのつながりを作ることを重点的に意識されると良いかと思います。3年間の任期中にどれだけ地域おこしに貢献できるか?と急ぐ必要はないし、地域によって違いはもちろんありますが田舎では急がないほうが良い場合もあるように思います。
任期が終わった後でも、地元の方々とのつながりができていて元地域おこし協力隊の肩書きがあれば話に耳を傾けてくれる方々も多いと思いますし、今時はどんな田舎でも面白いことをやっている人や意識の高い人は意外といるという印象ですので、そういった方々の協力を得て物事を進めていくと良いかと思います。

引用はここまでにします。

繰り返しになりますが、コメント欄には100件以上のコメントが書かれています。賛否両論あります。そのうち、筆者(私)がチョイスした7つだけを、引用しました。管理者さんに共感するコメント、管理者さんを批判するコメント、それぞれたくさんありました。興味のある方は、すべてのコメントに目を通してみると良いかと思います↓。

3、矛盾と疑問と行動と

いかがでしたでしょうか。

今回の記事は、あえて引用ばかりしてみました。

熊野野菜の管理者さんが投稿した記事から、さまざまなコメントが生まれました。地域おこし協力隊自体、未完成で不完全な制度であるというコメントもあります。この引用ばかりのnote記事が、矛盾と疑問を持ちつつ、行動している隊員の皆様と、行政担当者の方、地域住民の方、それぞれの思考材料になればと思います。また、その観点から言えば、賛否両論それぞれのコメントをここまで引き出した管理者さんの記事は、地域おこし協力隊を考える上で意義のある記事ではないかと、私は思いました。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

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