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ペットロス、小さな命の前に自分のエゴを思い知らされた話

日課になっている近所の川べりまでのお散歩。
この夏を過ぎた頃から、わたしと愛犬の歩く速さは日に日に遅くなってきました。

15年前、小学生だった子どもたちにせがまれて、メスのチワワを飼うことになりました。
その時に、ペットショップの女性に言われた言葉はしっかり覚えています。
「最後までしっかり面倒を見てあげてくださいね」

そうだよね、寿命から考えてもいつかは看取る命なんだな、と頭の中では理解していました。

あれから15年半たち、いよいよ愛犬の「老い」を切実に感じるようになりました。

1年前、都内の蒸し暑さがかなり苦手な愛犬のためにも、私は信州に移住しました。
信州は空気もおいしく小川を流れる水もきれいです。
川べりを一緒に散歩する時間は、とても贅沢なひとときに感じました。


秋になり、信州の紅葉が見頃になった頃。
信州に引っ越してからお世話になり始めた動物病院の先生から、愛犬の腎臓の様子が良くないと告げられました。

いままでも肝臓が良くないからと、2年間ほど薬を飲ませていましたので、腎臓の具合が良くないと聞いても、なにかしら治療の手立てがあるものと思っていました。

「腎臓は一度悪くなると、元には戻りません。
人間なら透析治療がありますが、犬にはそれはありません。」

これまでは、体の具合の悪くなったところは手術やお薬で治療するという「治す」方向の話しかでなかったのに、今回は先生は何も提案してくれませんでした。

先生が無言になってしばらくしてから、やっと気づきました。

「お別れが近いのか・・」


病院から帰ってきても、血液検査の結果などわからない愛犬はいつもの通りの様子。
散歩も好きだし、おやつも欲しがる。

いつもと変わらない愛犬を見ながら、わたしの頭の中ではいろんなことがグルグル回っていました。

「他の動物病院で診てもらったら、もっと前向きな治療などを提案してくれるんではないだろうか・・」

「以前、都内で通っていた動物病院の先生は『神の手』で難しい手術も成功させてくれたので、相談したら何とかしてくれるんじゃないか・・」


お別れが近いかもと考え始めると、悲しいのを通り越して苦しい。
ほんとうに苦しいとしか表現できない。


苦しさに耐えきれなくなった時に、ふと
「なんでこんなに苦しいんだろう?」
と立ち止まって考えてみました。

心から湧いた答えは、
「愛犬とのお別れを受け入れたくないから」
でした。

今までわたしは、まあまあ思い通りに生きてきて、願望も実現することができて、望めば思い通りになることが多いと無意識で思っていたのかもしれません。

ピンチの時も、なんとかリカバリーして順調に戻すことができた体験が、この状況もなんとかできるのではと考え、そう考えれば考えるほど苦しみが大きくなってしまったようでした。

わたしは、やっと苦しさの原因がわかった気がしました。
「まだまだ愛犬に生きていてほしい」
命へのエゴが苦しさの原因ではないかと気づきました。

「受け入れよう。何とかしたいと考えるのをやめて、この状況を受け入れよう。」

受け入れようと決めると、苦しいという気持ちが少しづつ薄らいでいくのがわかりました。

残り時間を大切に過ごすためにやることを考え始めました。


東京都内にいる子どもたちに状況を連絡して、まだ愛犬と一緒に散歩ができるあいだに、信州まで遊びに来てもらいました。

子どもたちは、お別れまでの過ごし方や看取りやペット葬儀について、自分たちで調べたことを教えてくれました。

自分では悲しすぎてこのようなことを調べたりできなかったので、この気遣いはあとあと助かりました。


2022年11月8日。
澄んだ夜空に皆既月食が見られた夜に、愛犬は亡くなりました。

わたしの望みは「命が途絶えるときに苦しむことがありませんように」だけでした。

最期も、いつもの通り声をかけてあげて寂しくないように見送りました。


今はお別れから1か月も経たないので、悲しみは深いままですが、できることはやってあげられたかなと思うようにしています。

そして、自分が与えたもの以上に、教えてもらえたことがたくさんあることにも気づきました。

人を裁かない無償の愛です。

わたしや家族の歩んできた人生には、それぞれ楽しい時も辛い時もありましたが、寄り添って癒してもらえていたのだな~としみじみ思いだします。
(*´ω`*)


「ペットロス」という言葉はもちろん知っていて、わたしは今その真っ只中にいるのも自覚しています。(笑)

そんなペットロスの思いを誰かと共有できたらと考えていると、書店で養老孟司さんの一冊の本を見つけました。

辛いんだけど読んでいると、思いを共有できた気がして気持ちが和らぎました。


そして、15年も長生きしてくれてありがとうね。
安らかに眠ってね。
愛犬「ココア」。

初夏、信州諏訪大社近くの川べりにて


追伸:
わたしのnoteのアイコンは愛犬ココアの写真です。
これはこのままにしておこうと思っています。
(*´ω`*)


皆さんに支えられて、noteを継続することができています (^-^) これからも皆さんの応援ができたり、ほっこりしていただける発信をしていきたいと思っています。