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鏡のなかの言葉(定期購読)

映画監督松井久子が編集長となり、生き方、暮し、アート、映画、表現等について4人のプロが書くコラムと、映画づくり、ライティング、YOGA等のワークショップ、そして編集長がお勧めする… もっと読む
1.映画監督松井久子と読者との双方向コミュニティに参加できる。2.ワークショップ(書くこと、映画を… もっと詳しく
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2020年7月の記事一覧

映画をつくる 14  撮影の日々③

noteでマガジンをつくることになって、それを定期購読版にした理由は今日これから書くことに深く関係している。 あのバトンルージュの地で、私が体験したことはとても特殊なことで、書きようによっては誤解を招いたり、誰かを傷つける可能性もあると思うので、不特定多数の人に公開の形で読んでもらうものではないと、ずっと考えていた。 このまま自分だけの胸の内に秘めて、墓場まで持っていくこともできる。 が、どうしてかその体験については、いつか書いてみたいと思っていたのだ。 それには読む人が限

つくり手であること 04*塩の存在

2020年の梅雨は、もやは雨期と言えるほどの長雨。実母をはじめ、日本中の誠意ある農家さんたちもなかなか大変そうです。どちらかといえば能天気な我が家でさえ、ひと月に4回もコインランドリーで洗濯物を乾かすことになろうとは、なんだかちょっと、世界が尋常じゃないことになってる空気を否めずにいます。 この状況下でさらに、座ってする作業時間が多くなり(これを書いている今も椅子に座っているわけですが)わざわざ意識的に体を動かさないことには、体内にも湿気が溜まってることを実感する始末。結果

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稲木紫織のアート・コラム "Arts & Contemporary" Vol.5

世田谷美術館「作品のない展示室」展で、なぜ、普段は見られない「建築と自然とパフォーマンス」特集が見られるのか?  美術館も軒並み、展覧会が中止され、美術館自体が閉館を余儀なくされていたが、世田谷美術館の1階では7月4日から、作品を展示せずに窓を開け、砧公園内に立地する通称・世田美ならではの自然を見せる展覧会を無料で開催中。  万全の新型コロナウイルス感染症防止対策が取られた館内に入ると、「作品のない展示室」と題された緑豊かなメインルーム奥のギャラリーに、「建築と自然とパフォ

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自分史という視点の楽しみ方04

今年は本当に梅雨が長いですね。 もはや「梅雨」というよりも「雨季」というほうがピッタリ。 私が子どもの頃、日本は「温帯気候」と習った記憶がありますが、もはやここ近年では「亜熱帯気候」の国になってしまった感があります。 これからどうなってしまうんでしょうか。 さて、自分史という視点の楽しみ方も4回目となりました。 みなさん、日々の生活を「自分史視点」を意識して生活されていますか? 少しずつでも構いませんので、自分というひとりの人間が生きるドラマを、客観視し、冷静に見る視線をも

MomokaのYoga Lesson-4

今年はなかなか梅雨が明けない上に、感染者の数も増え続ける日々ですが 皆さんお変わりないですか?。 Momokaのレッスン、4回目のテーマは、「脚の強化」です。序盤で全身をあたためた後は、立位のポーズに移り、片足ずつ脚力を高める動きを展開していきます。 後半にはバランスポーズが出てきますので、是非みなさん一緒に挑戦してみましょう!

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映画をつくる13  撮影の日々②

撮影隊の朝は早い起床時間は毎朝5時半、7時から夕方の7時までその日予定された撮影スケジュールをこなすには昼休み以外、1分1秒もおろそかにはできなかった。 午前中の撮影を終えてクルーたちの何よりの楽しみがランチタイムだ。 当時の日本では冷たいロケ弁が当たり前だったが、アメリカの現場にはケータリング・トラックが来てくれて、コックがその場で調理してくれた料理を食べることができる。木陰に折りたたみ式のテーブルと人数分の椅子を並べ、清潔なテーブルクロスを敷いて食事をとる時間は、さながら

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映画をつくる 12  撮影の日々 ①

いくつもの幸運な出会いによって製作資金ができたものの、全編アメリカを舞台に しかも今のデジタル収録と違うフィルム撮影の時代に一本の映画の完成まで2億円の予算は、けっして余裕のあるものではなかった。 そのようなローバ・ジェット(低予算)の作品は撮影日数を十分にとることはできず、9月25日のクランクインから11月14日のクランクアップまで、41日間ですべての撮影を終わらせなくてはならない、タイトなスケジュールだった。 日本の低予算映画なら41日は恵まれた日数と思われるかもしれない

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映画をつくる 11  プリ・プロダクション④ ロケーション・ハンティング

各シーンの撮影場所を決めるロケーション・ハンティング映画製作において、実際の撮影にかかる日数よりも撮影準備(プリ・プロダクション)の期間の方がはるかに長く、準備すべきことは多岐にわたって山ほどあった。 そのプリ・プロでのいちばんの花がロケーション・ハンティング。 吉目木さんの原作の舞台となったルイジアナ・州バトンルージュとその近隣の町の中の、あらかじめロケーション・マネージャーが候補に選んだスポットを、連日、早朝から日没まで精力的に見て歩く。簡単にOKをすることもあれば、もっ

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映画をつくる 10 プリ・プロダクション③ 脚本の翻訳と、スタッフ・オーディション

日本の脚本と、アメリカのシナリオの違いに戸惑う 「Hisako ここでユキエは立つの? それとも座っているの?」 「そんなこと、今からシナリオにいちいち書かなくていいの」 「ダメだよ、書かなきゃ」 「うるさい!いいのよ、書かなくて!」 マイケル・テイラーとホテルにこもって、シナリオの英語訳のバトルが続いていた。シーンごとにくる返されるそんな口論で、私ははじめて日本とアメリカのシナリオの書き方の違いを知ることになる。 双方の違いをひと言で表せば、日本の脚本は文学作品的であり、ア

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映画をつくる 09   プリ・プロダクション②     キャスティング

ユキエ役に、倍賞美津子さんが決まる93年の春に芥川賞小説『寂寥郊野』を読んでから、3年が過ぎていた。 TVドラマを作っていた頃から、キャスティングはプロデューサーの仕事のなかでも特に胸躍る作業のひとつだった。 主人公のユキエ役をどんな女優さんにお願いするかは、3年のあいだずっと考えていたことで、資金ができる前のまだ自分でシナリオを書いていた頃は、昔から好きだった二人の女優さんを頭に思い浮かべていたのだった。若尾文子さんと香川京子さん。お二人のどちらかにお願いできたら、きっとい

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映画をつくる 08 プリ・プロダクション①

新藤監督のシナリオが上がり、私が監督をすることになって、いよいよアメリカに渡って、クランクイン前の制作準備(プリプロダクション)の日々が始まった。 映画づくりにおいてプリ・プロダクションは、撮影よりはるかに膨大な日数がかかるものだが、特に現場がアメリカとなれば、しなければならないことが山ほどあった。はじめての監督業に専念するために、親しいドラマ制作会社の荒木功さんに 現場プロデューサーをお願いし、'95年5月、撮影監督の阪本さんと荒木さんと3人でニューヨークにとんだ。 エン

映画をつくる 07  「監督は自分でしなさい」

「これからは、もっと女が映画を撮らなきゃ駄目だ!」1996年4月。新藤監督が書き上げてくださったシナリオがついに届いた。 シナリオ作家協会の200字詰め原稿用紙に鉛筆で書かれた237枚。 今でも私の大切な宝物である。 繰り返しシナリオを読めば、各シーンごとに映画になったときのイメージが、頭に次々と浮かんだ。 さて、このシナリオで誰に監督をしてもらうべきか? 答えは明らかだ。過去に新藤監督の作品にはアメリカ移民のもとに嫁いだお姉さまが登場する自伝的映画『落葉樹』があった。きっ

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映画をつくる 06  新藤兼人監督にシナリオを依頼する

そのとき自民党の副総理という要職にあった故小渕恵三氏、後に内閣副官房長官になられる古川貞二郎氏、介護保険制度を設計中の厚労省の人びと、そして長寿科学振興財団の方々と、いくつもの幸運な出会いの連鎖で、映画づくりの最大の関門である資金調達の目処は立った。 次にプロデューサーの私がすることは、シナリオをどうするかだった。 もちろん半年前にシナリオハンティングの旅から戻ってすぐに書き始めたシナリオは出来上がっている。が、「映画の良し悪しはシナリオで決まる」とは誰もが言うことだ。お金が

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YUMIKOの映画玉手箱 04  映画の中の老人像・その2

前回に続いて、もう一度素敵なシニアの映画を紹介させてください。 いえ、ヘミングウェイ原作の映画「老人と海」じゃあないんです。あれもすばらしいけれど、こちらはもっと新しい、「ビル・カニンガム&ニューヨーク」(2010年)というドキュメンタリーです。 カニンガム氏(ビル)は1929年生まれ、撮影当時81歳の現役カメラマン。 それも大新聞ニューヨーク・タイムズ紙のファッション担当。 取材はすべて自転車で、ニューヨーク中を走り回ってストリート・ファッションからセレブ向けのファッション

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