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映画をつくる 14 撮影の日々③

noteでマガジンをつくることになって、それを定期購読版にした理由は今日これから書くことに深く関係している。
あのバトンルージュの地で、私が体験したことはとても特殊なことで、書きようによっては誤解を招いたり、誰かを傷つける可能性もあると思うので、不特定多数の人に公開の形で読んでもらうものではないと、ずっと考えていた。

このまま自分だけの胸の内に秘めて、墓場まで持っていくこともできる。
が、どうしてかその体験については、いつか書いてみたいと思っていたのだ。
それには読む人が限定されていたほうがいい。そして書くならできるだけ長い年月が経って、映画を観る人が影響を受けなくなってからにしたい…。
実は、2004年に二作目の『折り梅』が成功した記念に出版された本『ターニングポイント』に、『ユキエ』制作時のその体験を『産みの苦しみ』と題して、書いたことがあった。でもそのときは起きたことのありのままを書くのは躊躇われ、遠回しで婉曲な表現に留めておいたのだった。

あの日から24年が過ぎた。
※この記事は定期購読の方のみの限定公開ということで申し訳ありません。

禍福は糾える縄のごとし

いま、24年前の初めての映画監督体験を振り返ると、改めて、禍福は糾える縄の如しと思わずにいられない。
資金調達で夢のような運に恵まれた後は、まさに地獄かと思えるほど、試練の日々だった。幸福と不幸は、撚り合わせた縄のように交互にやってくる。
それが人生である。

いまそのことを書き始めようとして、まだ逡巡してしまう自分がいる。
どんなに時間が経っても、そのとき当事者だった私がどこまで客観的にまた公平な眼で書けるかはわからないからだ。
従ってここで書くことは、私の側からの主観的な思い出であるに過ぎない。
どんなに正確に書きたいと思っても、その記憶は私から見たものだというこことを、予めお断りしておきたい。
そこに「人に伝える価値」と「普遍性」があることを願って。

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