あまりにもエモすぎる推しの尊さ(と、うんこ)について

「推し」という言葉がなんとなく苦手、というかハッキリ言って嫌いである。

「推しが〜」みたいな言説を見ると、ウッとなる。なぜだろうか。

そもそも、なぜ「推し」と言うのか。その対象を隠すのか。名指しでいいんじゃないのと思う。ヴォルデモートじゃあるまいし。でもヴォルデモートを「例のあの人」と呼ぶのには違和感がない。

「推し」と「例のあの人」との違いは、その代名詞が指すものが明確に認知されているかどうか、ということだろう。「例のあの人」というとき、それはほぼ間違いなくヴォルデモートを指す。一方「推し」は、その発話者が推しているのが誰なのか、そのテクストからは分からない。推している主体を知ることでしか、推しを知ることができない。その自己顕示的な側面が嫌いなのかもしれない。

推しを巡る言説には、「推しがいることで日々に彩りが生まれる」という類のものがある。まあ、それはそれでいいことなのかも知らんけども、なんだろう、それすら嫌な感じが俺はする。どうしても「推しを推す私(この場合、「わたし」ではなく「わたす」と呼んでいただきたい)」の顕示欲を感じてしまう。一見すると「私」が主体でないように見えて結局「私」に収束するのがどうも気持ち悪い感じがする。ま、「感じがする」というばかりでは、「あなたの感想ですよね?」と言われておしまいだが。

「エモい」という言葉も嫌いである。何を指してるのかよく分からん。汎用性が高いのはいいかもしれないが、俺は気に入らない。これも発話者の意思を過分に含んでいるという意味で、メタ要素が嫌いなのかもしれない。

この記事のタイトルだって、「なんのこっちゃ」である。あなたは何を期待してこの記事を開いたのか。そんなこといったら「限りなく透明に近いブルー」だってなんのこっちゃである。そうでもないか。限り透明に近いブルーということなのだから。「なんとなく、クリスタル」よりは分かる。でも「限りなく透明に近い青」じゃダメだったんだろうか。夜明けの空のことらしいけども。

嫌いな言葉ばっかりあげつらってたらクサクサしちゃうよね。俺の好きな言葉ってなんなんだろう。「うんこ」は間違いなく好きだ。365日、口に出さない日はないだろう。

でもうんこそのものは臭いから困る。嫌いではない。道端に落ちてるうんこを見て、「嫌いだなあ」とは思わない。「困るなあ」とは思う。いや、思わないか。なんか最近道端で犬の糞を見ないような気がする。というかなんで犬の「フン」なのか。犬の「うんこ」とはあまり言わない。人の「フン」なんか絶対言わないだろう。小学校でうんこばっかしてるやつをいじめるとして、「うんこマン」は言いそうだけど「フンマン」は想像つかない。「うんちマン」も微妙だ。「うんちマン」はなんとなく人気が出そうだ。ヒーロー感がある。

鳥も「フン」だし猫も「フン」な気がする。牛も「フン」だろう。「うんこ」より「フン」の方が下なのか。いや、その逆もあり得る。と思ったがそうでもない。なぜなら犬のことをめちゃくちゃ好きな人なら「フン」ではなく「うんち」と言いそうだ。つまり「フン」より「うんち」の方が丁寧ということになる。

だいたい「うんこ」「うんち」ってなんなのか。大便はまだ分かる、と思ったがこれも意味不明だろう。小便があるから大便があるのであって、大便という言葉だけ切り出しても全く意味がわからない。これ、どっちが先だったんだろう。なんで「便」が排泄物を表すのか。

気になって調べると、辞書やら教科書を出版している大修館書店の「漢字文化資料館」というページに当たった。このページによると、「便」の基本となる意味を「支障がなくて都合がいい」とされる説を引きながら、「さて、問題はこの『便』がどうして排泄物の意味になるのか、ということですが、例によって残念ながら詳しいことはわかりません。」という。

アホか。くだらないまとめサイトじゃあるまいし。「例によって」ってなんだよ。なんの例があったんだ。当たり前みたいに言うな。

一応その後に言い訳のように、前述した基本語義を基に「するりと出る」「支障なく出る」ことから、排泄物を示すのではないか、と言う見解を示している。加えて、「常に『するりと出る』わけでもない私としては、全面的に賛成とはまいりません」と、このページの編集者の便通事情が赤裸々に明かされている。「まいりません」が何か気持ち悪い。

話を戻すと、俺は言葉とその対象が同定されたものが好きということなんだろうか。それもそれで不毛だろう。便利さと豊かさというのは完全に一致するものではないし。結局「あなたの感想ですよね」と言われたら、元も子もない話だ。好きだの嫌いだのに理由をつけてたら、キリがない。好きなもんは好きだし、嫌いなもんは嫌いでいい。

(文責:ぺてん師)


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