誰のための教育?
「ブルックリンの中学校は良くないから、また引っ越さないと。」先日、5歳児の息子の為、マンハッタンからブルックリンに引っ越してきた親御さんがそう言った。私たちの住むブルックリンの15地区は評判の良い小学校がいくつもあり、何校か成績優秀な中学校があった筈だ。それがコロナ禍の2020年以降変わって来ているらしい。
2020年まで公立中学校は、小学校4年生の時の統一テストのスコア、成績、出席日数を基に生徒を選抜していた。よってこの地区では評判のいい3校くらいに志願者が殺到し、優秀な子供たちがこぞって入学した。結果生徒の大多数が白人だった。
このような人種の大幅な偏りを是正するために、2020年に導入された抽選システム。成績や出席日数に関係なく、抽選で生徒を選抜する。しかも、英語を母国語としない子どもや貧困層の子どもは優先されるのだ。結果、この年を境に、白人が大多数だった地元の人気校は一気にマイノリティが大多数の学校へと変貌した。子ども二人をこの中学に通せている親(白人)に聞くと、白人は各クラス数名ほどしかいないらしい。生徒の大多数がブルックリンの南部から通う南米系やアジア人だそうだ。
それが不満な親たちはどこに行くのか?白人が大多数のニューヨーク郊外に移るか、子供を私立学校に入れることになる。授業料年間6、7万ドル(今のレートで850万から1000万円)もする私立に子供を入れられる親がどれだけいるというのか?
人種の偏りといえば、ニューヨークの公立エリート高校はアジア人だらけだ。選抜テストで点数が高い順に生徒が入っていくのだが、結果9校ある市のエリート校はアジア人が大多数となってしまった。この偏りも疑問視されており、入学試験やエリート校の廃止が市で検討されている。
行く着く先は、小学校から大学まで全部抽選で進む緩い公立教育制度か。どの人種も皆、最低限の基礎教育を受けて、形だけでも学位を取得する。その一方お金を出せる家の子供は私立のエリートコースを進むのだろう。ますます高所得者層と中級階級以下の層の格差が広がりそうだ。
アメリカ、ニューヨークは今後どこに向かっていくのだろう。長女が中学に進学するまであと4年。恐ろしいが、目をしっかり開いて見ていく必要がありそうだ。