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顧客理解と自社理解がなければ、現代のブランディングは不可能だ

成熟した消費者に支持され続けるためには、自らのブランド価値を掘り下げていくことが本質だ。

消費者の購買行動は「守り」から「攻め」へ “参照点”に着目せよ

良いものを作ればいい時代はとうの昔に終わりを告げた

大量生産大量消費の時代は、戦後の焼け野原でモノがないところから始まった。みんなはモノがある生活に憧れた。だから、共同幻想として1つのライフスタイルをみんなが羨望し、みんながそこを目指して努力した。テレビCMで右向け右とすれば、みんなが右を向いた時代だ。

今はモノが溢れている。生活に必要な最低限のものは最小限の価格で売られていて、揃えるのは容易だ。可処分時間や可処分所得は、より自分らしいものに使われる。だから現代は、体験的価値情緒的価値が重要なのだ。

そしてそれは人によって異なる。さらに細かく分ければ分人によって異なる。大量生産大量消費の時代のように、みんなが目指す1つの共同幻想は成立しない時代なのだ。

令和は、「誰か」に向き合い、その「誰か」にとって良いものをしっかり作り、その「誰か」にしっかり伝えなければ、どんなに良いものを作っても届かない時代になった。

また同時に自らの提供価値もそれに合わせて解釈し直さなければならない。自分達だけが独善的に考えている提供価値が、顧客に刺さるとは限らない。いや、刺さらない。大企業や成熟企業のマーケティング部隊はいまだに大量生産大量消費の古き良き時代を引き摺っている。そこでは日夜誰にも刺さらない共同幻想が掲げられている。

まず顧客のことを理解する。顧客のことをしっかり理解するために社会トレンドを理解し、顧客の行動を理解することが重要だ。

「何の代替の行動なのか」という参照点によって顧客の行動が変わるのも、理解すべき顧客行動のトレンドである。

その意味で着目したいのが「参照点」だ。例えば、本特集で価格が上がっても売れ行きが好調な商品を調べたところ、スターバックスコーヒーのレギュラーコーヒーや吉野家の冷凍牛丼の具が挙がってきた。コロナ禍でなかなか外食に行けない状況の中で、外食するよりは手ごろという意識が働いていると思われる(特集第5回で紹介予定)。つまり、参照する対象が値上げ前の価格ではなく、外食の価格になっているのだ。

社会のトレンドは、顧客の行動が一番早く変化する。それが社会全体の変化の予兆ともいえる。その予兆をとらまえて、社会がどう変化する可能性があるかを予測し、そこに対して自らの提供価値の本質を当てはめると何ができるか。

ただ作って売ればいい時代は終わった。作って売れば顧客が熱狂してくれる時代も終わった。

顧客の熱狂を作り出すために、顧客を理解し、顧客のトレンドを把握し、顧客の未来を予測し、そこに対して自社の提供価値をしっかり掘り下げて、何ができるかを考える。それこそがマーケティングそのものであり、ブランディングそのものだ。

ブランディングが消費者の認知獲得やイメージ醸成から、自らの軸を掘り下げるという本質的な方向にシフトしているのだ。
自らの価値を徹底的に掘り下げ、社内外の関係者に丁寧に伝えて共感の輪を広げていけば、おのずと消費者に伝わっていく――。それが、消費者が成熟した時代のマーケティングの要諦になっていくのではないだろうか。

相手に合わせる「対応」から、自らを深めていく「内省」へ。その気付きこそが、マーケティングの“新しい景色”を見るためには必要だ。



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