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アガサ・クリスティー『ハロウィーン・パーティ』を読了後、ハロウィーン当日を迎えた人の感想
僕はクリスティ同好会というサークルに入っている。メンバーは実質2人だけの小規模なサークルだ。以前は4人いた。ZOOMで読んだ本の感想を言い合っていた。
だけど、事情があって2人抜けたのである。それで今はたった2人。もう少し人数が増えたら、またビデオ通話でいろいろ話し合いたい。今はしょうがない。課題図書として提示されたものを読んで、感想を伝えることになっている。せっかくだから、noteでも書き残しておきたいと思う。
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読んだのは、アガサ・クリスティーの『ハロウィーン・パーティ』だ。巻末にある解説によると、ポアロものでは最終作から数えて3番目の作品らしい。クリスティーにとって後期の作品になる。僕はポアロものはいくつか読んでいる。何冊読んだかは忘れた。覚えているのは『ABC殺人事件』、『オリエント急行殺人事件』、『雲をつかむ死』、『メソポタミアの殺人』などなど…。有名どころを読んでいるんじゃないかと思う。
ちなみに『そして誰もいなくなった』も読んだ。あれはいま読むと「ああなるほどね」と知っているネタを解説された感じだけど、世界初のトリックだと思ったら、衝撃だろう。タイトルも秀逸。いまでもオマージュやパロディがいたるところで散見している。
いずれにしても、初めてのクリスティ作品ってわけじゃない。そこだけは理解しておいてもらいたいと思う。
一応、あらすじを以下に載せておく。
推理作家のオリヴァ夫人を迎えたハロウィーン・パーティで、少女が突然、殺人の現場を目撃したことがあると言いだした。パーティの後、その少女はリンゴ食い競争用のバケツに首を突っこんで死んでいるのが発見された!
童話的な世界で起こったおぞましい殺人の謎を追い、現実から過去へと遡るポアロの推理とは。
実は僕は、ヘイスティングス大尉とポアロとのコンビが好きだ。だからどうしても、ポアロだけの活躍の作品になると、ひと味落ちると思ってしまう。その点では、今作はすでにヘイスティングス大尉が登場しなくなっている後期作品だから、残念ではあった。
一応、代わりといってはなんだが、推理作家のアリアドニ・オリヴァがその代わりを務めているんだろう。後期ポアロ作品では、このようにゲストバディみたいな人がたびたび登場するらしい。そこまで詳しくないから、解説を読んで「なるほど」とうなずいてしまった。
とはいえ、やっぱりヘイスティングスロスである。ああ、ヘイスティングス。彼はいずこへ…。
内容としては、それほど捻りが多い作品ではなかった。シンプルな構図になっていると思う。実際、読みながら推理していくと、何となく「ああ、犯人はこの人かな」と予想できると思う。
もちろん、意外な事実も発覚する。
でもそれは、ちょっと不意打ちというか、予想のしようがないものだ。わからなくてもしょうがない。わかったとしても、推理にはそれほど影響はないし、物語の味を整えるようなものだろう。
個人的には、クリスティの持ち味はそこにあると思っている。単なる推理小説ではなく、ちゃんと「物語」の醍醐味を知っている。
さらにいえば、今作では描写の妙も味わえる。初期クリスティ作品ではあまり見られなかった、濃密な描写。特に途中で出てくる庭園の描写は、幻想的な文章とあいまって、物語の中にどっぷり浸れる。小説を書き続けてきたからこその、自然と培われた文章能力が、いかんなく発揮されていると思う。
キャラクターとしてオリヴァはさほど活躍しなかった。
だけど、リンゴが大好きなベストセラー推理作家の女性、というのはキャラ立ちする設定だと思う。
実際、彼女のイメージはぱっと浮かんだ。今ならこっちを主役に推理小説を書く人も多いんだろうな。凜とした、格好良い、でもたまにドジをする愛すべき女性のイメージ。もっと活躍の場が増えるとよかったのにな、と残念でならない。
トリックの部分がもう少し驚きがあるとよかったけど、これはこれで、落ちついて読める、物語として読む小説では、秀逸な作品だと思う。せっかくのハロウィーンなのだ。ぜひ興味のある方は読まれてみてはいかがだろうか。
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