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ノンケになった親友とゲイのまま生きていく僕 #12

大学2年生の春、SNSで一つ年上の人と出会いました。

彼は県外に住んでいました。

高速バスで片道5時間ほどの距離でした


彼もゲイデビューしたばかりで友人が少なく
年齢も近く、同じ境遇であったこともありすぐに仲良くなりました。

当時は、LINE通話のような便利な通話アプリがなかったため

よくスカイプを使い、通話をしていました。


バイトの話や、片思いの相手の話。他愛のない話をたくさんしました。

お互いに大学生で、時間だけはありましたがお金はなく、気軽に県外にいる友人に会いくことはできませんでした。

実際に会えなくても、オンライン上で親しくなんでも話せる彼の存在が、当時の自分にとっての心の拠り所でもありました。


そして数ヶ月やりとりをした後、大学の夏休みに彼と会う約束をしました。緊張もありましたが、ずっと会いたかった友人に会える喜びの方が強かったです。

そして、夜行バスに乗り彼は僕に会いに来てくれました。

バスから降りてきた彼をみた瞬間、本当にこの人は現実世界に実現したんだと安堵しました。


イメージ通りの笑顔があざとくかわいい、八重歯で童顔の男子でした。


会って間もなくは、お互いになんとなく照れがあって

ずっとニヤニヤがとまらなかったです。


2泊3日。


地元の観光地を一通り案内して、あとは家でゲームをしたり、借りてきたDVDをみたりと一瞬で時間が溶けていきました。

彼と一緒にいる3日間は本当にたのしくて、初めて会ったのに昔から知っていたかのようなそんな居心地のよさでした。


たのしい時間はあっという間で、すぐに別れの時間が来ました。


名残惜しさはありましたが、それよりも充実感や満足感があったと思います。

そして、また冬休みに会うことを約束し彼を見送りました。



それからも、彼とは頻繁に連絡を取り合っていました。

連絡の頻度だけで言うと、恋人と連絡を取り合う頻度に近いくらいには連絡を取り合っていたと思います。


そんなに連絡を取り合うのに、お互いに恋愛感情はなかったのか。

全くないわけではなかったと思います。


でも、実際の距離や会える頻度。

恋愛を考えるには現実的ではなかったです。

そして、出会った当時はお互いに片思いの相手がいて、恋愛を応援し合うような関係がお互いにとって心地よかったのだと思います。

そんな彼とは、それから5〜6年ほど交流がありました。

お互いの彼氏や友達を紹介し合ったりもしました。

彼のおかげで広がった交友関係もありました。

学生の間は年に2回。社会人になってからも年に2回はどちらかが会いにいくような関係でした。


彼と最後に会ってからもう8年が経ちます。

彼との交流がなくなったのは、彼に女性の恋人ができてからです。


彼が、彼自身のセクシャリティに悩んでいたり
ゲイの友人関係や恋愛にも悩んでいた時期に
職場の女性から告白をされて、思い切って付き合うことにしたそうです。

そしてお付き合いをはじめて一年で結婚。


子宝にも恵まれて、今は3人の子どものパパになっています。



「彼と交流がなくなった」と記載しましたが

正確にいうと会うことがなくなっただけで連絡は細々と取り合っています。

毎年、1月1日に彼から年始の挨拶のLINEと子どもたちの写真が送られてきます。

そして僕は、恋人がいるときは恋人との写真を送り
恋人がいないときは友達との旅行の写真を送ったりしています。


決まって彼は

「ひろトは変わらなくて安心する」

と言ってくれます。



僕は、変わってないのかな。



父親として、ライフステージをすすめていく彼と何も変わることのできない自分。

あまりにも違いすぎて彼のことを漠然と羨ましく感じる瞬間もあります。

彼は彼が選んだ人生でちゃんと幸せになっているし、これからもその幸せが続いていくことが容易に想像できます。


本当に素敵なことだと思います。


そして彼との年に一回のやりとりが、自分を奮い立たせてくれます。


「僕だってちゃんと幸せになれる」


なんとなく、そんな気持ちになります。


彼とは、ほんの数通の簡単なやりとりで近況報告を終え

そこから一年後にまた連絡を取り合います。



会えなくてもこうやって、僕のことを気にしてくれて境遇が変わっても友達として認めてくれていることがとても嬉しいですし、とても感謝しています。


もしかしたら、いつかこの連絡も途絶えてしまうかもしれない。

もしかしたら、もう会うこともないのかもしれない。



そんな、彼と僕ですが


彼の存在抜きでは、僕の20代前半の人生は語れません。

それくらい彼の存在は当時、とても大きかったしたくさん思い出もあります。

色んな話をしました。一緒に悩んで、一緒に泣いて、一緒に笑って。

そんな時間が、素敵な時間がたくさんありました。


彼と僕は確実に違う道を進んでいっています。

もし彼にとって、僕が遠い過去の人になったとしても


僕は大事の友人として、彼のことを忘れることはないだろうし

彼の幸せを心から応援し続けたいと思います。


そして、僕自身も僕の選んだ人生で幸せになる。

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