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【書評?】BUTTER

BUTTER 柚木麻子著 新潮文庫

あらすじ

男たちの財産を奪い、殺害した容疑で逮捕された梶井真奈子。若くも美しくもない彼女がなぜ――。
週刊誌記者の町田里佳は親友の伶子の助言をもとに面会を拒否していた梶井との面会を取り付ける。フェミニストとマーガリンを嫌悪する梶井は、里佳にあることを命じる。その日以来、欲望に忠実な梶井の言動に触れるたび、里佳の内面も外見も変貌し、伶子や恋人の誠らの運命をも変えてゆく。
(裏表紙より)

感想

結論から言うと、面白かった。面白かったけれど、嫌悪感も覚えた。

柚木麻子さんの作品は初読で、これまでの作品は全く知らず、Twitterで読了ツイートで書影だけみて、タイトルと装丁だけで前情報をほとんど入れずに読んだのだけれどまさか、木嶋佳苗事件をモチーフにした作品だったとは。

購入するときにも後ろのあらすじを読まずに買ったので、読み始めて初めて知るという。

この作品には女性の容姿に関する描写がたくさん出てくる。そのどれもが、女性は痩せている方が美しいという目線から描かれていて、容姿が劣っている人間をガンガン貶めていく。

それが世間一般の目だと分かっていても、文章で描かれるととても苦しくなるのは、私が容姿が劣っている側の人間だからだと思う。コンプレックスを抉られていく感じ。

こんなにもこの事件が注目されたのは彼女の容姿のせいだろう。美しい、美しくない以前に、彼女は痩せていなかったのだ。このことで女達は激しく動揺し、男達は異常なまでの嫌悪感と憎しみを露わにした。女は痩せていなければお話にならない、と物心ついた時から誰もが社会にすり込まれている。
(本文29ページより)

こういう文章が所々にちりばめられていて、そのどれもに私は心を抉られ、ダメージを受けていった。それでも読み進めたのは、物語がとても魅力的だったからだ。

そしてこの作品のもう一つの特徴は、美味しそうな描写が多いということ。作中には色んな料理が出てきて、それはそれは美味しそうな描写がされている。読んでいるだけでお腹が減ってくる、飯テロ小説でもある。

そのなかでも特徴的に描かれ、この作品を読んだ人間なら欲してしまうだろう物それがバター。タイトルにもなっているバターは作中での描かれ方でとても魅力的に感じる。読んだ後、バターが食べたくなり、私はバターアイスを食べた。背徳の味がした。

終わりに

今回は柚希麻子さんのBUTTERを書評? してみました。コンプレックスは抉られましたが、読書体験としてはとても楽しめるものでした。そして読んだら必ず、バターを欲するでしょう。それほどまでに作中でのバターは魅力的です。

まだ読んでいないという方はぜひ読んでみてはいかがでしょうか。


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