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「エレナ婦人の教え」#7 初めての団らん

(著者:ひろ健作より~この小説は実際に起きたことをもとに創作した物語です。物語と連動する形で現実も変容していった不思議な体験を描写しています。はじめの所から読んでみてください。きっとあなたの心に何か変化が起き現実が変わりはじめるでしょう。何か響くものがあったらシェアください。多くの方が救われていくでしょう。右側のマガジンからも読めます。)

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第6章 邸宅 海のほとりにて
https://note.com/hiroreiko/n/n7214683038f6

第7章 初めての団らん

中は薄暗かった。ヨーロッパの家は日本のつくりとは違い、それほど明るくはない。それがかえって、いまの僕には心地よく感じられた。

長い廊下を抜けると、キッチン・ダイニングの部屋に出くわした。木彫りの人形、陶器でできた調味料入りのビン、長さが自在に変えられるテーブル、毛先が短めのじゅうたん、白く塗られた牛革のソファ……。ふだん見ることのない調度品が次々と目に飛び込んできた。

「おかけになって。そこでゆっくりしていてね」

彼女は僕にソファに座るよううながし、ランチの仕度をしはじめた。

窓の外には海が観えた。それはどこまでも青く、広かった。波しぶきが一列に並び、塩のかたまりのようだった。遠くの水平線には、うっすらと虹も観えた。

なんて美しい景色だろう……。こんな場所が日本にあったなんて――まるでハイビジョンのパノラマ映画を観させられている感じだ。しばしの間、僕は窓から目を離すことができなかった。しばらくすると奥の部屋から、スリッパの音が近づいてきた。

その音の主は女の子だった。こんな話聴いていなかったぞ。一人暮らしと思っていたのに……。想いを巡らせていると、その子はテーブルの前で立ち止まった。

透き通るような肌、マリンブルーの瞳――。少し長めの髪はこげ茶に近いブラウンで、後ろできれいに束ねてある。この子も外国の血が混じっているのか――僕は勝手な想像ばかりした。

「カレン、この人がこの間出逢ったヒロさんよ。あいさつをなさい」
「はじめまして。カレンです」

彼女とは、ひと言ふた言しかかわさなかった。エレナさんに似て、見た目通りのその美しい声に、僕は聴き惚れていた。

続けてエレナさんが説明してくれた。

彼女はエレナさんの孫に当たる。物心が付く3歳の頃、両親の元を離れ、エレナさんに預けられたそうだ。その後両親は離婚――。それぞれオーストリアで別の家庭を持った。

別れてから一度も両親と逢ったことはなく、顔も覚えていないという。無邪気さの中に時折り見せるさびしげな顔、それが少し気になった。

「カレンの母親が私の娘なの。向こう見ずな私の娘はね、カレンを置いて帰ってはこなかった。もしかすると私のしつけが厳し過ぎたのかもしれない――そう思っていまでも後悔しているの」

 エレナさんは、なにか遠くを見るようなまなざしで僕に語った。

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第8章 ひととき
https://note.com/hiroreiko/n/n707dc1c45b2a

最悪な人生から脱け出し奇跡を呼び起こす物語「エレナ婦人の教え」
https://note.com/hiroreiko/n/nc1658cc508ac

「エレナ婦人の教え」はじめに(目次)
https://note.com/hiroreiko/n/ndd0344d7de60


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