見出し画像

「エレナ婦人の教え」#8 ひととき

(著者:ひろ健作より~この小説は実際に起きたことをもとに創作した物語です。物語と連動する形で現実も変容していった不思議な体験を描写しています。はじめの所から読んでみてください。きっとあなたの心に何か変化が起き現実が変わりはじめるでしょう。何か響くものがあったらシェアください。多くの方が救われていくでしょう。右側のマガジンからも読めます。)

<<前の記事
第7章 はじめての団らん
https://note.com/hiroreiko/n/n92e2a999f53d

第8章 ひととき
「パスタは、お好きかしら?」

カレンの声で我に返った。ちょうど彼女の過去に思いを巡らせていたところだったので、そのあまりのさわやかな声にハッとした。

そのパスタ、ねじった形でひと口サイズ。木をくりぬいたボウルに色とりどりの野菜と共に盛ってある。

「えっ、えぇ……そうですねぇ」

なにもかもがはじめてで、まだその場になじめない僕は、なんとも愛想のない返事をした。するとこちらの気持ちを察してくれたのか、エレナさんが続けてくれた。

「これはね、カレン特製のサラダパスタ――。私たちは、南フランスやスペイン、イタリーなど地中海周辺の国々を旅するの。そこで知り合った人の家にお邪魔したり、お気に入りレストランを訪ねるの。

  カレンは器用だから、出された料理を見て、作った人にちょこっと尋ねるだけで、同じ料理を再現してしまうのよ」

「それは、すごい」

思わず唸った。ふだん料理には興味を示さない僕でも、およそ人が真似できないことをするのなら話は別だ。

気づくと、いつしか時は流れていた。慣れないことが続き、僕はどこかそわそわした。

「エレナさん、なんだか落ち着きません。ご厚意はありがたいのですが……。なにもせずにいていいのですか?」

「いいのよ。ゆっくりしてて。今日はあなたをもてなす日なんだから。
慣れてないおもてなしが続くとうれしい反面自分にはふさわしくないって思うわよね。一流ホテルに泊まるときなんかは特にそう。おもてなしが心地良過ぎて、逆に違和感があるのね

慣れていないのだから落ち着かなくてイイ――そう思うと気が楽になった。

山盛りのサラダ、オリーブの実が沢山入ったパスタ、もぎたての果物、荒塩をまぶしたパン。その一つひとつが味わい深かった。エレナさんの食卓では、これがいつもの光景なのだろう。

「なんでもお金をかければいいってわけじゃないわ。和気あいあいとするひととき、それがとっても大事なの」

エレナさんに導かれるように、いまはこのひとときを楽しむことにした。

>>このつづきはこちら
第9章 知られざる過去~さざなみの砂浜にて
https://note.com/hiroreiko/n/n0f0561e36d05

最悪な人生から脱け出し奇跡を呼び起こす物語「エレナ婦人の教え」
https://note.com/hiroreiko/n/nc1658cc508ac

「エレナ婦人の教え」はじめに(目次)
https://note.com/hiroreiko/n/ndd0344d7de60

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?