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琉球八社について調べていたら、おもしろすぎて夜が明けた

琉球八社(りゅうきゅうはっしゃ)。
琉球王国の王府から、特別の扱いを受けた8つの神社。

琉球八社は沖縄八社とも呼ばれ、「波上宮・沖宮・識名宮・普天満宮・末吉宮・安里八幡宮・天久宮・金武宮」の8つの神社から成る。琉球八社には主に熊野権現が祀られているけれど、唯一、安里八幡宮のみ、八幡神が祀られている。

王府に係わりのある長寿宮(浮島神社・臨済宗長寿寺)が琉球八社に数えられていないことから、琉球八社は、真言宗の宣伝の為の呼び名であるという考察もある。

もともと、神社寺院は国王や貴族階級が信仰し、一般民衆の信仰は、地域にある御嶽(うたき)や、拝所(うがんじゅ)であったそう。

私が沖縄に来て驚いたのは、神社やお寺の少なさ。茨城だと、地域に複数あるくらい身近な神社やお寺だけど、沖縄では、それが御嶽や拝所だと知った。最初は御嶽と拝所の違いがよく分からなかったけれど、より暮らしのなかにあるのは拝所みたいだ(違ったらごめんなさい)。沖縄では民間信仰の聖地が、森や岩場や洞穴などにあるのも特徴かも。

それでも、波上宮は「なんみんさん」と呼ばれて親しまれ、普天満宮とともに、古くから信仰されていたらしい。

琉球王国時代に王府が正規の「神祇(じんぎ)※天と地の神々。」として認めていたのは、神社ではなく、御嶽、火神の殿、それらに奉仕する女神官であり、民衆の信仰とつながっていたそう。

民衆の信仰が薄いのに、琉球八社として取り上げたのは、明治政府の政策、政治利用でもあったみたい。そして、それはあまり効果がなかったらしい。

琉球八社のひとつである波上宮を建立した崎山氏は、浜辺で光り、ものを言う霊石(凄!)を見つけ、この石に祈ると豊漁となったそう。この霊石を奪おうとする神さま(?!)から、現在波上宮のある場所に崎山氏が逃れた時に、「吾は熊野権現也、この地に社を建て祀れ、然らば国家を鎮護すべし」という神託を受けて、波上宮を創建したという伝承があるそう。琉球に古くからあった石体信仰と熊野信仰(和歌山県の熊野三山を中心とする信仰)の結合だ。

そして、聞き流そうと思いつつ、霊石を盗もうとしたのが神さまっていうのが破天荒だし、その神さまが熊野権現ってこと?いや、違うか?霊石は熊野権現さまの落とし物だったりしたのかな(謎)。

ところで、熊野権現って、なんだ?

【熊野権現(くまのごんげん)とは】
熊野三山(熊野本宮大社・熊野速玉大社・熊野那智大社)の祭神である神々のこと。平安時代以降には、熊野全体が浄土の地であるとみなされるようになった。熊野三所権現以外の神々を含めた熊野十二所権現もいる。

主祭神は、熊野三所権現の三神
スサノオ(家津美御子神:ケツミミコノカミ、家都御子神:ケツミコノカミ)。熊野本宮大社の主祭神。阿弥陀如来。息子。
イザナミ(牟須美:ふすび、むすび、または「結」とも表記。/熊野牟須美神:クマノムスミノカミ/夫須美神:フスミノカミ)。熊野那智大社の主祭神。千手観音。父の妻。
イザナギ(速玉神:ハヤタマノカミ/熊野速玉男神:クマノハヤタマオノカミ)。熊野速玉大社の主祭神。薬師如来。父。

それにしても。

ひとりに対して、名前が多すぎる。

イザナミとイザナギは、日本を創った神さま。

イザナミ(伊邪那美命/伊弉冉/伊邪那美/伊耶那美/伊弉弥/黄泉津大神/道敷大神など。日本神話の女神。イザナギの妻。皇室の先祖。黄泉の主宰神。創造神として信仰されている。)

イザナギ(伊邪那岐/伊弉諾/伊耶那岐/速玉男尊など。日本神話の男神。イザナミの夫。皇室の先祖。三貴子(アマテラス、スサノオ、ツクヨミ)のお父さん。)

【三貴子(みはしらのうずのみこ、さんきし)】
三貴子は、イザナギ(父)から生まれ落ちた三柱の神さまたち。

アマテラス(天照大神/天照大御神/大日孁貴神:オオヒルメノムチノカミ/大日女尊など。女神。※男神説あり。天皇の祖先とされる神(皇祖神)。高天原主神、太陽神、農耕神など多様な神格を持つ。天の岩戸に隠れた神様。弟スサノオの妻。)
ツクヨミ(月読命/月夜見尊など。ツキヨミとも呼ばれる。性別の記述はないが、男神と考えられている。月神、農耕神。)
スサノオ(建速須佐之男命/須佐之男命/建素戔嗚尊速/素戔男尊/素戔嗚尊など。男神。皇室の先祖。海神、嵐神、農耕神。姉アマテラスの夫。)

古事記や日本書紀に出てくる登場人物だらけだ!

そもそも、熊野信仰(和歌山県の熊野三山を中心とする信仰)って、なんだ?

【熊野信仰とは?】
熊野は古くから人々の熱い信仰に支えられた聖域であり、「伊勢へ七度、熊野へ三度」と言われているほどである。熊野という聖域に憧れと救いを求め、蘇りを願って異郷の地とも思える山深い熊野の地を目指した。その昔の熊野詣は難行苦行の連続であり、苦行の果てに自らが体得し、悟りと不思議な力を知りえたといわれている。また、熊野の自然は、四季の変化に富み、美しく、山高く水清く、この地にたどりついた人々は、この世の極楽浄土を見た思いだったのかもしれない。地の果てとも言われる熊野三山が、熱狂的な信仰をあつめた要因の1つは、「熊野権現」は神仏一体であり、貴賎男女の隔てなく、浄不浄をとわず、なんびとも受け入れたことであるといわれている。人は絶望の淵から再生を念じて熊野を目指したのであろう。

熊野本宮HPより抜粋。

自然崇拝という共通点があったから、沖縄にも受け入れられたのかな?
救われたいという思いは、昔も今も、きっと同じだ。

…と思ったら。

熊野三山は豊富な経済力を持っていて、御師(おし)は為替制度を始めて、江戸時代には諸大名以下に金融貸付をするとともに、衆庶に広く信仰を説くことに努めたので、遠く東北地方、また九州より沖縄まで熊野神社が勧請され、まさに全国的な信仰となっていった。

コトバンクより抜粋。

布教活動、流石です。

琉球八社になかなかたどり着けないくらい、知りたいことだらけで、おもしろい。情報が情報をつないで、知識が広がっていく。

琉球八社に戻ろう。


(1)波上宮(なみのうえぐう)

琉球八社の首座。琉球王国時代には琉球八社の中で最も格式のある神社だった。琉球王国の総鎮守(そうちんじゅ:国全体を安らかに守る神)で、現在も沖縄総鎮守として信仰されている。沖縄県那覇市にある神社(住所:沖縄県那覇市若狭1-25-11)。同境内に護国寺あり。熊野権現が祀られている。

波上宮のある場所は、「端城(はなぐすく)」と呼ばれて、那覇の突端であるとともに、神の居住地であることを意味したそう。波上宮は、もともと琉球古来の神に祈りを捧げる聖地・拝所だった。「なんみんさん」とみんなに親しまれているのも納得だ。

沖縄戦で壊滅的な損害を受け、鳥居を残して全てが燃えてしまったけれど、戦後再建された。

【主祭神:熊野権現】
・イザナミノミコト(伊弉冊尊。イザナギの妻。)
・ハヤタマヲノミコト(速玉男尊。イザナギのこと。イザナミの夫。)
・コトサカヲノミコト(事解男尊。スサノオのこと?イザナギの子。)

【相殿神】
竈神(かまど神・火神)。火の神であると同様に、農業や家畜、家族を守る守護神。沖縄ではヒヌカンといって、家の守護神として身近な神。
産土大神(ウブスナノオオカミ)。土地の神。その土地で生まれた者を一生守護すると考えられている。
少彦名神(薬祖神)。スクナビコナノカミ(少名毘古那神)。国造りの協力神、常世の神、医薬・温泉・禁厭(呪術、まじない)・穀物・知識・酒造・石の神など多様な性質を持つ。

少彦名神は、国造りを終えた後に、海の彼方にある常世の国に行ったとされる。浦島太郎が行った竜宮城も常世らしい。常世は、現実の世界とは時間の流れが違う不老不死の楽園を表すこともあるらしい。

常世(とこよ)⇔ 現世(うつしよ)

常世は、永久に変わらない神域(しんいき)。神の国や、海の彼方・または海中にあるとされる理想郷、死後の世界、黄泉でもある。
神域は、神社の境内、または神が宿る場所(依り代、神籬、磐座など)のこと。神域としての森林や山・海・川や岩・木などは、神域である常世と現世の端境を示し、結界としての役割も果たしている。禁足地になっている場所も多い。

魔除けの石敢當(いしがんとう)も、常世と現世の結界なのかな。

常世=ニライカナイ。

琉球神話のニライカナイ(後生:グソー:あの世)も、常世だ。
ニライカナイは、海の彼方の海神の国。

ニライカナイのニライは「根の方」という意味で、日本神話の「根の国(黄泉)」と同一と考える説があると知る。つながっていておもしろい。

ニライカナイだけでなく、オボツカグラという他界概念が沖縄にはあると初めて知る。オボツカグラは、権威を守護する神々の世界らしい。ニライカナイは水平の他界、オボツカグラは垂直の他界らしい。

ちなみに、茨城の酒列磯前神社大洗磯前神社も、少彦名神(スクナビコナノカミ)を祀っていると知る。こちらも、おすすめです(唐突な茨城自慢)。

【酒列磯前神社】

【大洗磯前神社】

そして、波上宮内仮宮にある浮島神社は、もともとは天照大神を祀った長寿宮。琉球八社には含まれていないけれど、史書で確認できる琉球最初の神社だそうです。

★琉球八社「波上宮」へ行ってみた。

(2)沖宮(おきのぐう)

沖縄県那覇市にある奥武山公園内に位置する神社(住所:沖縄県那覇市奥武山町44番地)。航海安全の神として有名で、商売繁盛、金運上昇などのご利益あり。沖縄最古の神地と言われているそう。戦前に当時の本殿は国宝に指定されていたけれど、沖縄戦で焼失。戦後再建された。沖宮のある奥武山公園には護國神社あり。

波上宮の側には、護国寺。
沖宮の側には、護國神社。

こんがらがる…!

【祭神】
・アマテラスオオミカミ(天照大御神/天受久女龍宮王御神)
・天龍大御神(テンリュウオオオンカミ)
・天久臣乙女王御神(アメクシンオトメオウオンカミ)
・熊野権現(イザナミ、イザナギ、スサノオ)
・ほかにもたくさん!

沖宮境内には、本殿を含めて8ヶ所の参拝所がある。住吉神社、八坂神社、天燈山御嶽、水神、弁財天に権現堂などなど。

「大昔、那覇港の海中から光が絶えず射していたので、調べてみると霊木であった。これを熊野権現の霊木とし、社寺を建て、この木を祀った。」

御祭神として祀られている、尋常ならざる古木(霊木)…!

気になる…!!

★琉球八社「沖宮」へ行ってみた。

(3)識名宮(しきなぐう)

沖縄県那覇市にある神社(住所:沖縄県那覇市繁多川4-1-43)。病気回復の神として有名。敷地内に洞窟があり、釈迦の弟子のひとりである「賓頭盧(びんずる)」が祀られている。毎月1日と15日に洞窟の扉が開門される。こちらも沖縄戦で焼失し、戦後再建された。

【御祭神】
・熊野権現(イザナミ、イザナギ、スサノオ)
・午ぬふぁ神
・識名女神

(4)普天満宮(ふてんまぐう)

沖縄県宜野湾市にある神社(住所:沖縄県宜野湾市普天間1-27-10)。沖縄県中部最大の聖地。琉球古神道神と熊野権現を祀る。建築関係諸祈願、結び(諸願成就)の神様。沖縄戦終結後は、敷地が米軍基地の一部として接収されて立ち入り禁止となった為、具志川村(現うるま市)田場に仮の宮を造った時期もある。現在は、米軍から敷地が解放され、再建されている。

【熊野権現】
・イザナミ、イザナギ、スサノオ、アマテラス、
 そして、家都御子神(初登場)。

【琉球古神道神】
・日の神
・竜宮神(ニライカナイ神)
・普天満女神(グジー神)
・天神
・地神
・海神

普天満宮内に、全長約280mの鍾乳洞「普天満宮洞穴」があり、宜野湾市の指定文化財となっている。沖縄貝塚時代の遺物も多数発掘されている。全てを見学する事はできないけれど、50mほどが公開されていて、無料で見学できる。普天満宮洞穴の内部に奥宮が祀られている。奥宮にある霊石のひとつである「こひつじ岩」と呼ばれる陰陽石には、縁結びの御利益があるそうです(行かねば)。

★琉球八社「普天満宮」へ行ってみた。

(5)末吉宮(すえよしぐう)

沖縄県那覇市にある末吉公園内にある神社(住所:沖縄県那覇市首里末吉町1-8)。熊野権現が祀られている。こちらは、夢に人が現れ、「師よ志を遂げたいと欲するなら、是より北山に向かって大きな声で呼びなさい。応ずる所に霊験があるだろう。そこが即ち居所である。私は熊野権現である」というお告げがあり、末吉宮を建立したそう。末吉宮のまわりには、イベと呼ばれる神聖な場所が多く点在するそうです。激しい沖縄戦で本殿は爆散してしまったけれど、戦後再建された。

【別鎮斎】
・土祖神(ツチミオヤカミ)
・澳津彦命(オクツヒコノミコト)
・澳津姫命(オクツヒメノミコト)
・産土神(ウブスナノカミ)

【御神徳】
・国家守護、聖躬万才、国泰民安、五穀豊穣の神。
・学業成就、技芸成就の神。
・子方(にーぬふぁ)の神(事始の神)。
・縁結び、子孫繁栄。

(6)安里八幡宮(あさとはちまんぐう)

沖縄県那覇市にある神社(住所:沖縄県那覇市安里124)。琉球八社の中で唯一の八幡宮。八幡神が祀られている。

八幡神(ヤハタノカミ/ハチマンシン)。武運の神(武神)。
八幡大菩薩、弓矢八幡、誉田別命(ホンダワケノミコト)とも呼ばれ、応神天皇と同一とされる。その為、皇祖神でもあり、皇室の守護神。全国の寺の鎮守神(産土神と同一視されることも多い)でもある。

【八幡三神】
・応神天皇(上記参照。軍神八幡神。)
・神功皇后(応神天皇/八幡神の母。)
・玉依姫命(タマヨリヒメ。神武天皇(初代天皇)の母。海神の娘。龍神。また、神霊の依り代となるヒメ(巫女)を意味する。

以前、茨城県の堅破山に行った時に登場した八幡太郎源義家は、神功皇后を崇拝していたことで有名と知る。崇拝しすぎて八幡太郎って名乗っていたのか!

八幡三神は、安産祈願の神という側面もある。

八幡太郎が崇拝する神功皇后の伝承を読んでいると、なかなかの強者!応神天皇を身ごもっている妊婦の時に、朝鮮半島に出兵して新羅に国を攻め、勝利。凄すぎ!そして、無事応神天皇を出産する。たくましい!安産祈願の神なのも、納得です。

(7)天久宮(あめくぐう)

沖縄県那覇市にある神社(住所:沖縄県那覇市泊3丁目19-3)。熊野権現の他に、弁財天(七福神、財宝神、芸能の神、水神などとして信仰されている)や、先樋川の辰・龍宮新、泊龍宮神(弁天負泰彦大神)が祀られている。

(8)金武宮(きんぐう)

琉球八社の中で最も北に位置する(住所:沖縄県国頭郡金武町金武222)。熊野権現が祀られている。神社は観音寺境内にあり、「日秀洞」と呼ばれる金武鍾乳洞があり、入場料を支払って見学できる。鍾乳洞内には二つの祠があるだけでなく、古酒(くーす)と呼ばれる泡盛の貯蔵庫にもなっている。


せっかく沖縄にいるんだから、琉球八社巡りでもしようかな。でも、その前に、まずは調べてみよう。

そんな軽い気持ちだったのに。

ウィキペディアの情報、次から次へとつながり続ける。知るって、おもしろい。

今回は、ウィキペディアと公式HPの情報しか参考にしていないので、まだまだ謎の神さまもいるし、分からない事も多い。付け焼刃の情報の羅列でもあるので、分かりにくい部分や、不確かな情報も含まれているかもしれません。もし、間違っていたら、ごめんなさい。

神さまたちの名前の多さには驚くけれど、古事記や日本書紀も興味深い。なんだったら、琉球歌集の「おもろそうし(おもろさうし)」も気になる。

おもろ=歌=思い。

おもろのルーツは、祭祀における祝詞だったと考えられている。琉球八社にも関わりがあるはず。

「おもろ(祝詞)そうし(草紙)」は、全22巻。

長いな。多いな。やめとこう(英断)。

調べるよりも、行ってみよう。
琉球八社、巡ってみます。

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