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豆ポレポレとニューヨークレストラン

沖縄市の中央パークアベニューにある珈琲屋さんといえば『豆ポレポレ』。

中央パークアベニューを、国道330号線側からBCコザに向けて歩いて行くと、豆ポレポレが現れる。

豆ポレポレ

お店の入口に、メニューが掲示されていた。

初めて来たお店だからか、緊張してメニューの内容が入ってこない。とにかくコーヒーを売っているお店であることは確かだ。

どきどきしながら入店する。

入店すると、右側に注文カウンターがある。ほんの数秒前にも見たメニューと同じものが置いてある。

「テイクアウトで、お願いします。」

と伝えた後、今度こそ、
まじまじとメニュー表を見る。

コーヒー好きなら、アメリカーノとかドリップコーヒーとか、THEコーヒー!を頼むのかもしれないけれど。

"豆ポレポレのオーレのもーっと"

を注文する。だって美味しそうだったから。
黒糖と加糖を選べたので、黒糖を選択した。

すぐに作って提供してくれる。速い。この時は知らなかったけれど「豆ポレポレのオーレのもーっと」は、カフェオレの素なのだ。カフェオレの素とミルクを混ぜるだけ。そりゃ速いはずだ。

沖縄県多良間島の黒糖をつかったオーレのもーっとです。黒糖のコクが豊かにかんじられるカフェオレの素です。牛乳や豆乳で4~5倍薄めるだけで、ご家庭でも簡単にカフェオレが楽しめます。

豆ポレポレ珈琲商店より転載。

豆ポレポレのシールが貼られたテイクアウト用カップに入れられたカフェオレを受け取る。そのままお店を出そうになるけれど、いや、待て!まだ店内を見ていないぞ。

店内には豆ポレポレの商品たちが、ずらりと並んでいる。かわいい。お店の方に写真を撮っていいですか?と確認すると「どうぞ!」と快く対応して下さる。うれしい。

お店の方が優しいと、ほっとして、ぐんと気持ちが楽になる。店内の商品を眺める心の余裕を取り戻す。

ふと、店内に置かれている古い写真が目に入る。

この写真、見たことある。

昔のコザの風景写真。
ニューヨークレストラン。

写真:那覇歴史博物館所蔵

現在、豆ポレポレのある場所は、ニューヨークレストランの跡地だと知る。確かに、お店の入口には「ニューヨークレストラン」の文字が残されている。

調べてみると、ニューヨークレストランは、1951年に沖縄市照屋で創業している。その後、BCストリート(現在の中央パークアベニュー)に、のれん分けされたニューヨークレストランができて、そこが今回訪れた豆ポレポレのある場所だったと知る。

写真の場所は、照屋なのか、胡屋なのか。

謎の答えを求めて、さらにニューヨークレストランについて調べてみる。沖縄の大衆食堂では定番のAランチを最初に提供したお店であり、那覇のジャッキーステーキハウスもニューヨークレストランののれん分け店であるなど、次々とおもしろいエピソードが見つかる。

ニューヨークレストランは、残念ながら2008年に閉店している。BEGINの「KOZA」という曲の歌詞にも「ニューヨークレストランも店をたたんだ。Aサインの時代が終わった気がした。」という歌詞があると知る。

BEGINの「KOZA」を聴いてみる。たしかに、その歌詞がある。そして、歌詞が沖縄コザの情景を描写していて、めちゃくちゃいい!!

何度も出てくる「憧れのコザのまち」という歌詞が耳に残る。素敵だ!

思わぬ写真との出会いから、脳内がコザに染まった。

冷たいカフェオレを手に持ち、豆ポレポレの外へ出る。お店の外には、ベンチが併設されているので、そこに座ってひと休み。

ベンチから見える風景

今日の沖縄は、ほんのり暖かくて、柔らかい風が心地よい。こうやって風に吹かれながら、カフェオレを飲めるなんて、なんて最高なんだろう。

黒糖の甘さが、はらぺこのお腹をじんわり満たす。

かつてのBCストリートの情景を想う。

復帰前や復帰後の賑わい。ストリップ街だった頃のこと。新たなお店が増えている現在。

私は、この街が好きだ。

私はよそものだけど、懐かしい。
地元の銀座通りを思い出す。

土地に残る歴史や建物、ここで生き抜き、暮らしてきた人たちの話が愛おしい。

増築を重ねた建物。ペンキでペイントされた味のある外壁。Aサインの条件は木造建築ではなく鉄筋の建物だったことの名残り。2階に続く階段。その先にある未知の空間。

一方通行の中央パークアベニュー。
330号線からBCコザまでは緩やかな坂道。
街路樹には、さまざまな南国の植物たち。

沖縄の光は強い。その強い光に照らされた植物たちは、とても輝く。透ける花びら。艶やかな葉や樹皮。鮮やかに光る色彩が、とても美しい。

すべてが混じり合って、唯一無二の風景だ。

イペーの黄色い花が綺麗だな。
花が枝からはらりと落ちる。

ゆるやかな風が吹く。

幸せだなあ。

中央パークアベニューは、2024年度に、一方通行から相互通行にする工事が始まる予定だ。周辺地域の交通利便性の向上が目的だけど。

寂しいなあ。
この雰囲気が素敵なのになあ。

風景は変わる。

その時、その時期、その時代。
今しかないから 愛おしいのかな。

私がベンチに座る前は、おじさんがベンチで休憩していた。たぶん豆ポレポレのコーヒーは飲んでいなかったけれど、おじさんの散歩の休憩所なんだろう。

お店が地域に溶けこんでいる。それも素敵だ。

改めてメニューを見る。
そこである表示を見つける。

"ドリンクは全ておもちかえりです。"

わざわざテイクアウトでと言った自分が、
ちょいと恥ずかしい。

外のベンチは心地よい。中央パークアベニューのアーケードもあるし、ゆっくり座って過ごせます。沖縄あるあるの突然の雨が降っても安心です。

ぜひ、豆ポレポレでコーヒーをテイクアウトして、外のベンチで、今この瞬間の沖縄の風景を、ゆったりと堪能してください。

【追記】
ニューヨークレストランの写真の場所は、現在の豆ポレポレがある中央パークアベニュー(胡屋というか、正確には中央)だと教えてもらいました。謎、解決!

おわり

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