『透明』2019.12.16




「好きって100回呟く間に、世界が滅びたらいいのにな」
彼氏のいないまま、こぼした一言が自分に刺さった。
「私は滅びて欲しくないけどな」
「早紀だけ生きてて欲しい」
早紀はそんなのやだ、と言って私の手を握った。
「透夏のいない世界なんてやだよ」
「早紀は大丈夫だよ。なんとかなる」
「なるわけないでしょ。きっとどこの誰より寂しく死ぬよ」
誰もいなくなった世界で、一人立っている早紀を想像する。どうしてだろう。それでも早紀は笑っている。
「私の想像する早紀は、そんな世界でも笑ってる」
「……それはさぁ」
「早紀、私の前で笑ってなかったこと一度もないじゃん」
当然だよ、と早紀はまた笑う。
「透夏といたら、そりゃあ笑うでしょ」
私たちは手を繋いでいる。彼氏のいないまま。
「透夏がいる世界ならなんだっていいよ」
早紀の唇が当たる。
それは女の子の柔らかさなのに、私の息を吐く音も酷く女っぽい。
これが矛盾しているなんて、やっぱり滅べばいい世界だ、と思った。




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