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ちょんまげチーズケーキ

みんなもあるだろう「マイブーム」

推しているヒトやモノなど、挙げればキリがないほど、さまざまな対象がこの世に存在している。

僕はある時期、チーズケーキにハマっていた。
そう。激ハマりしていた。

チーズケーキは様々な場所で売られているが、その中でも僕は某コンビニで販売していたものをたくさん食べた。

だから太った。
もちろんこれだけが理由ではないが。

話を戻そう。
味、買いやすさ、価格など、
条件面のバランスが一番良かったのが
このチーズケーキだった。

それに関連して、
ある時こんな出来事があった。
そのことは今でも鮮明に覚えているし、
なかなか忘れられない。

近所の某コンビニによく出没していた僕は、
ある会話を聞いた。

「また来たよ。」

「また来たね。」

「今日のちょんまげチーズケーキは、
何個買っていくんだろうな。」

「私は3個にかけるよ。」

「それは最高記録だ。俺は安定の2個。
だって安定感が売りだからな、ちょんまげチーズケーキは。」

ーーーこのあたりで薄々気づき始める。ーーー

(心の声) 
髪を結っていて
チーズケーキを買う客って俺だよな?
そもそも、いま店内にお客さん俺しかいないし。

そう。
ちょんまげチーズケーキとはたぶん僕のことだ。

会話から類推するに、
今日この瞬間に名付けられた感じでも
なさそうだった。

もう少し会話のボリュームを
抑えめにすればいいのに。

いや待てよ。
レジに何個持っていけばいいんだ?

元々は1つだけ買う予定だったけど、
それでは2人とも予想を外すことになる。

いやいや。
そもそもそんなことを気にして
個数を調節する必要はあるのか?

いや、ないな。
よし、予定通り1つで行こう。

僕は1つだけをレジに持って行った。

会計の途中、
店員同士で目を見合わせていた瞬間があった。

おそらくどっちも予想を外したからだろう。
この時僕は、せめて2個か3個にすればよかったと軽く反省した。

会計終了後、
足早に店内を去ろうとしてる時に
レジの担当をしてくれた兄ちゃんが

「いつもありがとうございます」
と言った。

そしてもう1人の女性店員が続けて
「ありがとうございました。」と言った。

僕はこの瞬間、あることを決めたのだった。

「近日中に4個買っていくか」

この日に食べたチーズケーキの味は
いつもと違い、何だか特別なものに感じた。

しかし食べ終わった後、
僕は我に帰って思った。

「ちょんまげチーズケーキと言われて
正直嬉しくはないよなあ。」

冷静に考えればネーミングとしては微妙である。そう、微妙である。

実はこの話には、さらに続きがある。

舞台となったコンビニではなく、全く関係のない地域で偶然にもちょんまげチーズケーキの名付け親二人を見かけたのだ。

内心、「あの二人か。」
となんとも言えない感情が芽生えた。

しかしそんな感情もすぐに吹き飛ぶのである。

よく見ると二人は手を繋いでいた。

なるほど。
僕はここで、一人よがりの想像をし始めた。

もしかしたら
ちょんまげチーズケーキの話題がきっかけで
あの二人は仲が良くなったのではないか。

そしたら僕は、知らぬ間に二人を繋ぎ合わせたことになるのではないだろうか。

いやいや。ちょっと待て。
繋ぎ合わせたなどという証拠はどこにもないぞ。

そもそも僕が名付けられるだいぶ前から
二人は交際していた可能性もある。

だとしても、1ミリくらいは貢献したんじゃない?
という妙な自信もなぜかあった。

「だったらこのあだ名も悪くないか」
と心の中で呟き、僕はこの場所を後にした。

ちなみにチーズケーキのマイブームは
これ以降来ていない。

早朝にて運動しているちょんまげチーズケーキ

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