元木 大夢

小説や詩、エッセイを中心に。

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マガジン

  • 短編小説 「黄色のチューリップ」

    2022年ころに執筆した小説です。

  • 短編小説「虹住人の抜け殻」

    2017年頃に書き始めた小説です。

最近の記事

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黄色のチューリップ

 忙しなく毎日が過ぎていく中で、僕以外は効率的に動くことが多くなっていた。韓国ドラマは2倍速で観て消化するし、自炊よりもUBER EATSで食事を済ます。電車で仕事場に行く事が減り、同じ空間で誰かと仕事をすることもなくなっていた。これは大学が同じでよく連んでいた山田からの情報だ。山田は新卒で渋谷区にある大手IT企業に入社し、今もそこに勤めている。山田から連絡があったのは久々だった。たぶん卒業以来、初めての連絡だと記憶している。山田は懐かしい話を一方的にし始め、ついには最近の同

    • マイレセプター

      ここはどこだろう。立方体の形をした部屋にいる。壁面には無数の穴があり、穴の形状は微妙にそれぞれで異なる。部屋の四隅は箱が置いてあり、開けてみると割と重量のある鍵がある。当初、全て同じ鍵だと思っていたが、床に全部並べ確認してみると形状の違う鍵だということがわかった。おそらく無数の穴に対して最適な鍵がここにはありそれをはめ込むことでこのくだらないゲームを終わらせることができる、そう理解した。私は鍵と鍵穴の両方を隈なくチェックし、各々に該当しそうな鍵を順にはめていった。初めの頃はそ

      • 聴こえぬ叫び、聴こえる沈黙

        あなたの叫びを 僕は聴いた それはあくまで 音声に過ぎなくて 雑音として処理され 空気中に浮遊しては消える 聴こえぬ叫びを 無駄に鳴らすのではなく あなたの沈黙が 世界の誰かに届くように あなたの持つ 叫び以外の武器を今こそ 写真:2019ころ

        • 虹住人の抜け殻 (3)

          *  中庭には僕たちが塗ったヘンテコな配色のベンチが一つ、他のベンチとは生まれた場所が違うような雰囲気を纏い、僕を見ていた。ゆっくりと歩みより、そのベンチに腰かける。あの夢の詳細は未だにぼやけたままだ。だが、僕にとって、それだけでなく彼女にとっても、重要な出来事だったのではないだろうか。 エミコがやってきた。 「朝食べた?」 「食べましたよ。」 「昨日は岩鬼さんとずいぶん話し込んでいたみたいね。」 「僕の物覚えが悪くて。」 「バレバレだよ。岩鬼さん、嘘つくの下手だから。」

        • 固定された記事

        黄色のチューリップ

        マガジン

        • 短編小説 「黄色のチューリップ」
          1本
        • 短編小説「虹住人の抜け殻」
          3本

        記事

          虹住人の抜け殻 (2)

          * あの時、僕は手を放した。一瞬の出来事だった。 妹は帰らぬ人となっていた。その事実を自分が認識するまで時間がかかっていた。いやもしかしたら、その事実自体を認識したくなかったのかもしれない。僕は両親に責められなかった。僕自身としては責めてほしかった。いくら子供だとしても、彼女のお兄ちゃんである事実は揺るがない。でも、今そんなことは言えない。僕には彼女のお兄ちゃんである資格なんてないのだから。 * 僕たちは中庭に向かった。そこには様々な種類の花が植えてあった。堅牢な外観から

          虹住人の抜け殻 (2)

          Navy

          Youtubeに他の曲も載せています。 https://youtube.com/@hiromumotoki?si=R_QOFPhRBQwbTdHa

          理不尽な涙

          退院して約1週間後の水曜の夕方、大学の友人から表参道に来ないかという連絡が入り、僕はそこに向った。 退院後に彼と会うのは初めてで、6日ほどの入院生活のオモシロ話や大変だったことなど積もる話が山ほどあった。 出来事は帰りの電車で起こった。珍しく電車の先頭車両に乗った僕は、久々に会った友人との濃密な時間の余韻に浸っていた。ある駅を過ぎたあたりのこと。一人の女性の目にうっすらと滴る涙が確認できた。年齢は50代くらいで、両親よりも何歳か上くらいの風貌だった。声を出して泣きじゃくって

          理不尽な涙

          虹住人の抜け殻 (1)

          あの時、手を放した。一瞬の出来事だった。 * 海面に光が反射し、視界から確認できるその海は綺麗だった。僕は浜辺に座り、海風を感じながら何も考えずその場所にいた。ある時点で僕は、艶のある黒髪をした横顔の美しい女性が隣に座っていたのを確認した。その女性も海の方を向いていたのだが、僕がじっと見ていたことに気づき、こっちを見た。彼女の瞳に僕が映る。映った僕が間抜け面にならないようにと顔を作る僕がそこにはいた。僕たちはさわやかな海風を共に受けながら、同じ道を歩いている。そして、他の

          虹住人の抜け殻 (1)

          ちょんまげチーズケーキ

          みんなもあるだろう「マイブーム」 推しているヒトやモノなど、挙げればキリがないほど、さまざまな対象がこの世に存在している。 僕はある時期、チーズケーキにハマっていた。 そう。激ハマりしていた。 チーズケーキは様々な場所で売られているが、その中でも僕は某コンビニで販売していたものをたくさん食べた。 だから太った。 もちろんこれだけが理由ではないが。 話を戻そう。 味、買いやすさ、価格など、 条件面のバランスが一番良かったのが このチーズケーキだった。 それに関連して

          ちょんまげチーズケーキ

          20211229

          純粋で纏った力に 僕たちは魅了される ただそのままであれ 写真 2018ころ

          20220113

          やさぐれた感情を持った心臓に 優しさの印を押してあげたあなたたちの詩は 観衆を救うだろう 写真:2019

          ある海、あの唄

          雨上がりの朝に唄声が響き合う 見落としていた何かを求めるのではなく そこにあることの意味を理解する ある海 私にとって日常ではない風景 そこに暮らす人にとっての日々 思い出したあの唄 少し外れた音程も愛おしく感じた

          ある海、あの唄

          夢の続きへ

          夢の続きへ

          暴れん坊 翔くん

          写真は2018年

          暴れん坊 翔くん

          憂鬱です

          写真は2018年ころ

          くだらない話

          写真は2017年ころ

          くだらない話