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マイレセプター

ここはどこだろう。立方体の形をした部屋にいる。壁面には無数の穴があり、穴の形状は微妙にそれぞれで異なる。部屋の四隅は箱が置いてあり、開けてみると割と重量のある鍵がある。当初、全て同じ鍵だと思っていたが、床に全部並べ確認してみると形状の違う鍵だということがわかった。おそらく無数の穴に対して最適な鍵がここにはありそれをはめ込むことでこのくだらないゲームを終わらせることができる、そう理解した。私は鍵と鍵穴の両方を隈なくチェックし、各々に該当しそうな鍵を順にはめていった。初めの頃はその正答率は低く、一発目の鍵穴をクリアするのに2時間以上もかかったと思う。2発目、3発目とその精度は上がり数百はあるだろう鍵と鍵穴にはめていく作業は中毒性もあり、ある種の快感もあった。残り10個ほどの鍵で終了となった時にあることに気がついた。このままいくと鍵と鍵穴の数が合わない。とりあえず該当するもの同士を先に終了させ、その後で考えようという結論に至った。しかしやはり問題が生じることとなる。これ以上当てはめられる組み合わせが存在しないのだ。鍵も鍵穴も余っている状況でこの無機質な立方体の部屋から出ていく方法はないと考えていた私は途方に暮れた。隠された鍵穴がこの壁面に存在するのではないかとも思って隈なく探したが見つからない。どうしたものか。次は鍵の方に着目してみる。すると鍵自体に穴が空いているものがあった。それは貫通しているわけではないが、深さは十分にあった。私はその穴に合う鍵を探してみることにした。フィットする鍵があったのでそれで時計回りに45度回してみるとはめられた鍵の先か変化したのを確認した。正確に言えば、はめた鍵を回したことによりそれがトリガーとなって新たな鍵と変貌を遂げたのだ。私は感心し、鍵を差す鍵も存在することに気が付き、他も試してみた。ある鍵で試したところ、鍵をさして回すと別の穴からそれよりも小さい鍵が出てきたものあった。そうして鍵の謎を全て解いた私は満足げにそれぞれの鍵を壁面の鍵穴にさしていった。しかしまたしても問題が生じた。鍵が一個余ったのだ。再度壁面を調査しても穴は見つからない。鍵穴は全て鍵がさされた状態なのでこれでこのくだらないゲームは終わりだろうと思ったが、クリアには至っていないようだ。また謎があるのだろうかと余った最後の鍵を入念に観察した。しかし何も見つからない。わからない。どうしてこの主催者はこんなくだらないゲームをしているのか。

「おい、主催者。こんなことして楽しいかよ。」
私はそう叫び壁を蹴ったが返答はない。少し眠くなったので休息を取ろうと座った。その時に身体の違和感を感じたので腹のところを触った。下腹部のところに私はある違和感を感じたので触ってみた。気づいた。最後の鍵穴に私は余った鍵をさした。

山奥の吊り橋の中間地点で寝ていた。人気のないこの山の吊り橋は年季が入っており渡るものも年に数えるほどしかいない。私は馬鹿げたことだと理解して、吊り橋を渡り山を降りた.。

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