吐く褒め日記でセルフケア#3
2023年11月、私は47歳で急性骨髄性白血病と診断されました。この文章は、なるべく健やかな気持ちで日々の治療と向き合うために、私なりに続けている日記について、綴っています。興味がありましたらお読みください!
家族以外にも、病院のみなさん、職場の仲間、周りの色々な人に助けてもらって、支えてもらっているのですが、それでもうまく消化できない気持ちが沢山あります。
これまでの私の白血病の治療は、入院して抗がん剤治療を行っていて、1回の治療につき約1ヶ月間入院します。約1ヶ月の治療が終わると、リフレッシュのために一時帰宅が許されますが、それも数日間。また病院に戻って約1ヶ月の抗がん剤治療……。私の場合、何より辛いのが、自分の家に帰れないのと、病院の外に出られない、この2つです。
病院は体調の変化があったらすぐに対応してもらえるので安心です。そして抗がん剤治療の影響で感染症を起こしやすくなるので、院内にいることで感染リスクを下げられる、というのは頭では分かっていること。頭では分かっていても
「外の空気が吸いたいな」
「自分のベッドで寝たいな」
「時間を気にせずお風呂に浸かりたい」
「家のゴハンが食べたい」
あげればキリがない気持ちが、入院中はどんどん湧いてきて、おさまることはありません。
身体の辛さはお薬で抑えられても、気持ちの辛さはどうしたらいいんだろう?試しに1日だけ、その日の気持ちを日記にみたいに書いてみようかな?
治療から少し日が経った頃、思いつきでとりあえずスマホに書いたのは、
「何歳まで生きたいか」
という言葉でした。意外な言葉で自分でも驚いたのですが「欲をいえば80歳、あと33年かぁ……」と続き、早く家に帰って夫とたわいもない暮らしをしたい、と書いていました。
次の日は
「治療もうやりたくないな……白血病になって心も傷ついた」
その後も
「気持ち悪い、病院食の量が多くて圧迫感がイヤだ」
「隣の病室のおじいさん叫んでてウルサイ!」
「検査の結果退院できない、誰のせいでもないけどイライラする」
「真面目も努力も通用しない…無力感がすごい」
などなど、毎日あった事や感じた気持ちを書き留めていくようになりました。ここには書けないような、暗い言葉、毒舌、グチや怒りで溢れている日も笑。最初はスマホにメモしていましたが、小さなノートを買ってお気に入りのペンでコツコツ書いています。
この病気を経験していて私が思うのは、早く治したいと思っても、自分が頑張れることが少ないもどかしさ。時が経つのをじっと待つしかないやるせなさ。身体の辛さはもちろん、気持ちの辛さとも長く向き合わないといけない。
一晩寝たら嫌なことはリセットできる、という性格の方もいると思いますが、私が朝起きて一番最初に目にするのは病室の天井。
「あぁそうだ、病院だった……」
私が白血病であることは、忘れたくても逃れられない事実なんだと毎朝思い知らされるのです。1日中病室にいると、段々と気持ちの視野が狭くなり、世界が小さくなります。
そんなこんなで、毎日辛い気持ちを吐き出す日記を書き続けていると、
「歯科の先生にお口のケアを褒められたうれしかった、自信ってダイジ」
「熱が下がって久しぶりにシャワーに入ってサッパリ」
「検査、治療、薬飲んで、1つ1つやっていくしかない、私はよくがんばってる」
という嬉しかったことや、気持ちよかったこと、自分を褒めてあげる日記を書ける日もでてきました。
今の辛い気持ちを吐き出して、今の自分を褒めてあげる、毎日言葉にしていくと、不安やモヤモヤやイライラがちょっとだけ落ち着くようになりました。私の場合、元々文章を書くのが好きなのと、一人会議(頭の中で考えをめぐらせる時間のこと)をよくやっている超内向的なタイプなので、周りの人に何でも言うのが難しい時もあって、日記を書いて、考えを吐き出し続けることは、性に合っていると思います。
本当は心の底から、自分の家に帰りたい!病院の外の空気を吸いたい!でも泣いてもわめいても叶わない時もあります。
根本な解決にならなくても、その日1日をなるべく気持ちよく過ごすために、とりあえずやり過ごすために、私の白血病治療そして長い入院生活に日記は欠かせないものになりました。
日記は「吐く褒め日記」というオリジナルの名前をつけました。気持ちを吐いて、自分を褒める。そうすることで、日々の気持ちの汚れを取り除き、潤いを与えてあげる、まるでお肌のお手入れを続けるような感じで、私は吐く褒め日記でセルフケアしています。