【詩作品】落花〜『焔』朗読詩集CD収録作品〜
緑陰の遠景をながめながら
ゆるやかに黄昏てゆくはずの時間は
ふいに投げられた一石で
網目の罅が走る 宵闇の空
風が掻き消す波紋は
水に映る子らのざわめきと共鳴し
残響は驟雨がたたく
黒土へと沁みこむ
萌芽した想いは
しずかに眠らせて
とじていく世界に
誰にも見られぬように
季節をあやまり
ぷっくり孕み
ほころんだ桔梗の肌を
細い氷の針で
縫いあわせて
葉先にころがる朝露
とけだすかなしみを
憂いた指先で
描いて あそんで
*詩誌『焔』の詩と音楽・朗読詩集CDに収録した作品です。
『焔』は民衆派詩人、福田正夫が創立した約80年続く詩誌で、嘗ては作家井上靖も同人として参加していました。
現在は「福田正夫詩の会」が主宰し、1987年から詩壇の登竜門と言われる福田正夫賞を設けて、毎年受賞者を発表しています。
*民衆派詩人福田正夫と福田正夫賞についてリンクを貼りましたので、ご参照ください。
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