汗と熱と冷え、そしてデトックス。
汗をかくのが嫌いだ。スポーツやサウナで流す汗を別にすれば、日常生活において汗なんてかかなくていいのにと思っている。そんな汗にまつわる、ごく個人的なエトセトラ。
多湿な夏、肌にまとわりつく汗
日本(東京)の夏がこんなに不快な季節になったのはいつ頃からだろうか。足元のアスファルトから照り返してくる灼熱もさることながら、湿度の高い環境が不快でしょうがない。
さて、多湿な環境に身を置いていると、そんなに気温が高くなくても、特に何もしていなくても、全身の肌にまとわりつくようにじっとりと汗ばんでくる。これが本当に不快(かつ不愉快)で、個人的にもっとも嫌いな汗はこれである。
逆に気温が高くても陽射しが強くても、湿度が低くてサラッとしていると体感はそんなに辛くないものだ。実体験ベースだと、真夏に訪れたパリやジュネーブはこのパターンだった。それと比べたら、真夏の東京なんて亜熱帯である。子どもの頃(40年くらい前)はこんな気候じゃなかったと思うんだけどな。
ちなみに夏の間、我が家では室温を下げるより除湿のためにエアコンを使用することが多い。そもそも妻はエアコンで冷えるのがあまり好きではなく、今年は妻の発案で氷の塊を室内の各所に置いてみた。流石に映画「サマーウォーズ」の陣内家のような氷柱を並べるわけには行かないが、水を入れたペットボトルを凍らせて活用してみたのだ。
これが思った以上に奏功して、やはり気温だけでなく湿度を下げることにも一役買ってくれた。人間の代わりにペットボトルが汗だくになってくれたわけだ。
不要な冷房で冷やされる汗
とはいえ、好むと好まざるとにかかわらず、夏場は汗をかくものだ。それは受け入れるしかない。問題はかいた汗のその後だ。
理想は、シャワーを浴びてさっと流してしまうことだろう。文字通り水に流してきれいサッパリ、あとはデスクで仕事に集中するなりソファでくつろぐなり、はたまた娘と遊んでまたひと汗かくなり、自由である。でももちろん、いつもシャワーばかり浴びているわけにはいかない。
例えば、クライアントとの約束に向かって移動中。駅までの道中で汗をかき、鞄から取り出したハンカチで額や首筋の汗を拭いながら電車に乗り込む。するとそこには、なぜか無用に極寒の空間が存在している。ふと訪れた百貨店の店内然り。
電力消費が、電気料金が、とこれだけ声高に叫ばれている世の中で何をこんなに冷やす必要があるのか?
実はこの話、10年以上も前からずっと各所で発言しているんだけど、一向に改善される気配がない。夏は冷えすぎ、冬は暖房が暑すぎる。みんな屋外の気候に合わせた服装をしているんだから、そんなに極端に冷暖房を効かせたら逆に不快だということになぜ鉄道各社は気づかないのか。
夏場の高温多湿な屋外でかいた汗は公共交通機関の無用に強力な冷房によって冷やされ、そしてそれを繰り返すうちに僕は体調を崩すのだ。こんなの嫌がらせ以外の何ものでもないと思うんだけど……そう思いませんか?
解熱する汗
体調を崩すとなると、僕はたいてい喉と体温に症状が表れる。いわゆる扁桃腺持ちというやつで、風邪かな? と思っているうちにまず喉が腫れておかしくなり、なんだか熱っぽいなと思っているとあっという間に高熱になって、頭がグラグラしてダウンする。
そんな感じで10代の頃からコンスタントに(年1〜2回)発熱していたもので、今となっては高熱が出ても(しんどいけど)慌てることはない。時間がかかったとしても確実に体温を下げて、身体を楽にするメソッドを自分なりに確立しているからだ。
それは、身体を温めてとにかく汗をかくということ。
発熱して悪寒を感じたら(そしてその日の活動を諦めたら)、ベッドにバスタオルを敷いて、その上でタオルケットにしっかりとくるまって、普段なら厭う発汗をここぞとばかりに後押しする。
自分の高い体温そのものが辛いときは、首筋・脇の下・鼠径部などに冷却パックや保冷剤を当てて冷やす。こうするとすうっとラクになるんだけど、これをやって(やらなくても)寒気を感じる場合は熱の上がり端である。そんなときは諦めて、身体を温めながら高熱と戦うのだ。
ほどなく全身から大量の汗をかくので、頃合いを見て着替えをする。汗でぐっしょりと濡れた服を脱ぎ、全身の汗を拭いてから新しい服を着て、またベッドに戻って汗をかく。
水分補給も忘れてはならない。我が家の定番は麦茶/POCARI SWEAT/GREEN DA・KA・RAといったところ。汗で失われた水分と塩分をきちんと補給でき、かつカフェインの含まれていないものが理想だが、別に水でも良いと思う。スポーツドリンクは全般的に甘すぎるので、氷を入れたり少し水で割ってから飲んでいる。
体力があれば不快感を払拭するためにシャワーを浴びる。とはいえまたすぐに汗だくになるので、身体が冷えないようにシャワーでさっと流すだけだ。
大量発汗と着替えを数回繰り返すうちに体温が落ち着いてきて、身体がラクになってくる。その間、眠って身体を休めているということも大切なのだと思う。実際、「風邪をきちんと直したいなら、本来は絶対安静だよ」と言っていた医師がいた(気がする)。
熱さえ下がってしまえば、あとは時間の問題だ。喉や鼻の症状は多少長引くこともあるけど、少なくとも日常生活には復帰できる。
そして、デトックス
体調を崩す → 発熱 → 汗をかいて快復、という流れはかれこれ40年も繰り返してきたことだが、結婚して初めて、妻に指摘されて気づいたことがある。それは……
「ヒロキって熱が下がった後、肌がキレイなんだよね。発熱してデトックスでもしてるんじゃない?」
……ということである。
言われてみると、確かに大量に汗をかいて熱が下がった後の肌はなんとなく滑らかでキメが細かいようにも思える。そんなこと、妻に言われるまで気にしたこともなかった。
妻曰く「汗と一緒に老廃物が毛穴から排出されているんだろう」ということで、敢えて言うならサウナ後の肌の状態に近いということだろうか。
アウフグースが好き
僕はいわゆるサウナ好き・整い好きというのでは全くないんだけど、かつて、実家からそう遠くない所にあったスパのスウェディッシュ・サウナにハマったことがあった。
そこでは一日に数回「アウフグース」というのをやっていた。熱せられたサウナ・ストーンにアロマ水をかけて高温の蒸気を大量発生させ(=ロウリュ)、その熱い蒸気をスタッフが大きなタオルを使って、入浴者に向かってバサッバサッと扇いで送るのだ。
そうすると呼吸をはばかるような熱い空気の塊がブワッと身体にぶつかってきて、体感温度が一気に上がる。そしてやはり、大量の発汗が促される。施設によっては「熱波」と呼ぶこともあるようで、(ネーミングはともかく)言い得て妙ではある。
そのスパでは、アウフグースの開始時にきれいな氷が配られた。強烈な熱気の中でそれを口に含んでゆっくり溶かしながら目を閉じていると、なんとなく自分と周囲の空間を隔てている境界が緩んでいくような錯覚があって、それが好きだった。
でも水風呂には入りたくない
サウナと言えば、直後に冷たい水風呂に浸かる……というのが一般的な流れのようだが、僕はどうしてもあれができない。冷たいのが嫌だというのもあるけど、それ以上に怖いのだ。リラックスやリフレッシュのために訪れたスパで、なぜショック死のリスクを負う必要があるのか?
このスパにもサウナ室のすぐ側に水風呂(覗き込んでみるととても深そう)は用意されていたが、実はスタッフの方がこんなことを教えてくれた。
「水風呂じゃなくて、シャワーブースで体温よりちょっと低いくらいのシャワーを浴びると良いですよ。石鹸は使わずに、シャワーだけで全身の汗を丁寧に流してみてください」
これを試してみて、一気にこのスパが好きになったのだ。スウェディッシュ・サウナ(アウフグース)からの低温シャワー、その後はデッキチェアでぼんやりと涼んでリラックス。この流れは僕の好みにすごくマッチした。さらにその後の一杯は何にも代えがたく旨い。
さて、話が長くなったけど、この「サウナ → シャワー後の肌の質感」と「体調を崩して発熱・発汗 → 快復後の肌の感じ」は確かによく似ているように思う。よくよく考えてみたら汗だくになって湯だけでさっと流すあたり、サウナ後のシャワーとそっくりではないか。なるほど妻の言う通り、熱と戦って快復する過程は身体(肌)のデトックスでもあったのだ。
というわけで、書いているうちに久しぶりにアウフグースのためにスパに行きたくなってきてしまった。どうせたっぷりと汗をかいてリフレッシュするのなら、やはり発熱してダウンよりはサウナでアウフグースの方が良いよね、当たり前だけど。
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