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「真空」状態になったZoom会議にお地蔵さんが出現した理由(2020/5/3)

「気まずい沈黙の空気」が漂わないのですね。そりゃそうで、オンライン上にはそもそも、リアルな「大気」が存在していないのですから。会議室の宙に漂うアレ、空気を読み合う出席者たちの頭上80センチ辺りの大気中にモヤモヤする「よどんだ沈黙の空気の塊」はZoom会議などには発生しないのです。

新年度、子どものサッカークラブで「保護者の役員決め」をZoom会議でやることになりました。PTAの役員決めとスタンスはたぶん一緒。「大切な仕事だけど面倒くさそう。頼まれればやってもいいけど。自分から手を挙げるのはちょっと」な案件です。司会の方の「では『我こそは』と、役員やっていただける方いますかー?」の質問に、みんなで空気を読み合うプレイをするイベントのはずですが、あれよあれよ!です。挙手挙手挙手。数分で全役員が決まりまして。

素晴らしい限りですが、なぜでしょう?
オンラインはやはり「真空」だからだと思います。「真空」状態は、可及的速やかに、何でもいいので他の物質で埋められたがります。「真空」は孤独なんです。「沈黙を埋めなきゃの恐怖」に襲われる。その恐怖に怯えて挙手してしまうんです。オンライン会議は余計な一言を口走る、思わずプライベートを晒してしまう傾向があるようで、だからZoom飲みが活況なのかもしれませんが。

僕が毎週やっているラジオ配信でも沈黙は5秒が限界です。急に「黙祷!」と叫んで黙り込むネタを僕は気に入ってよくやりますが、そのたびに相方の原田くんは5秒で「無理無理〜事故事故〜」と沈黙の限界を迎えてくれます。

もしかすると「真空」に暮らす宇宙ステーションでは絶えず孤独の感情に包まれているのでは。宇宙飛行士たちは「大気」がある地球上よりもずっと饒舌かもしれませんね。

「大気」で思い出すこと。授業が始まる最初と最後に「きりーつ!礼!」とする理由は、向き合う先生と生徒のあいだの「大気中」に、国語の神様とか数学の神様とかが浮かんでいて、見守ってくれるその神様に感謝するためですよ、と中学時代、恩師に教わりました。Zoom会議やオンライン教材の場合、リアルな「大気」がないので、そんな神様がぷかぷかと下界を見下ろすための「居場所」がないのです。おそらく「気まずい沈黙の空気」というのも、神様がイタズラして、窒素酸素二酸化炭素から加工して作っているのでしょうね。

斯くして、見事なスピード感でサッカークラブの役員がZoom会議でほいほい決まっていく只中で、僕は画面上のワイプでどんな顔をしていたか?
「お地蔵さん」です。ごめんなさい。それでもやっぱり役員に指名されるのが怖かった。しかしオンライン上は「大気」がなくて孤独なので、思わず発言してしまいたい、あわよくば立候補してしまおうかの欲求に駆り立てられます。まずいまずい。そこでできるだけ自然に「お地蔵さん」、安らかな無表情です。なんということでしょう!「神様」の不在につけこんで、僕が変わって、自ら「神」になろうとしたのです。ちょうど僕の映る画面が逆光だったので、背中から後光も差しまして、なんとも近寄りがたいオーラが出たのです!

田舎道の小さなお地蔵さんが、ほとんど誰の目にも留まらぬように、僕の存在をみなさん見事にスルー!作戦成功!
……だったのでしょうか、これ。会議後引き続き行われたZoom飲みでも、行きがかり上「お地蔵さん」表情を継続せざるを得ず、ほとんど誰とも絡めず、リアルに孤独になってしまったのは言うまでもないのでしたー。

(↓↓ラジオで「黙祷」ネタやった回です〜)


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