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2022年振り返り:ツクルバが挑戦するスモールキャップ上場のリアルと、上場後再成長する中で感じた上場スタートアップへの誤解と課題

初めに

背景・目的 これは何か

私は金融専門家でないのであくまでスタートアップ経営者の立場としてお話します。
2022年の振り返りと、誰も教えてくれなかったスタートアップ経営の上場前後の実体験を交え、本気で上場後の中長期成長をやり切ろうとしている上場スタートアップは面白いぞ、ということをお伝えするのが本稿の目的です。

(取材協力 グロース・キャピタル株式会社

2022年 スタートアップ冬の時代へ

2022年は米国を契機に市況が急激に悪化した混乱の1年でした。上場企業のマルチプルがさがり、結果未上場スタートアップが資金調達が苦しくなり、ダウンラウンドでのM&AやIPOも多く見受けられる状況になりました。
スタートアップ冬の時代に入ったと多くの経営者が認識を改めた1年になりました。

タダだった資本は今や高価に
資本がタダの時代はより多くの資本を消費する会社がベストだった
資本が高価になった今はこれらの会社はワーストな会社に
1ドル1ドルが以前よりもより大切になった時、優先順位をどう変えるか

希望的観測は時間の無駄。古き良き時代が帰ってくるのに希望を馳せるのはやめるべき

セコイア・キャピタル「Adapting to Endure」より和訳

真っ当に利益を出して成長をし続ける会社が評価されるある意味正常状態に戻ったとも言えます。
その中でツクルバも大きく方向展開しました。これまでふわっとした意思決定をしていたものを徹底して見直し、投資対効果の厳格化を行い、生産性向上を全社で掲げ、急激に赤字圧縮の方向性に舵を切りました。そして年初に立てた方針のもとで一定の成果を出せた一年となりました。

ツクルバの2022年振り返り

V字回復し再成長、生産性向上へ

ツクルバの2022年を一文で現すと「V字回復し再成長、生産性向上へ」です。現在地点を俯瞰して見ると、上場後2020年コロナ禍においての売上減、2021年に再成長を最大限加速するために先行投資と事業・組織変革を行い、2022年はV字回復し生産性向上へ振り切りました。

決算説明資料より
決算説明資料より

ツクルバは上場して1期目(2020年)にコロナの影響を受けて減収減益、そこからの立て直しをしました。
その中で感じた、上場後の試練と上場スタートアップへの誤解について触れたいと思います。

スモールキャップ上場の是非 上場スタートアップの課題

ここ10年でVC-backedのIPOが増え、2022年は冬の時代突入も相まってスタートアップを中心に日本の上場市場に関する新しい議論が特に目立ったように感じました。主な論点は「小さいIPOが多すぎる」というものです。先述の通り私は専門家でありませんが、グロースキャピタル嶺井さんの記事などによれば日本は大型リスクマネーの請負手が少なく、数十億以上調達するならIPO一択、またM&Aが少ないためVCの出口を作るにはIPOを選択せざるを得ない、という構造的課題がありました。
上場後もそのままずっと成長しない上場企業がいること、これは私は課題だと思います。成長しない・できないなら新陳代謝や再編をするべきと個人的には考えます。そもそも上場をなるべく伸ばして1000億以上での上場を目指す企業が増えるのも大賛成です。
しかし、そういった(成長しない)企業群として一緒方に捉えられ、現在の時価総額300億以下〜数十億円のマイクロキャップの上場企業から次の1000億企業が出てくる可能性に靄がかかってしまっていて、優秀な人材や投資家から実態より過小評価されている現状は変えたいと思っています。

上場後の誤算と、周りからの誤解

上場目的の一つに、「ヒトモノカネが調達しやすくなる」という定型文がありますが、これはベンチャー・スタートアップと呼ばれる類の企業にとっては逆であると感じました。

資金調達のハードル

時価総額300億以下だと機関投資家が入りづらく資金調達オプションが限られます。また、3900社程度ある上場企業の中に入ると、未上場で注目されていた企業も埋もれてしまいます。
こうすると何が起きるかというと、出来高が細る→少しの売買で大幅に振れる状況になり株価が安定しない→結果また参加者が減る というスパイラルに陥ります。こうするとより一層資金調達はしづらくなります。

結果的にツクルバではこの状況を打開すべく、上場後の資金調達はかなり独自性あるものを実行しました。
・エンジェル投資家、ファミリーオフィスからの増資(参考記事
・転換社債での調達
・種類株式での増資

オプションが限られる中、いずれもあまり上場企業では例の少ない資金調達となりました。

採用にまつわる誤解

インセンティブのアップサイドがない(ストックオプションなどがもらえない)、成長機会がない(すでに完成された事業を回すだけ)、すでに人が揃っていてポジションがない、などの誤解があり、人が採りづらい状況が起きます。
これらは、成長を標榜する上場後のスタートアップにおいては誤解だと言いたいです。

ストックオプションを中心とした株式報酬は、上場後も発行することが可能です。現にツクルバでは毎年発行をしています。加えて、上場企業では持株会やRS、ESOPなどの株式インセンティブの設計も可能です。
これらは、現在価値とその後の成長の差分を果実として分け合うものなので、上場後でも今から5〜10倍の規模になれば充分すぎる果実があると考えています。(詳細は後述)
ここで言う果実は、期間は4〜5年目線で多くの人は数百万〜数千万、CxOクラスなら数千万〜億をイメージしています。
特筆する成果実績の無い優秀な方が「ストックオプションで億万長者」という話を狙うのであれば、創業初期のスタートアップにCxOクラスで入社するコースを狙うのが良いのかなと思います。

成長機会がない、ポジションがないと言うのも、そんなことはありません。私たちは常に自分より優秀な人を求めており、その会社が成長を続ける限り、新しいポジションは次々に生まれていきます。

ツクルバの株式報酬事例

ツクルバはあまり知られていないですが株式報酬にずっとこだわり続けてきた企業です。
社長である私の意思として、メンバー(従業員)・株主・取締役会が共通の目標(長期の企業価値最大化)を目指し、その結果なるべく多くの人にメリットがあるようにしたいと思っています。
ツクルバでの株式報酬に関する取り組みでいくと以下のようなものがあります。

従業員持株会
自社株を保有することで、会社の成長により当事者意識を持ってもらいたいという目的で従業員持株会を設置しています。また、購入金額の20%の奨励金を設定し、自己負担額×1.2倍の金額分、株式を取得することができます。(これは一般的な奨励金3〜5%程度よりもかなり高水準です)

定期的なストックオプション発行
中長期的な当社の業績拡大及び企業価値の増大を目指すにあたり、より一層意欲及び士 気を向上させ、当社の結束力をさらに高めることを目的として、上場後に毎年ストックオプションを発行しており、その一部を抜粋すると
第11回 当社従業員 41名
第12回 当社従業員 134名
第13回 当社従業員 100名
上記の通りで、多くの従業員に向けてストックオプションを発行しています。

上場スタートアップのメリット

10年以上のスパンで成長し続けようとしているスタートアップに取っては、途中にたまたまIPOという通過点があるだけで、その前後で成長機会、インセンティブなどスタートアップの魅力となるものは本来毀損されることはありません。
小さく上場しそのまま長年成長できない会社がいるのは事実で、そこの課題は解決しないといけないものの、上場スタートアップにも成長を続け上場後に時価総額1000億超えをしている会社が沢山あります
むしろ、有望で成長をしているのに市場から過小評価されている上場スタートアップをでチャレンジすることは、評価額が過熱気味のレイターステージの未上場企業よりもアップサイドがあり、流動性リスク(上場いつするのリスク)が少なく、インセンティブ観点ではむしろメリットがあります。

このような背景もあり、私としては意思を持って株式報酬を強化しています。

終わりに

不都合な真実の解決に取り組むチャレンジャー

課題がまだある日本のスタートアップ環境、上場市場ですが、様々な民間プレイヤーが台頭し、皆で改善に向かおうとしています。
また政府のスタートアップ支援策が有効なものになるとすると、これも後押しになると思います。

未上場での長期・巨大化をできるようにする
 →海外VCによるクロスオーバー投資、国内VCの大型化
未上場から上場後もフォローする
 →シニフィアン社などのグロースファンドプレイヤー
上場してからの多様な調達支援
 →グロース・キャピタル社などの上場スタートアップ支援プレイヤー

こういったプレイヤーがいる中で、
我々は上場スタートアップ当事者として、ここから1000億以上の企業価値に最速でたどり着いていくことで、上場スタートアップの成功事例の一つになりたいと真剣に取り組んでいます。

ツクルバ社の取り組みにご興味ある方へ

過去から時系列で何を発信してきた、ぜひ他のnoteもご覧ください。

ツクルバ11年目に寄せて。上場後の改革を実施し再成長へ(代表取締役 村上)
取締役候補者・竹内真さんに聞く、企業価値最大化のための社外取締役の役割
ツクルバが新経営体制になって半年が経ったので振り返る
ツクルバFY23期キックオフ「すぐ決めて、すぐやろう」

それでは皆さまよいお年を。