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まるちゃんとアン-#思い出のマンガの一言


朝一の白湯が日課の私。

寝ている家族を起こさないよう
そーっとお湯を沸かし。

間仕切りを外してワンルームにしてしまった
厳しい我が家の住宅事情ゆえ
暗闇の中、心カウントで熱湯を注ぎ
さ、運ぼ、と思ったら

・・・あ”っつ!!!!!!!!!😳

知らぬ間にぎりぎりまで攻めていた熱湯。
ボーダーライン超えて、指を奇襲。
必死の形相で、絶叫をかみ殺しました。


そんな朝の食卓。

私「もーほんまに、朝から悲劇やったわ」

娘「まるちゃんのおねえちゃんが好きな人だね」

私「・・・人?」









・・・それは秀樹や(←ようわかったな私)





はい。

いつも難産のつかみが天から降ってきたところで、行きますよー。
私の「思い出のマンガの一言」

さくらももこ先生の「ひとりずもう」から。


ちびまる子ちゃんの青春

うちの娘、帰るとiPadに飛びつき、Netflixに直行します。
「ドラえもん」と「のんのんびより」と「ちびまる子ちゃん」の
ヘビーローテーション。

ヒデキー(西城秀樹)とか、ももえちゃん(山口百恵)とか、
昭和感満載の「ちびまる子ちゃん」ですが
色褪せない魅力があるようです。

そんなまるちゃんラヴ娘が、古本屋さんで発見したのが「ひとりずもう」

小学校5年生から、漫画家デビュー直後まで
リアルなさくらももこ先生の人生の軌跡を描いた自伝的マンガ
(エッセイ版もあります)

「ちびまる子ちゃん」では、孫煩悩な友蔵じいさんも
理想上のフィクショナルな設定なため、登場せず。

ですが、大方のオリジナルキャストはそのまま。

ご存知のように、超能力や世界戦争とは無縁の「ちびまる子ちゃん」。
だたこう、ほのぼの日曜日の夕方みたくなるマンガっていいますかね。

その淡々とおだやかに進む時間の中で
思春期のまるちゃんが
思春期のはまじたちに違和感を覚え始め。

短大まで一緒のたまちゃんとは、変わらぬ友情が続きます。

しかし、大事件は一切起こらず。

家でまったり過ごすのが好きな、まるちゃん。
テレビでお笑いをみるのが好き。
部屋で一人で絵を描くのが好き。

近所の、偶然見つけたいい雰囲気の美容院に
初めて足を踏み入れることが既に、大冒険。

奥手のまるちゃん。
部活をがんばるわけでもなく(←消極的に物理部)
文化祭もさぼって帰っちゃうし
みんなの憧れる東京に行っても、楽しめず(←静岡県清水市出身)
進路も迷い迷いの結果、推薦で短大に行くことにするものの。

みんなみんな
キラキラしてて
青春ていう感じだなあ・・・

私は、なんでみんなみたいな
青春ぽさがないんだろ・・・

私の青春てけっこうつまんない青春かもな・・

だからってみんなみたいに
やたらとキラキラしてる青春なんて・・・

ちょっと・・・

常識を超えたスリリングな展開


自伝的マンガなんで、
もちろん最後には一大ヒットを飛ばす
売れっ子漫画家になるって知ってます。

ただね。
下巻の1/4くらいの時点でも、絵のひとつも描きゃしない。

何がハラハラするって
漫画家へのやる気スイッチいつ入るのか、
どうなってんだっ!?って、ところが
一番ハラハラする
んです。

子どもの頃から、人とは違う嗜好の持ち主で、
絵本やビートたけしが好きだったまるちゃん。
漫画家になれたらいいなという、ぼんやりとした夢が見え隠れしながらも
親友のたまちゃんにすら、告白できず。

漫画家なんて・・手塚治虫と同じ職業なんて・・
なれるわけないのにやろうとしてるなんて

結末を知っていればこその、ビックリ発言ですが
後ろ向きなまるちゃんは、抱えきれない夢を心の奥底にしまいこみます。

毎日こうして授業中ボーっとしてただけで2年も過ぎたんだ・・

小学校の時からボーっとしてたから、
その頃から入れると11年もボーッとしてた事になるなぁ・・

そう考えると、3年寝太郎はえらいよなぁ、
たった3年で済んで・・

・・私なんていつになったら目が覚めるんだろう・・

・・小学校の頃から
”高校生になったらマンガを描いて投稿しよう!!”って思ってたのになぁ・・

高校生になったら絶対『りぼん』に投稿するんだ。

高校生でいられるのは
あと1年しかないんだ・・・

わたしそろそろ、目を覚ましたほうがいいかも・・・

こうして重い腰をあげ、ついにマンガを描き始めるまるちゃんですが
コマ割すらできないことに落ち込み。

それでも勇気をふりしぼって初投稿。
発売日に心踊らせ、本屋へ急ぐも、
何もおこらず。

夢は消えても人生は続く

いつまでもガックリしていられない、と
漫画家とは別の道に暴走しかけるまるちゃんですが
結局何もできないまま、志半ばであきらめ。

勝手にどんどん後ろ向きに、自虐的になる、まるちゃんですが
意外なきっかけから運命が動き出します。


ネタバレにならないよう、ここはぼんやりと。


苦手な少女漫画で挑むも、日の目をみなかったまるちゃん
突然、エッセイ的にマンガを描くことを思いつくのです。

そのシーンに、私の思い出の一言があります。
シーン全体が深く心にひびきました。

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私は・・・
人生が変わるかもしれないという予感がした。
                 
ー「ひとりずもう」さくらももこより

苦しめていたのは、自分の見方。
そこをちょっとだけ変えたら
突然、まわりの風景がキラキラして。

・・・う、う、う、うわぉーーーーーーーーーん

初めて読んだその日、
子どもに読み聞かせながら、私が嗚咽してしまいました。

まるちゃんはアン


エンディング、たまちゃんとのエピソードで
再度、涙。

読後、改めて考えると
「ひとりずもう」という、一見ミスマッチなタイトルも又、
秀逸なんだなぁ。

あとがきも素晴らしいんだなぁ。


・・で、思いました。何かに似てるぞ。

そうだ!「赤毛のアン」!

そこで勝手に対応させたキャスト表はこれ。

まるちゃん = アン・シャーリー
たまちゃん = ダイアナ
おねえちゃん
おとなりのリンド夫人
おとうさん = マシュー
おかあさん = マリラ
はまじ ≒ ギルバート


「赤毛のアン」も、舞台となるのはごくごく日常の風景。
そこに妄想力たくましいアンがやらかす、小さな事件の数々。

赤毛にことのほかコンプレックスを持っているところも
なんとなくまるちゃんに似ている気がしました。

いつもまるちゃんの味方で、「腹心の友」だったたまちゃんが
ダイアナというのも、
自分としてはしっくりきました。(いかがでしょう?)

私、「赤毛のアン」もさることながら
成長したアンが奨学金の権利をギルバートに譲られ、和解、進学。
そして教師になって成長する、続編「アンの青春」も好きなんですが
この「ひとりずもう」はまさに「アンの青春」そのものでした。

心の角度を1°でも動かす風景


実在の人物の自伝的マンガなんで、結末は承知の上で読むんですが
それでもぐいぐい引き込める、さくらももこ先生の腕っぷし。
卓越した観察眼、エッセイストとしての才能を感じます。

現代の清少納言。

エッセイ漫画の草分け的、第一人者。

今でこそ、エッセイ漫画って一つのジャンルとして確立しましたけど
正当派少女漫画全盛期の当時、
さぞ生きづらかったんじゃないかと思います。

ちなみに、「ひとりずもう」の中で、ももこ先生、何度も
「自分は絵が下手だ、絵が下手だ」を連呼していて
「ちびまる子ちゃん」を見る限り、そうでもない・・と思ったんですが
ひょんな拍子で、デビュー当時の漫画の一部を目にする機会があり。

お世辞にも上手とはいえないかも・・と思いました。(←失礼きわまりない

いや、それくらい、当時の『りぼん』の編集さんも
審美眼があったってことです。


で、この思い出の漫画の一言。

いろいろな方の記事を読みましたが
結局、自分の体験を伏線に、自らの深部に強く共鳴したキャッチコピーが
思い出の一言になる
のかな、と思いました。


____________



私、建築のデザインを仕事にしています。
20代の頃は、3度の飯よりプランニングが楽しかったし
今でも建築は好きです。

でも。

私は、他のデザイナーみたいに
モノに執着がなくて、モノ萌えしない。

だから、どうしても素敵な形をつくるオーダーに応えられず、
そこが、ずっと苦しかったです。

究極、何がやりたいの?と聞かれたら
私の内に、やりたいことは、ない。

やる気がないとか、消極的とかっていうのとは、違うんです。

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でも、noteが双方向になった最近、ふと思いました。

私のやりたいことって、
人の心に火がつく瞬間をお手伝いすることなのかもしれない


時、同じくして、時代の変わり目をきっかけに、
マグマのようにたぎる、内なる熱を感じることがあります。

私、建築の仕事以外にも
学校で教えてみたり、ガイドやったりしたり
あっちゃこっちゃしてます。

一見支離滅裂ですが、でも、私の中では基本は同じ。

突然、違った風景に出会ったみたいに
人が目をキラキラさせる瞬間がある
んです。

その瞬間に立ち会うとき、至福を感じます。



「ひとりずもう」を読むと
自分の心の角度を、1°でも動かした風景を見逃さず、描き切る
生き生きとした喜び
を感じます。


そして私は、
心の角度を1°でも動かす風景を用意したいのかもしれません。

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この2サークル合同企画に参加しました。(「読書KIDS 親の会」所属)

サークルに所属しているかどうかは、関係なく、
3月8日深夜まで、どなたでも参加できます。

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