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【建築】"どんでん返し"のストアフロント・ギャラリー(スティーヴン・ホール)

ロウアー・マンハッタン、あるいはダウンタウンと呼ばれるマンハッタン島南部。ウォール街やワールド・トレード・センターといったオフィス街や観光地でもあるが、その北にはやリトル・イタリーやチャイナタウン、バワリーといったかつて移民たちが移り住んだ地区がある。

今でも少しゴチャっとしており、良く言えば生活感があるが、一部には治安があまりよろしくないエリアもあるようだ。しかし最近はこうした地区でもジェントリフィケーション、つまり小洒落た再開発により高級化や治安の改善が進み、一方では家賃が高騰して、従来からの住民にとっては住みづらくなっている。

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隣接するソーホー地区もかつては商店街として栄え、1960年代には安い家賃を目当てに多くの芸術家が集まり始めた。しかし芸術家の街として有名になると、ここにもジェントリフィケーションの波が押し寄せ、芸術家たちはマンハッタンから追い出されることになった。現在は隣のトライベッカも含めて再開発が進んでおり、高級ブランドの街というイメージが強い。

実際、ヘルツォーク&ド・ムーロン(H&deM)設計による超高級コンドミニアム 56 レオナード・ストリートもトライベッカにある。

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ジェンガのような張り出したバルコニーが特徴。

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このような歴史があるためか、上品でオシャレなブティック、レストラン、ギャラリーがある一方で、古い建物をリノベーションしたお店も多い。また芸術・アート的な要素も残っている。ストアフロント(Storefront for Art and Architecture)もそんな一画にある。


ストアフロントは、建築家やアートを中心とした実験的なギャラリーとして、1982年にオープンした。

とにかくその敷地がユニークである。三角形の敷地は長さが30mあるが、西端は6m、東端はわずか1mである。なぜこんな狭いところに建てたのだろう?

ストアフロント3D


1993年には、アーティストのヴィト・アコンチと建築家スティーブン・ホールによりリノベーションされた。
狭いスペースを有効に活かすために、彼らが出したアイデアが"どんでん返し"だった。どんでん返しと言えば映画や小説においての大逆転・大転換を思い浮かべるが、歌舞伎の舞台の強盗返や忍者屋敷の反転するからくり扉が語源である。

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外壁には縦または横方向に回転する12枚のパネルが設けられている。これによって、道行く人たちを招き入れるようにギャラリーを開いている。建築的な表現で言えば、外(通り)と内部(ギャラリー)を曖昧にしているのだ。

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表面のデザインは企画によって変わるが、パネルは恒久的なものである。見ただけで楽しげであり、アートと建築の実験的スペースという意味でもピッタリだ。

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ギャラリーがオープンしている時は、常にこのようにパネルが歩道に飛び出した状態だが、法的には問題ないのだろうか?

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内部はもちろん狭い。狭い上に、真ん中には鉄骨の柱がある。

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企画にもよるだろうが、展示はどこか手作り感があって微笑ましい。

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ということで建築探訪としては直ぐ見終わってしまうのだが、せっかくなので、もう少し近隣を歩いてみよう。


ここから北に10分程歩いた場所に、これまたH&deMによる高級コンドミニアム 40 Bond Streetがある。この周辺には鋳鉄を使ったキャスト・アイアン建築と呼ばれる歴史建造物が数多く残っているが、その伝統的な建築をH&deMの解釈で再構成したのがこのファサード。

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やや強引に見れば、隣の建築とも調和している...かな?

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さらに北に歩くと、「科学と芸術の発展のため」の私立大学であるクーパー・ユニオンがある。トム・メイン率いるモーフォシスの設計によるこの校舎には芸術、建築学部などが入居している。
鉄筋コンクリートの建物をアルミとガラスのファサードで覆うという手法は、トム・メインが得意とするところだ。

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今度は大通り沿いに南に戻ると、ノーマン・フォスター卿(Foster & Partners)による現代アートギャラリー Sperone Westwaterが見えてくる。

すりガラスの向こうに見える赤いボックスは、なんと展示室を兼ねたエレベータなのだ。今回は乗る機会が無かったが、どんな使い方をするんだろう?

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この時の企画はアンディ・ウォーホルのドローイング展。1950〜60年代の若手時代の作品で、後のポップアートのイメージからはほど遠いように思えた。

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このギャラリーの裏にあるのが、デザイナーズホテル PUBLIC Hotel。設計は今回だけで3度目の登場となるH&deMだ。(単純に私が彼らの建築が好きだということもある)

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泊まってはいないが、ロビーだけ見学した。

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オレンジ色の照明が効果的で、外の街路樹の緑との塩梅が良い。

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コンクリートのフレームが目立つ建築ではあるが、見る場所(と天候)によっては、青空に溶け込んでいるようにも見える。

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実は上の写真、これまた私の好きなSANAAの設計によるニュー・ミュージアムの屋上から撮っている。

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ニュー・ミュージアムについては長くなるので、また別の機会に!



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