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【建築】あゝ美しきかな、アリアンツ・アレーナ(ヘルツォーク&ド・ムーロン)

何度でも訪れたい、いや実際に訪れている建築がある。自分でもアホかと思うが、"その建築"は5回も見に行った。そんなに好きなのか? Yes, I do.である。Absolutely.である。

"その建築"とはブンデスリーガのFCバイエルン・ミュンヘンの本拠地 アリアンツ・アレーナ。世界で最も美しいスタジアムの一つでもある。




ミュンヘンには元々、1972年のオリンピックのためにつくられたミュンヘン・オリンピアシュタディオンがある。建築家ギュンター・ベーニッシュと構造家フライ・オットーによる吊り構造の透明な屋根が特徴的な名建築だ。


現在は市民の憩いの場にもなっている公園だが、本来は陸上競技場であるこのスタジアムは、名門 FCバイエルン・ミュンヘンにとってベストとは言い難い。そこで2006年のFIFAワールドカップの開催を機に、ヘルツォーク&ド・ムーロン(H&deM)の設計により、郊外に新しいサッカー専用スタジアムであるアリアンツ・アレーナが建設された。(ドイツの保険会社アリアンツが命名権を得ている)


ミュンヘン中心部のマリエン広場から地下鉄で20分。最寄駅 Fröttmaningで降りるとスタジアムが見えた。だがスタジアムまではまだ600mもある。


ところでスポーツ観戦、特にビッグゲームの時はすごくワクワクしないだろうか?
私の場合、そのワクワク感は家を出る時から始まるが、駅からスタジアムに向かって歩いている時にワクワク感はさらに高まるというものだ。
そう! つまりこの600mのアプローチはとても重要なのだ!


視界を遮るものは何もないが、なだらかな傾斜の向こうにあるスタジアムは、この地点では上半分しか見えない。このチラ見せ具合も良い。

やがて近くまで来ると、ようやくスタジアムの全容が見える。


それにしてもため息が出るほど美しいスタジアムだ。

H&deMの建築の特徴の一つに「建築の表層」が挙げられる。ファサードにどんな素材を使って、どのように仕上げるかということだ。
このスタジアムでは、ドットがプリントされた半透明のフッ素樹脂(ETFE)の膜を空気圧で膨らませて、それを菱形のユニットにして全面を覆っている。


とはいえ、アリアンツ・アレーナが真価を発揮するのはライトアップされる夜だろう。ということで、夕方再びやってきた。

この時間帯、ゲームも無いのにわざわざスタジアムを見にくる物好きは少ないようで、電車も人はまばらだった。(というかほぼ無人)


夕陽を浴びたスタジアムも美しい。

この日は青色にライトアップされるようだ。

ブルーアワーと相まって、もう絶妙な色合い!

結局真っ暗になるまでいた。


コレは別の日のライトアップ。霧のような小雨が降っていたのだが、雨粒に光が反射して、燃え上がるような幻想的な姿だった。


このライトアップ、開場当初はTSV1860ミュンヘンも本拠地としていたため、それぞれのチームカラーである赤色(バイエルン・ミュンヘン)と青色(1860ミュンヘン)、さらにはドイツ代表のゲームのために白色に発光できるようになっていた。光源はそれぞれのカラーフィルターが組み込まれた蛍光灯。


そして2015年にはLEDに置き換えられ、何色にも発光できるようになっている。


ちなみにアリアンツ・アレーナにはプロトタイプとも言える建築がある。H&deMの地元であるスイス・バーゼルのザンクト・ヤコブ・パルクだ。FCバーゼルの本拠地であり、スタジアムと高齢者住宅という組合せの複合施設でもある。

このスタジアムはアリアンツ・アレーナの4年前の2001年に完成した。設計はもちろんH&deM。ファサードはポリカーボネートの丸いパネルで覆われており、夜にはライトアップされる。


H&deMがこの時の経験を活かしたのは言うまでもない。



さて、「お前は建築だけにしか興味ないのか?」と言う声も聞こえてきそうだが、実はサッカーも大好きである。
ということで、2016年5月3日、UEFAチャンピオンズリーグ準決勝、バイエルン・ミュンヘン vs アトレティコ・マドリードの第2戦を観に行った。


改札を出ると、遠くに”マユ”のような外観のスタジアムが見えた。

”マユ”は夕暮れの中、バイエルンのチームカラーである赤色に染まりつつあった。

そして遠くにあったスタジアムがだんだん近づいてくると共に、自分のワクワク感も最高潮に達した!(興奮して同じような写真を何枚も撮ってしまった...)


ついに来たーーーー!


着いたのは試合2時間前。さすがにまだサポーターはまばらだが、

キックオフにはもちろん超満員!
デザイン的にはスタンド最上段の波打つ赤いラインにも注目。


ゲームの結果はFCバイエルンが勝ったものの、先のアウェーでアトレティコに敗れていたため、得失点差でアトレティコの決勝進出が決まった。ミュンヘンを応援していた私としては少々残念だったが、最高の雰囲気を楽しむことが出来た!

ありがとう! アリアンツ・アレーナ! また来るぜ!


余談だが、選手紹介のBGMは「ツァラトゥストラはかく語りき」と布袋寅泰さんの「新・仁義なき戦いのテーマ」のミックス。コレがまた絶妙にカッコいい!


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