記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

「関心領域」を観た

いつもは,WOWOW でいいやprime でいいやって思うのだけど。
アカデミー賞授賞式を見た時から、
とにかくこの映画は,映画館で観たいと思った。どうしても。

やっぱり映画館で観て良かった。
さすがの音響賞受賞。
あの,なんともいえず不気味な,心を波立たせ揺るがせるあの感覚の源は、
音。身体全体に響く様々な音に他ならなっかったから。
そして,映画館の空間では、その音の中に居て観て感じ考える以外ないから。
自宅の,テレビの前だったら、その音から、音の中に感じるものから、逃れていたかもしれない。
********
冒頭の訳のわからない音の連続に、もうちょっと勘弁して!
と思うか思わないかその刹那、鳥のさえずりがかすかに聞こえてきた。
ほっとして,その音にすがった。そこから現れた穏やかで明るい風景にも。
頭の隅には、冒頭の音がしっかりと残っていたけれども。
この,2つの音の対比が映画全体を覆っている。

アウシュビッツ収容所の隣で幸せに暮らす家族がいた。〜 ホームページより
そう、まさかこんなに近くだとは思わなかった。馬に乗って“出勤する”夫の滑稽さに少し笑った。薄いフェンスを隔てたこちらと向こう。

その暮らしへの、最初のおののき。
夫人が鏡の前で毛皮のコートを試着している場面は,予告編で何回も見た。
お気楽に買い物三昧の奥さま、と想像していた。
その直前の場面での,家政婦たちへの夫人の振る舞い。
袋から出し無造作に食卓に投げられる服。それはどこから来たのか。
俯き加減に荷物を運び庭で働く男たちはどこからきているのか。

長男はベッドの中で“ある物”を眺め、次男は外から聞こえる音を口マネする。
赤ん坊はいつも泣き叫んでいる。夜はいつも廊下の窓辺に佇んでいる娘。
それでも,自然に囲まれ広い邸宅で何不自由なく“幸せに”暮らし、友人も集まる。
“効率的な”処理方法を提案する兵器会社。東方に続々と集まる大企業。
収容所の近隣の住民たち。
何も知らなかったわけではない,はず。
それでも何もなかったかのように、パーティーに集い、
日々の暮らしを営む。

場面が進むにつれ,その場面が意味するものについて行けなくなる。
何かわからないけど,吐き気がしそうな場面の連続に,途中から
考えることはやめていた。
ずっと聞こえている不気味な音も環境音となり、目の前を映像が流れている。
もう,何も聞こえない,考えない。
そうなった自分が1番怖かった。

幸せそうなな生活は描いていたけれど、そういえば登場人物が“幸せそうに”心から楽しそうに笑っている場面は1度もなかったように思う。
夫人もどんどん荒んでいく。
何かが重く大きく覆い被さっている。
でも,知らない。わからない。
目の前のものは手放したくない。

映画は冒頭と同じ,不穏な音の連続で終わる。
誰もが無言で席を立った。
*******
そういえば、最後、唐突に挿入された場面だけど、
原爆資料館を思い出していた。
毎日,感情移入して仕事をしていたら壊れてしまいそうだけど
心を閉じて続けるのも切ないし。
そう、そこで“勤務”している人たち、毎日どんな気持ちなんだろう。

#関心領域 #映画感想 #映画感想文 #A24   #ネタバレ
#八丁座 #アウシュビッツ #ホロコースト映画 #映画 #映画コラム #映画が好き

 





この記事が参加している募集

#映画感想文

68,495件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?