ホラー劇『ヒョウとして』 【脚本書いてみた】 1999文字 | 2024.8.6 第二幕 加筆
第一幕
野山の奥の、その向こう。
そうです。そのあたりです。
声が聞こえてくるはずです。
[兄]
あの日は、急に激しい雹が降ってきて
痛くて寒くて…なぁ?
[弟]
そっだよぉ
驚いたなんてもんじゃねぇ
だってぇ
つい、じっぷん前まで「あっつい!溶けちまう!」って、みんな言ってたんだもんな
[兄]
お前、よりによってヒョウ柄のタンクトップしか着てなかったっけ
はははは
雹にどこもかしこもやられて、血が出たりして。参ったよな
[弟]
イヤな奴だな、お前
オレが血だらけになるのが、そんなに面白いのかよ
そのうち、バチが当たるぞ
いや、雹が当たるぞ
ドーン!!!!!
バリバリパリ!!
[兄弟]な、なんだ、なんだ!!
[豹]
お呼びになりましたか、ご主人様
どちらが私の名を連呼してくださったので
[兄]よ、呼んでねぇよ
[弟]お、俺だって知らないよ
[豹]
そんな…
ヒョウってはっきり聞こえました
千年ぶりの仕事だと思ってましたのに
しくしく
しくひく
[兄]
お前さんは、その柄で猫みてぇだから…
[弟]
あれだ。豹だな、豹
[豹]
そうです!
やっとわかってくださいましたね
なんでも、お申し付けください
願い事を叶えて差し上げます
ただし叶うのは、誰かを反対の目にあわせてからになります
[兄]
おいおい
反対の目ってなんだよ
[弟]
あれじゃねぇか
誰かの不幸と引き換えに
[兄]
お前か俺が幸せになるってことか
[豹]
さすが、ご主人様!
では早速、どちらになさいますか
[兄]
二人とも幸せにはなれねぇのかよ
[豹]
ですから、ご主人様お一人が願いを叶えてお幸せになれます
その代わり、どなたでもかまいませんから、自らの手であの中へ突き進んでいただきます
[弟]
む、難しいこと言うなよ
[兄]
あの中ってなんなんだよ
そんなら…
お、お、お前なんかいらねぇ
[兄][弟]
早く消えちまえ!!
[豹あらため彪]
お二人とも、救ってくださってありがとうございました。
[弟]
ひゃー〜!
助けてあんちゃん!
[兄]
お、お前
どこから出てきやがった!
[彪]
わたくしは、名を彪と申します。
してはならぬこと、いうてはならぬことを、人として生きている間にさんざ行いました。とうとう御仏(みほとけ)が見るにみかねて。人間より豹におなり、と言って頭を撫でてくださいました。
千年もの間、掛け軸の中に閉じ込められるとは思わず、私は頭(こうべ)を垂れました。赦されたのだと思って。
気がついた時には、後の祭りでございました。
どうやっても、紙の上の絵。
絵なのでございます。
これがどういうことか、お二人にわかりますか。
千年ですよ。
耳は聴こえている。目もよく見える。それなのに、話せない。身体も一切わたしのものではないのです。
誰もがわたしを、こう言いました。
美しい絵だ。
なんて綺麗な豹だろう。
どこかに本当にいるのかな。
ふふふ。泣くのはもうよしますね。
救ってくださったのですから。
お二人とも絵に描いたように美しいお姿です。
(踵を返して)
さぁ、今度はあなたがたの番です。
どなたがヒョウとして生きたいですか。
(照明がドンと落ちる)
(10秒後に幕が下りる)
まもなく第二幕が開演となります。
ロビーのお客様はお席にお戻りください。
第二幕
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