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廃村の謎と不可思議な家【怪談・怖い話】


知人から聞いた話(伝聞)

彼女の生家は、お化け屋敷だった。
例えば、廊下。板張りのそこを、裸足で歩く足音がする。ひたひた、という少し湿り気を帯びた静かな足音だ。それが誰もいない廊下を歩き回る。見に行っても、誰もいない。

例えば、風呂場。髪を洗っていると、すっと背中を冷たい風が撫でる。あるいは自分の髪に混じって、誰かの指が自分の指に絡んでくる。ぎょっとして確かめても、なにもない。

幽霊たちの囁き

キッチンからは、料理の音が聞こえることがあった。誰もいないはずなのに、トントンと包丁でなにかを切る音がする。ことこととなにかを煮る音や、パチパチと揚げ物をする音。そういうものがよく聞こえた。見に行くとその音は止み、無人のキッチンが広がっている。

実際、こうした現象は日本の歴史にも数多く記録されています。江戸時代、幽霊や怪異現象は庶民の間で広く信じられており、その影響で怪談話が盛んに語られるようになりました。例えば、有名な「皿屋敷」の物語は幽霊の復讐をテーマにしており、庶民の恐怖と興味を引きました。

子供部屋には、夜、窓を外から叩くなにかがいた。そういう時にカーテンを開けると、白く長いなにかが、びゅるんと暗闇へ消えていく。そういうものを見かけることがあった。

洗面所では、排水口の奥から人の忍び笑いが聞こえた。詰まりのせいかと掃除をしても止むことはなかった。

寝室では、天井裏をざりざりとなにかが這い回った。確かめてみても、なにもいない。ただ、埃に混じって剥がれた人の爪のようなものがいくつか落ちていた。

玄関には、雨も降っていないのに濡れた足裏がよくあった。裸足の足跡には、左の小指がなかった。

怪異の根源

仏間では、仏壇の花がむしられた。開いた花だけがむしられ、畳の上にばらまかれた。だから、生花は飾れなかった。実際、日本の多くの伝統的な家では、仏間や神棚が重要な場所とされており、そこに異常が起きると非常に不吉な前兆とされます。

居間には鏡が置けなかった。置いておくと、決まって割れるからだ。それも粉々に、徹底して砕かれている。鏡にまつわる怪談は世界中に存在し、古代ローマでは鏡が割れることが7年間の不運をもたらすと信じられていました。

トイレでは、ごおーっという地下鉄の音のようなものを聞いた。時々、その音ともに、ふっと焦げるような匂いがすることもあった。焦げた匂いといえば、かつての火災の名残かもしれません。例えば、東京大空襲の際、多くの家が焼け、未だにその記憶を持つ霊が現れるといいます。

庭には、雨の日になると不審な影が立った。家の中から庭を見ると居るのだが、庭にいるものには見えない。そういうものが立ってた。

彼女は、その家には五歳までしか住んでいなかった。それでも、覚えている限りでこれだけの異常があった。自分の知らない、覚えていない異常も多くあっただろう、と彼女は言う。「なんであんな家に住んでたの?って、親に聞いてみたことがあるんだけど」

隠された過去


彼女の実家は、少なくとも彼女の曽祖父の代から住み続けていた。それだけ長い間、異常だらけの家に住み続けた理由はなんだったのか。彼女は両親に聞いてみたのだという。「なんて言ってた?」「いや、それがね……」彼女は困惑した顔で教えてくれた。「おかしなことが起きるようになったのは、私が生まれてからだって」実家の異常は、彼女が生まれたのをきっかけに起き始めたことだった。

一家は、彼女が六歳になる少し前に転居した。新しい家では、なんの異常も起きなかった。彼女が家を出て一人暮らしを始めた先でも、おかしなことは起きていない。後にも先にも、異常が起きたのはあの家だけだった。

彼女の生家は、今はもうない。集落自体がなくなり、やがて山に呑まれた。行く道すら残っていないそうだ。最後に集落を出たのは、彼女の親類にあたる人だった。その人曰く、彼女の生家は空き家になった後も、たびたび鬼火が飛ぶことがあったという。今はもう、それらも含めてどうなったのかはわからない。

後日談

ある日、彼女の元に一通の手紙が届いた。差出人は彼女の親類で、長い間行方不明だった曾祖父のものだった。その手紙には、驚愕の内容が書かれていた。

「もしこの手紙を読んでいるなら、お前は私の秘密を知るべきだ」と書かれていた。曾祖父は若い頃、村の裏山で古い洞窟を見つけ、その中に封じられた古い霊を解放してしまったのだ。その霊は村中に災いをもたらし、曾祖父はそれを止めるために、自らの命を犠牲にして封印を試みた。しかし、封印は不完全であり、その影響が彼女の生家に及んだのだった。

手紙にはさらに続きがあった。「お前の力が必要だ。再び封印を完了させるために、もう一度その洞窟に行かなければならない。」彼女は驚きと共に、その手紙の指示に従う決意を固めた。

数日後、彼女は親類と共に裏山に向かい、曾祖父が見つけた洞窟に辿り着いた。洞窟の中には、封印のための古い道具や、曾祖父が残した手がかりがまだ残っていた。彼女は手紙の指示に従い、封印の儀式を行った。

儀式が完了した瞬間、洞窟内に静寂が戻り、彼女は不思議な感覚に包まれた。家に戻った彼女は、もう異常現象が二度と起こらないことを確信した。そして、曾祖父の霊が成仏したことを感じた。

彼女の生家は、その後も静かなまま残り、彼女自身も新しい生活を始めることができた。封印が完了したことにより、村の呪いは解け、再び穏やかな日々が戻ったのだった。



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