SDGsを使って攻めないと意味ないですよ
~SDGsが問いかける経営の未来(日本経済新聞社出版)要約②~
CSV は ハー バード 大学 の マイケル E. ポーター 教授 ら が 中心 と なっ て 提唱 する、「 経済価値(利益)を創造しながら社会的ニーズに対応することで社会価値をも創造(社会問題の解決)する」という、企業価値創造の新たなアプローチである。
これまでも企業は、CSR(企業の社会的責任)という形で社会に対して貢献をしてきた。寄付や社会貢献を通じて、自社イメージの向上をはかるこれまでのCSRは、事業との相関性はほとんどなかった。
高い倫理観に基づいた「善行」を行うことにより、イメージ向上を図るものであった。
一方で、CSVの注目すべきところは「市場での競争優位の構築や新たな事業創造 に向けたイノベーション活動」である。
つまりは、ライバル企業との差別化・ブランド化をする手法として、社会的価値と経済価値を両立する事業を運営するということである。
従来の企業は、財務諸表上の「利益」という経済価値のみを事業活動の基準としていた。
しかし、これからは、それに追加して社会的価値という新たな基準を追加して事業活動を行うことで、差別化・ブランド化を実現するという、経営モデル自体のイノベーションが起こっている。
CSVは、SDGsに対応する形で3つの側面があると考えられている。
「攻め」とは、SDGsがもたらす事業機会である。
2017年のダボス会議で示された「Better Business, Better World」報告書によると、SDGsの推進により12兆ドルの市場が創出されるとされている。
特に、環境分野において大きく、経済産業省/日本規格協会(2017)「SDGsビジネスの可能性とルール形成報告書」の「SDGsビジネスの可能性とルール形成」によると803兆円の市場が生まれると想定されている。
「攻め」とは、企業がより規模を拡大するための手段として活用できる面である。
「守り」とは、ステークホルダーからの監視・要求である。
例えば、ESG投資に関わるPRI(国連責任投資原則)が代表的なものである。
サステイナブルでない事業には投資しないという方針が打ち出されることで、自社の既存事業の規模縮小のリスクにさらされる。
「守り」とは、リスクを回避するための対策を講じるという面である。
「土台」とは、自社の事業の経済モデルの持続可能性である。
前記事「サステイナブル経営の潮流」で示した「社会課題ブーメラン」よりわかるとおり、持続可能性のない事業は、自分たちの事業環境を悪化させるという自己矛盾を含んでいる。
「土台」とは、自己矛盾の解決のために、自社のビジネスモデルを持続可能に変革するという面である。
もちろん、この3つの面を満たすことが理想であるが、私は、中小企業において最も大事な面が「攻め」であると考える。
様々なニッチなビジネスチャンスやマーケットが存在しており、特定の分野に強い中小企業に親和性がある。
中小企業の持つニッチな強みを活かした「攻め」に取り組むことで、強みの強化や市場創出が期待できる。
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