料理人になりたくて東京から三重県に引っ越したエンジニアの話

東京で働いていたある日、だんだんと仕事が楽しくなくなってきました。

このままやっていけると思うし、成長もしているし、若干息苦しさはあるものの暮らしはとても楽しいものでした。

家賃は高いけれども、物価が高いなんてのは嘘でした。競争の激しい東京はサービスも良いしスーパーのお買い物も安く済みます。電車が嫌すぎて会社まで45分歩いていたので、満員電車も乗っていません。

特に不自由もなく妻と2人で暮らしていました。

そんな中でふと、仕事がつまらないことが耐えられなってきます。

料理がしたい、、

料理がしたい!!

私は料理がとにかく好きです。

魚を捌いて綺麗な刺身になっていく瞬間、油の音・炒める音、調理技術の奥深さ、綺麗な色どりで盛り付けられた時、料理を引き立てる器、調理器具のカッコよさ、全部が好きです。

なぜ料理人を目指さなかったかと言うと、親の圧力に負けて自分の道を自分で曲げてしまったからです。だからよくわからずに北大に行き、よくわからず卒業して、よくわからずエンジニアになってしまいました。

エンジニアはエンジニアで楽しいですが、一生やりたい仕事ではなかったです。「それに気づけただけでも儲けじゃん」と他人は言いますが、そんなものは詭弁で自分の好きなものに最初っから気づいていた私にとってはもやもやします。気づいたことが儲けではなく、それを今後の人生の糧にできないのであれば、コンサルでも営業でも何でもいいわけです。

料理がしたい、とにかく料理がしたい、、

話がそれましたが、とにかく一度しかない人生・料理やってやろうと決意しました。私はとにかく、一生料理をしていたい!

一生料理を続けるにはどうしたらいいのか

飲食業界は苦労が多く大変なことはみんなが知っていることです。

転職を決めた当時は26歳。調理経験は家事+アルバイト2年という状態です。絶望です。

この時私には2つの選択肢がありました。

1ー有名店で修行して確かな技術を身につけて一流の料理人を目指す。
2ー今までのITの経験を活かして、新しい店舗経営で潰れないお店を目指し、そこで料理を続ける。

とても悩みました。

「有名店で技術を身に付ける」言うのは簡単です。

最近では一流ホテルですら仕入れの段階で加工されている品を入れてひと工夫している場所も多いそうです。加工品の質は向上しコストカットのため現場の調理技術が昔ほど要求されなくなってきているそうです。

そうなってくると、「確かな技術を習うことが難しくなる」と同時に「技術以外の要素を身につけていないと生き残れない」時代になります。一流を目指すには適切な師匠と環境を見つけないと、料理人人生は詰んでしまいます。

2番の選択肢は実現が難しいです。ITシステムを使って店舗経営改革をするとなると2種類で「分析」か「効率化」だと思います。しかしそれを実行にうつす体力のある場所は大手の会社になってきます。(実際転職活動を始めてみると例外はありましたが、現場で働ける様な小さい飲食は、ITで分析を始めようなんて思いません)現場を離れてIT分析屋になってしまうのは嫌です。

悩みました。悩みながら転職活動を始めました。

面接で「あなたの店をITで良くさせてください」

面接に行った飲食店・会社は4件くらいで、紹介された会社は25件くらいでした。(途中で今の会社に決まりました。)

そしていく先々で「あなたの店をITで良くさせてください」と言いました。もちろん料理に対する情熱も余すことなく伝えました。

ITと料理を両方やりたいなんて言うと怪しまれるかと思いましたが、そこまで訝しげな態度をとる人はいませんでした。しかし歓迎ムードではありませんでした。やはり店舗をITで改善・分析することにイメージがない方が多いです。短い面接の時間で私はその魅力を伝えきることもできませんでした。それに自分の中にはっきりと具体的な強いイメージがあるわけでもありません。

なんとなく、ITと飲食を並行して活躍していくことは難しいのかなと気持ちがよぎります。

面接の結果は、料理が大好きなことは無事伝わり、受かるところは受かり落ちるところは落ちました。

しかしある日、一番受かりたかった一流のお寿司屋さんに落ちてしまったのです。

失礼ですが、選考中の他の店では料理を学べるとは思いませんでした。

「この先どうしようか?今の会社をとりあえず続けるか?」

EBILAB

EBILABという会社を当時の3年前くらいに知っていました。老舗の飲食店をITで改革し大成功した面白い会社です。

ここでやっていることがちょうど面白いなーと思っていました。

料理が一番好きですが、エンジニアリング(特に機械学習・データ分析系)も好きなのです。子供の頃の図工・体育・音楽・算数で好きだった感覚で例えると、図工の次の次の音楽くらい好きです。

この会社なら両方やらせてもらえそうだな、と思いました。

そんな時、Startup Weekendというイベントに参加する予定でした。

するとよくよく見ると、審査員に偶然EBILABの社長がいます。

これは突撃するしかない。

突撃と内定

3日間のStartup Weekendのイベントを終えて、懇親会が始まります。

EBILABのコーポレートサイトを見ても採用情報は出していないし、まあ相手にされないだろうなと思っていました。

それでもせめてぶつかっておきたい。そんな気持ちでした。


ただしEBILABの社長さんはやはり人気者です。コミュ力の高い人に囲まれ、コミュ障の私は出方を伺います。

一切の動きなく、30分経ちました。その時やっと人だかりが少なくなって、コミュ障の私でも話しかけることができました。

そして今回のイベントの話をして、3、4人で盛り上がって、解散。

もうダメですわ。


結局コミュ障なので大事な仕事のお話はできずじまい。その辺りを再度ぶらつきます。

一瞬帰ろうかなと思ってしまいました。内定をもらうことは、そのくらい可能性の低いことだと考えていたのです。


でもその15分後くらいにもう一度話しかけました。きっかけはないです。ただただ気合で、話しかけてみよう、と決めました。

「EBILAB(というか下の食堂のキッチン)で働きたい。ITのことはわかるので、どんな仕事でも工夫でもできる」と伝えました。

結果は思いもよらぬ好印象。次の日には内定が決まりました。


やりたいことに近づいている人生に満足しています

社会人をまずは3年間と言うことで、エンジニアを精一杯3年間やってみました。けれどもやりたいことに近づいていない3年間でした。

やりたいことの粒度や次元やベクトルや情熱が人によって違いますし、将来を含めたキャリア感を引き合いに出して考えると間違った道かもしれません。

でも今の時代のキャリアなんてさっぱりよくわからないし、北海道大学のキャリア講習会もベンチャー企業の先輩の話も全部参考になりませんでした。

自分は料理がしたいだけなので、これからは一生料理ができる道を真剣にとにかく考え抜こうと思います。

すべての料理人が幸せな人生を送れる様に、飲食を進化させていこうと思います。

最後に

わざわざ2回留年してまで北大出させてもらったのに、3年で2回も転職した息子を理解してくれる家族と
北海道・東京・三重と転職による引越しに付き合ってくださった妻に感謝

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