高校生とデザイン思考#1 

サービスデザインを主軸に活動している僕は、大学や大学院から「デザイン思考」関連の授業依頼をいただくことがある。デザイン思考を通じて、誰もが持つ創造力を最大限に引き出したい、そして、その創造力をもってビジネスあるいは社会に新しい価値を生み出してほしい、そんな思いで授業をしている。(もちろん、僕自身生徒たちからたくさんの気づきをもらっている。)
僕は日頃から、この思考体験の若年化の必要性があると考えていて、それを経産省の友人と議論していたところ、富山の商業高校から「デザイン思考」の授業依頼が入り、今年で2年目を迎えている。

テーマは学校、講師、生徒、保護者、地域の課題を現場調査し、生徒が自分ごととして関心を抱きやすい「制服」に設定した。

本校の特徴として、生徒全員に部活を課していて、その結果運動部や応援団は全国レベル。吹奏楽部に至っては、有料のコンサートチケットの入手困難が常態化するほど人気が高い。その際の生徒たちの公服はもちろん制服であるが….…。どうやら本校の制服は、県内有数の「イケテナイ」を誇る一着の様だ。その評価は、生徒も先生からも異論がない。一方で、地域ではその「イケテナイ」が、真摯さや安心感に繋がり、就職の際や保護者へのプラス評価につながっているようなのだ。

「デザイン思考で制服を考えてみよう!」
2021年の授業開始当初、どうやら難しくて面倒臭い授業が、学校側と外部講師とで始まってしまったという生徒たちの怪訝そうな面持ち….…。そんな空気を入れ替えるために、いきなりプロトタイプによる検証を試してみた。

デザイン思考では、仮説設定→プロトタイプの作成→検証→改良のプロセスを素早く繰り返します。まずは、制服姿の本校男女生徒と「制服人気ランキング上位校」の男女高校生との画像を比較。確かに本校生徒の画像は「イケテナイ」。
そこで画像を加工して、本校の制服を「制服人気ランキング上位校」の男女生徒に着せてみた。その際の本校の制服の身幅や丈、及び靴下や靴は、「制服人気ランキング上位校」と同等にした。すると、なんと、本校の制服も「なかなかイケテル!」と生徒たちと先生方の評価。

そうなんです。「イケテナイ」の本質は、制服の色やスタイルだけに起因するものではなく、前時代の高校生の体型に合わせたサイズ感や素材感、また昭和時代に制定された校則を尊守した髪型、靴下の色やスカート丈などによる要素が大きいと生徒も先生も、気づき出す。そうなるとそれぞれの創造性が起動し、面白いように様々な視点で課題定義と適正化の議論が起こってくる。

この適正化の議論を踏まえて、実は本当に制服を変えてしまう方向に進んでいる。皆で考える「新しい制服」のプロトタイプを、学校主催イベントでファッションショーとして披露するのだ。その様子はまた今度。

自分の経験を横に置いて常識を疑ってみる「デザイン思考」から始まる本校の変革が、楽しみで目が離せなくなってきた。



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