平飼い養鶏まさとう

大学卒業後、メーカーで営業職として7年弱勤めて退職。 約一年を視察や研修で費やし、20…

平飼い養鶏まさとう

大学卒業後、メーカーで営業職として7年弱勤めて退職。 約一年を視察や研修で費やし、2004年6月に養鶏で開業。 中断し、農業大学校の園芸科(野菜栽培コース)で学ぶ。 卒論はトマトの高品質化について肥料と仕立て方で2本書きました。 卒業・再開して10年目を期にnoteを始めます。

最近の記事

飼料(原料)

今回は飼料原料をご紹介します。 養鶏の土台となる部分なので、考え方や原料の特性などについての体系的な記事にしたいところです。 ところが、いざ書き始めると余りに広範なものとなり、あれもこれもとキリが無くなってしまいました。 という訳で今回は、インスタグラム投降のまとめ記事で、原料のご紹介のみ掲載いたします。 原料そのものは、コメやムギ、コメヌカ、ダイズ、カキガラなどで、珍しいものはありません。 大切なのは何を使っているかよりも、どう使いこなすか、あるいは意味を理解して使ってい

    • 農家として(農業大学校でのまなび)

      農家としての歩みのうち、大きな部分は農業大学校での学びです。 開業3年でいったん休業して、農業大学校に入学しました。 34歳。いわゆるリカレント教育です。 専攻は園芸科で、野菜栽培を座学と実習を通して学びます。 養鶏は独学で積み上げたのに対し、野菜栽培は学術で。 農業を科学的・体系的にとらえ直す機会になってくれました。 インスタグラムに連投したものですが、まとめてこちらに掲載いたします。 画像はインスタグラムの方が充実していますので、気になる方はそちらで各記事をどうぞ。 h

      • コクシジウム症(薬剤・備忘録)

        現状の一般的なコクシジウム症対策は、薬剤を使用したものですので下記しておきます。 予防 各種合成抗コクシジウム剤およびイオノフォラス抗生物質が予防剤として使用できる。ただし、採卵鶏で10週齢まで、ブロイラーでは出荷7日前までしか使用できない。(中略)生ワクチンも利用されている。(鶏の病気より引用) 合成抗コクシジウム剤が予防剤として使用できるとは、育成場で抗コクシジウム剤を飼料に混合して与えている事をさしています。 現在の育成場とは違いますが、開業時にお世話になった育成

        • コクシジウム症(緑便について)

          緑便についての考察 前回の記事で、「参考文献には書いてありませんが、慢性タイプの分かり易い目安は緑便ではないでしょうか。緑色をしていますが、これも血便です。」と記しました。 分かり易いので緑便をコクシジウムの目安として記しましたが、緑便は他の重要な疾病でも特徴として挙げられています。 例えばニューカッスル病という疾病も緑便を病徴としていますが、この場合は法定伝染病ですので全羽淘汰となり、農家が対処できるレベルを超えてしまいます。つまり、気づいたところで手の出しようがありま

          コクシジウム症(対処)

          コクシジウム症への対処 本稿は、コクシジウム症への対処法です。 まさとうでは「食酢の飲水給与」と「石灰散布」を利用しています。 食酢の投与 食酢というと民間療法のようですが、そうではありません。 欧州において学術論文で発表され、愛知県の家畜試験場の追試験で確認された科学的な方法です。 元論文はブドウ酢だったと記憶していますが、紛失してしまいました。 ただ、ポーランド科学アカデミーによる「Anticoccidial efect of apple cider vinegar

          コクシジウム症(対処)

          コクシジウム症

          コクシジウム症 本病は、鶏を飼育すれば当たり前のように出会うものの一つです。 鶏がバタバタ死んでしまう急性症状から、分かりづらい慢性症状まであります。 現在では簡単に対処できますが、過去には2度ほど忘れられない経験をしました。 一回目は、開業の時。 初めて導入したヒナが呼吸器系の合併症を患い、診断した獣医師から投薬治療を指導されました。投薬はためらわれるものの、知識も技術も無い状況では指導に従うほかありません。 しかし一週間の投薬終了後、ヒナの体力が回復しきらない段階で

          疾病

          疾病 これから鶏病について、数稿に分けて記していきます。 疾病の名称で稿建てをしてゆきますが、疾病対策において農家のレベルで対処できることはあまりなくて、基本的な衛生管理と栄養管理がせいぜいだと思います。 それが基本だからという事もありますが、問題になるような疾病にはワクチンが開発されていて、それによって抑えられているという事情もあります。 孵化場からヒヨコを買って育てる場合は別だと思いますが、育成場から届いたヒナはワクチンを接種済みです。 まさとうは大雛導入なので、ワク

          床(成分条件)

          鶏舎床にモミガラを敷いてかき回すだけで、ニオイが出なくなる理由を成分条件から見てみます。 前回は酸素に注目しましたが、今回は炭素とチッソに注目します。 そのために必要な指標が「炭素率」で、炭素に対するチッソの割合を表したものです。「C/N比」(シーエヌヒ)と呼ばれることもあります。 細胞には炭素とチッソが含まれているので、生物ならば必ず炭素率があります。 微生物の炭素率 (炭素100に対するチッソの消費から炭素率を換算) 嫌気性細菌  チッソ0.3 ~ 0.75 C/N

          床(酸素条件)

          発酵と呼吸 鶏舎床にモミガラを敷いてかき回すだけで、ニオイが出なくなる理由を酸素条件から見てみます。 ここでは高校の生物Ⅰで履修する「発酵」と「呼吸」を振り返ります。 発酵 生物が、酸素を利用しないでエネルギーを獲得することを「発酵」と呼んでいます。 微生物で、酸素を利用しないでエネルギー獲得するものを嫌気性菌と呼んでいます。 嫌気性菌は原始の地球で生命が誕生した頃に現れたと考えられていて、当時は海中にも大気中にも酸素が少なかったようです。そして、その中でも酸素が無い条

          床(管理作業)

          「平飼いでニオイを出すなんて、鶏を飼う能力が無い証拠だよ」 とは、ある養鶏農家のつぶやきです。 この方は「バカに農業はできない」とも仰います。なかなかに辛辣です。 それでも大切な視点を含んでいるので、私自身に向けられた言葉として戒めにしています。 そして開業以来ずっと、この言葉に支えてもらっています。 さて実際、ニオイを出さないだけならとても簡単です。 まずヒナ導入までに、敷料としてモミガラを敷いておきます。 鶏糞がたまってきたら、撹拌作業をするだけでニオイは出ません。 投

          設備(止まり木)

          止まり木とは文字通りに、鶏が止まるための横木のことです。 決まった様式や市販品があるわけではなく、ホームセンターなどで角材と補強材を購入して自作します。 マニュアル(ボリスブラウンのコマーシャル鶏飼養管理ガイド)には 「飼育密度とともに重要視すべきは止まり木の設置」と書かれています。 その目的は次の3点 1.安心して休息できるスペースを確保することで、鶏群のストレス緩和に役立つ 2.ジャンプ行動をすることで脚の筋肉が発達し、健康な体作りができる 3.産卵期間におけるネストト

          設備(止まり木)

          設備(踏込槽)

          家畜伝染病対策の基本に、持ち込まない・持ち出さない・広げない、 というものがあります。 これは感染成立の3要因とよばれる①病原体②感染経路③宿主のうち 一つでも取り除けば感染が成立しない、という考え方に基づいた標語です。 対処としては①病原体の排除②感染経路の遮断③宿主の抵抗力向上ですが、 具体的には①洗浄や消毒②着替えや履き替え③飼育管理の徹底です。 今回はその中でも消毒の話です。 建屋の入り口に消毒液を貯めておいて履き物を消毒する設備を 踏込槽(ふみこみそう)と言いま

          設備(ネスト)

          産卵のための巣箱をネストと呼びます。 物陰などの狭い所・暗い所で産卵しようとする性質を利用して、卵を効率的に集めることが出来る設備です。 方式は2つ 産みため式と卵受け集卵式があります。 産みため式は、ただの「箱」でコンパネなどを利用した自作のものが多いです。作業性が悪く、卵が汚れやすい欠点があります。 卵受け集卵式は、金属製のものが市販されています。 卵が転がり出るので汚れにくく、廊下側から集卵作業ができるので、衛生面と作業性で優れます。 産卵室のトレイを外して、

          設備(給餌器)

          鶏に飼料を供給するための機器です。大きく2つの方式があります。 桶型と樋式(オケとトイ)です。 樋式 大規模農家の自動化ラインなどに採用される方式です。 ケージ飼育ではエサドイに自動給餌器でエサを投入する方式、平飼いはエサドイの中を搬送して行く方式が主流になります。搬送方法によってケーブルフィーダー・チェーンフィーダーなどと呼ばれます。鶏群入れ替え時の撤去清掃から敷設まで一連の作業が大変ですが、飼育途中は給餌に関わる労力を削減できます。平飼いでは、床の耕運時に邪魔になっ

          設備(給水器)

          鶏も生き物なので水を必要とします。 鶏に水を飲ませる設備を、給水器またはドリンカーと呼んでいます。 とくに鳥類は、水を飲まなければ腎臓に障害をきたすので、いくら寒くても水は必要です。1グラムのチッソを排泄するのに、ヒトは150ミリリットル必要ですが、鶏は200ミリリットルを必要とします。さらに気温の上昇に合わせて飲水量も増えてゆきます。 受け皿に水を貯めるもの タライや雨ドイを使用するもの。雨ドイで自作した事がありますが、鶏が飛び乗って汚したり、壊したりしました。給水や

          設備(カーテン)

          今回から鶏舎の設備について、数回に分けてお話しします。 まずはカーテンです。 まさとうの鶏舎は、2面開放型です。 鶏舎の開放面の外側に、巻き上げ式のカーテンが展張してあります。 カーテンは黄色い樹脂製で、展張する目的は ①日照の管理②換気および温度の管理③虫の侵入防止の3つ。 購入する際には、長さと幅を指定します。巻き上げ装置も含んでの単価で1平方メートル当たり2000~4000円程度です。まさとうは小口購入なので割高ですが、展張面積が大きいほど価格は割安になると思います

          設備(カーテン)