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設備(止まり木)

止まり木とは文字通りに、鶏が止まるための横木のことです。
決まった様式や市販品があるわけではなく、ホームセンターなどで角材と補強材を購入して自作します。

止まり木を掛ける取手。ボルトと角材を溶接して自作
金具で補強してある


マニュアル(ボリスブラウンのコマーシャル鶏飼養管理ガイド)には
「飼育密度とともに重要視すべきは止まり木の設置」と書かれています。
その目的は次の3点
1.安心して休息できるスペースを確保することで、鶏群のストレス緩和に役立つ
2.ジャンプ行動をすることで脚の筋肉が発達し、健康な体作りができる
3.産卵期間におけるネストトレーニング

ボリスブラウン「コマーシャル鶏飼養管理ガイド」7版より抜粋

開業当初は、ネストに付属のモノも含めて、飼育室の四面全てに止まり木を設置していました。
飼育してみると、昼間はほとんど利用されません。
夜間も極端に鶏が集まる面と、全く利用されないか数羽しか止まっていない面に、ハッキリと分かれます。

上2段にパラパラと止まっているだけで、下3段はスカスカ

どの面が人気になるかは、鶏の群れ毎に好みが変わります。
使われている止まり木の下にはフンが溜まり、そこだけ床環境が悪化しやすくなります。
使われていない止まり木は、撤去していました。
舎内作業の邪魔であったことと、それらを超えるような必要性も感じなかったからです。

マニュアルにある設置目的についても、以下のように考えるようになりました。
1.安心して休息できるスペースを確保することで、鶏群のストレス緩和に役立つ
休息には、夜間の就寝と昼間の飼育密度緩和の二つの意味がある。
夜間に止まり木で就寝するのは鶏群の半数程度で、ネストに備え付けられている止まり木で十分ではないか。

止まり木があっても、半数程度が床で寝る群れもある
ネストの止まり木に人気が集中することもある

昼間に止まり木にいるのはイジメられている個体で、そういった鶏の避難場所であり、発見し隔離飼育することは出来る。
ただしイジメられているのは2~3羽程度で、その個体を隔離しても別の個体が新たにイジメられるだけ。
昼間に止まり木を利用しているとしたら、イジメでなければ過密飼育が原因であり、止まり木以前の問題。
マニュアルを確認すると、飼育密度は坪当たり20羽となっています。
(1坪は3.3㎡)
通常の平飼い農家では坪当たり6~12羽程度ではないでしょうか。
まさとうは坪当たり10羽です。
つまり前提として過密飼育があり、その上で密度緩和のため立体的に空間を利用しなさいという記述ではないか。

ボリスブラウン「コマーシャル鶏飼養管理ガイド」7版より抜粋

2.ジャンプ行動をすることで脚の筋肉が発達し、健康な体作りができる
確かに導入直後のヒナ鶏は止まり木の使い方が上手くない。
止まり木の上で不安そうにフラフラ歩いていたり、止まっていてもグラグラしてたまに落下する事もある。
ただし、脚の筋力発達は歩行によるものであり、止まり木については慣れとバランス感覚の問題。
ジャンプするのは朝夕に乗り降りする時の一回づつくらいで、昼間にピョンピョン飛んでいる訳ではない。

3.産卵期間におけるネストトレーニング
ネストに飛び乗るのにトレーニングが必要なのだろうか。
ネストでのトレーニングとは産卵場所と認識してもらう事ではないか。

この状況で飛び乗るためのトレーニングが必要とは思えない
卵を見せることで、ここが産卵場所だと刷り込む

止まり木を設置しないで飼育していたら叱られた

その様な思いがあったので、農業大学校を卒業して再開した時に、止まり木を全く設置せずに飼育をしてみました。
床の状態も作業性も良いことはよいのですが、日が傾いてくると鶏が就寝場所をさがしてしきりに高い場所を探している様子が気になります。

一年くらいたった頃でしょうか。
尊敬する養鶏家の方と近況を話しているときに、止まり木は設置しなさいと諭されました。
その方の鶏舎は、天井全体が止まり木として使えるように建築されているので、フンが片寄らず床の状態が極端に悪くはなりません。
「事情が違う」と反論してみましたが
「地面から棒杭が生えてるだけの簡単なもので良いから、止まり木を設置しなさい!」と叱られてしまいました。
気持ちとしては「疑問」と「ですよねえ」が半分ずつでしたが、すぐにホームセンターへ材料の購入に行きました。

利用されるのは就寝時だけですし、止まっているのは群れの半数程度です。
それでも、高い所に止まって就寝するという、生態に近い状況を提供してあげられるのならば意味はあるかと思います。
無ければ無いで決定的な問題は無いと思いますし、ネストに付属の止まり木もあるので、それで事足りてしまう場合もあります。

ヒナ導入前の準備中

無いよりも有った方が良い設備だと思います。


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