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床(酸素条件)

発酵と呼吸


鶏舎床にモミガラを敷いてかき回すだけで、ニオイが出なくなる理由を酸素条件から見てみます。
ここでは高校の生物Ⅰで履修する「発酵」と「呼吸」を振り返ります。

発酵

生物が、酸素を利用しないでエネルギーを獲得することを「発酵」と呼んでいます。
微生物で、酸素を利用しないでエネルギー獲得するものを嫌気性菌と呼んでいます。
嫌気性菌は原始の地球で生命が誕生した頃に現れたと考えられていて、当時は海中にも大気中にも酸素が少なかったようです。そして、その中でも酸素が無い条件でしか生存できないものを、絶対的嫌気性菌とか偏性嫌気性菌と呼んでいます。これらは、酸素に触れると自ら活性酸素を産生して自滅してしまうため、水中や土中あるいは動物の腸内など限定された場所に存在します。
酸素があっても生存できるが、増殖などの活動が制限されるものは、耐気性嫌気性菌と呼んでいます。これらは活性酸素を消去する能力を獲得したものです。
嫌気性菌もその程度によって絶対的・偏性・耐気性の冠をつけて呼ばれますが、いずれも有機物を取り込んで自らの構成成分やエネルギーを作り出した後、余分なものを排出します。この過程を代謝と呼び、排出されたものを代謝産物と呼びます。その代謝産物には、乳酸・アルコール・酪酸・アンモニア・メタン・ブタン・インドール・スカトールなど実に様々な物があります。
堆肥化を考えるうえで重要なのは、これら発酵による代謝産物は「匂いがする」という事です。

呼吸

生物が、酸素を利用してエネルギーを獲得することを「呼吸」と呼んでいます。
微生物で、普通の大気のもとでエネルギーを獲得するものを好気性菌と呼んでいます。
好気性菌は、地球の大気に酸素が多く含まれるようになってから出現した、比較的新しいタイプと考えられています。
そのうち酸素の存在する条件でなければ生存できないものを、絶対的好気性菌と言います。細菌ではごく一部ですが、カビ・キノコといった菌類では多くがこれに当たります。
この菌類は酸素条件だけでなく、成分条件で考える時にも大切な役割をしますが、それは後述します。
ここで重要なのは、これら呼吸によって排出されるのは二酸化炭素であり、二酸化炭素は「匂いがしない」という事です。

以上は、微生物の動態を考える為にあえて極端に分類しました。
実は、鶏舎床に限らず堆肥中や畑土壌などに生息する細菌の大部分は、嫌気条件でも好気条件でも生存できます。
酸素がなければ嫌気性菌として振る舞い、酸素があれば好気性菌として振る舞うものを「条件的嫌気性菌」「通性嫌気性菌」と呼びます。
畑土壌の場合ですが、数にして8割が条件的嫌気性菌で1割が菌類、重量にして2割が条件的嫌気性菌で7割が菌類の構成になっています。

それを意識して鶏舎床のかき回し作業を行い、発酵ではなく呼吸を促せば
ニオイを出さない管理が出来ます。

また、微生物の活動は水分を必要とします。土壌や堆肥・鶏糞などを実質とすれば、実質と実質のすき間は孔隙(こうげき)となります。この孔隙部分には空気か水分のいずれかが存在し、その割合は相反する関係にあります。その孔隙に存在する空気と水分の割合が含水率・乾燥度・湿り具合などと表現され、それが適度である事をフカフカ・握ってポンと割れる、など経験的に様々な言い方をされているというワケです。
酸素条件は、水分条件の裏返しです。
堆肥の場合は、含水率40~60%が良いと言われています。
鶏舎床の場合は、乾燥させておけばニオイは出ません。

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