コクシジウム症(対処)

コクシジウム症への対処

本稿は、コクシジウム症への対処法です。
まさとうでは「食酢の飲水給与」と「石灰散布」を利用しています。

食酢の投与

食酢というと民間療法のようですが、そうではありません。
欧州において学術論文で発表され、愛知県の家畜試験場の追試験で確認された科学的な方法です。
元論文はブドウ酢だったと記憶していますが、紛失してしまいました。
ただ、ポーランド科学アカデミーによる「Anticoccidial efect of apple cider vinegar on broiler chicken( ブロイラーチキンに対するアップルビネガーの抗コクシジウム効果:抗酸化効果を測定するための有機処理)」などの一連の研究が、より新しいものでもあり参考になります。
実際に利用してみて、効果は他農場で観察した抗コクシジウム剤と同等と感じますし、ケイフンを顕微鏡で観察してもオーシストの殺滅が確認できます。
もともと食品ですので安全性も担保できます。
要点は「酢酸として0.1~0.15%程度を投与する事」です。
たったのこれだけです。
具体的には、市販の食酢40㎖を飲水器に投与して受け皿を水で満たします。市販の食酢が酢酸度4%程度で、給水器の受け皿がおおむね1ℓですから、その割合で薄めると約0.16%になります。
2ℓのペットボトル入り食酢を購入し、給水器3台に各々40㎖を一日当たり2回行うと、8日間の給与期間となります。概ね3~4日頃から卵殻や便の状態が改善し、効果が実感できます。一日2回というのは、まさとうでは給餌が一日2回で、食酢を飲水投給与する場合は同時作業としているからです。
この程度の作業で、コクシジウム症がでないという経験則であり、これが最適解かは分かりません。

下記の写真は、平成25年に3か月間連続して給与した時のものです。
導入時の検査証と、酢の飲水投与開始1か月後の検査証です。
導入時の大雛群のオーシスト数が10,000以上となっていますが、これは保健所を数字丸めています。
「(顕微鏡の)スライドで千個づつ計数出来るんですが、パッと見で十万個程度ですね。多すぎて正確に数える意味が無いので、一万以上って書いときます。」という事だそうです。
また、処置後の検査で成鶏群となってますが、大雛群の誤りです。
元の成鶏群は、オーシストの数が200個以下なので再検査をしていません。
十万個程度のオーシストが、処置一か月でゼロになるという目覚ましい効果を示しましたが、これはやり過ぎでした。
作業負荷や費用を考えて、発症レベル以下に管理できれば良しとしなければなりません。

ヒナ導入後の検査証


酢の投与後の検査証

酢を飲水投与する時に、少し気遣ってあげたいのは、酸味が強くなるほど鶏が飲みたがらなくなるという事です。
特に初めて給与する場合は、半分の20㎖を給与をはじめ、味に馴らしてから濃度を上げる工夫をしています。試験場のデータを見ると、ヒナでは0.1%を超えると飲水が減る事で生育を制限し、成鶏では0.1%を下回ると効果が劣るようなので、このあたりの頃合いを念頭におきながら処置します。
下記の写真は、ヒナ導入時の様子です。
飲水器に酢水を満たした状態でヒナを導入しています。

ヒナ導入時の様子

石灰の散布

石灰は床や廊下に散布しています。石灰は原虫のみならずウイルスからハエの幼虫まで諸々の殺滅に効果があるので、鶏舎周囲や舎内の廊下に常時散布しています。床にまくのは導入前準備の時だけですが、下痢や緑便が多いと感じれば、飼育中でも散布するつもりです。
石灰については、踏込消毒槽の消毒液と混ざると効果が落ちると言われています。色々な自治体の家畜保健所HPでも記されていますし、獣医師から指導を受ける事もありました。
しかし、「低温及び有機物存在下におけ石灰水を使用した逆性石鹸系消毒薬の鶏インフルエンザウイルス及び牛エンテロウイルスに対する消毒効果」(長井、江崎、関、2013、東京農工大学農学部、東京都芝浦食肉衛生研究所、田村製薬)の論文では、消毒液を石灰水で希釈すると効果が高まるばかりか、低温や有機物の混入などの消毒効果を低減させる要因に対しても、効果の持続性に優れると結論しています。
二つの説が相反しているように、学説というものは後から覆る事があるので、あくまで参考です。
自分とすれば、作業負荷とのバランスの中で鶏と食品の安全を守れれば良いので、参考にしつつも経験則を大切にしています。

酒精酢の利用

まさとうは小さな農場なのでペットボトルの食酢で十分ですが、大きな経営の場合にはコストを下げるために「酒精酢」の利用がおすすめです。酒清酢とは、スピリットビネガーやホワイトビネガーなどと呼ばれ、マヨネーズ等に使われている酢です。酢醸造の副産物と言われてますが、販売している以上は製品です。仕込みのアルコール度がそのまま酢酸度になるので、メーカーのアルコール製造能力によって酢酸度13~15度のモノが流通しています。形態と価格は15ℓで4,000円程度です。
酒精酢を、4%程度に希釈してペットボトル等に分けておけば、食酢と同様に使用できます。以前3か月間連続投与したというのは、この酒精酢を薄めて大量に使用したものです。
入手する場合は、速醸法と呼ばれる連続発酵法を採用している醸造酢メーカーに問い合わせます。いわゆる大手メーカーですので、取次の商社等を通じて入手することになると思います。ちなみに中小メーカーに多い静置発酵法では、酢酸度3%のものが結露として出てくる程度で、副産物らしいものは出ないそうです。

利用の際の留意点

食酢を利用する場合は、酢酸の金属腐食性に留意が必要です。給水回路の途中にはポンプやスプリング類など金属が使用されているため、貯水タンクではなく樹脂製の給水器に直接投入します。
同じ理由でニップル式の場合にも食酢の飲水投与はできません。
そういった場合の代替方法として、粉末酢を利用する事ができます。
以前に中部地方の粉末酢メーカーからサンプルを提供いただき、100羽に対して一日10gの給餌投与を10日間継続する試験をしました。ケイフンを検鏡した限りでは、食酢の飲水投与と同等の効果がありました。
ただし、粉末酢は1袋15kg梱包であり価格が税抜きで15,000円以上なので、その点では検討が必要です。

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